第3章_2 あったかい笑顔


「あのー、お名前聞いてもいいですか?」



振り向いた彼がまたにこりとした顔を見た瞬間



「ドスッ、きゃぁー」


「大丈夫?」


「だ、大丈夫…」


「山、来るのにこの靴はダメだよ~」


「あっ、でも、この木だけ見ようと思ってたので」


「そうだけど、ここまででも結構歩いたでしょ?」


「まぁ…」


「はい」



差し出してくれた手に伸ばそうとしたけど足に痛みが走った


「いたっ」


「ん?捻った?」


「みたい…です」


「じゃあ、はい」



背中を向けてしゃがんでくれた彼



「えー、いいです。そんな今、会ったばかりの人に」


「ハハハ、じゃあ、ここでいますかぁー?」


「でも…」


「いいから、早く」


「ごめんなさい、重いですけど」



そっと彼の背中に身体を預けた



「よいっしょっ、

あっ、さっきの」


「さっきの??」


「名前」


「あー、そうですね」


「俺は陽斗っていいます、あなたは?」


「私は幸世です」


「ゆき…よさん?」


「はい。幸せに世界の世で」


「へぇー、何か幸せになりそうな名前ですね。エヘヘそのままか」



後ろから見える彼の目を細めた優しい顔が歩く度に近付き、ドキッとした




背後に広がる暮れゆく山の景色が綺麗に染まっていたことなんて気にもとめず、私は出会ったばかりの彼の背中の温もりに胸の鼓動が早まってた




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