第3章_12 魂の宿る大木
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陽斗…話しておきたいことがあるんだ
うん
お前ここに引っ越してきたのは幸世さんのお母さんの思い出があるからって思ってるだろ?
それは違うんだ。
ここは母さんとの思い出の場所だ
どういうことだよ?
母さんはこの場所のこともあの木のことも全部知ってた
結婚する前に話したんだ
私もその場所に行きたいって何度も2人でここに来た
お前が小さい頃も来たんだ
そう言えば…
確かに昔の思い出もあったけど、ここに来て目を閉じると隣で笑ったあの母さんの笑顔が思い浮かぶ
幸せな思い出はきっと、心ごと塗り替えてくれる
そう思うんだ
親父…
幸世さんのお母さんのことは大切な思い出だよ
わかった
幸世さんとはうまくやってるのか?
心配いらないよ
そうかぁ
穏やかな声で淡々と話した親父の声が耳に残った
普段、言葉少ない人がしっかりと伝えようとしてくれたことに母さんへの愛を感じてた
俺よりずっと先を歩く親父はたくさんの経験をし、いろんな思いを胸に今、あの木を見上げているだろうと思えた
俺も幸世を守っていこうとそう思った
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
魂が宿る大木に導かれ、私達は
出会った
運命だったのか
必然だったのか
そんなことはもうどうでもいい
私はこの広い世界の中でハルに出会えた
ただ、それだけ
余計なことは何もない
真っ直ぐに彼が好きだってこと
第3章_8
「……」の会話
「幸世さん、お母さんの名前って?」
「望です」
「のぞ…み…」
「知ってるんですか?」
「いやっ」
「幸世、何してるの?」
「うん、今行く~
では、失礼します」
亡くなったって…
ノン……今更、何だよ
来るならちゃんと、会いに来いよ
~回想~
「もう、カズ、やめてよー」
「ハハハ、ノンは俺には一生勝てないって」
「ムカつくぅ!絶対仕返ししてやるんだから」
威勢よく言ってたよな。
お前、俺に仕返ししに来たのか?
やるなぁ
今回は負けたよ
まさか、こんな出会いがあるとはな
なら、この出会いは悲しい別れにはならないようにしてやってくれよな
俺達が出来なかった、ずっと、側にいること
ノン、お前がしっかりとそこから見守ってやってくれよな
俺は初めてノンを抱きしめたこの木の下で空を見上げて祈った
冷えきった頬につたう涙を拭うことなく、舞い降りてくる雪を見つめながら…。
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