第2章_7 古い紙切れ


朝陽がカーテンの隙間から差し込む



腕の中に理子の温もりがあった




俺は理子のことが好きなのか?

彼女を抱きながら思ってた





ノンを抱いた時、

愛してる女を抱くとこんなにも愛しくて、幸せなのかと思った


それから、女を抱いても、ただの快楽だけで幸せを感じたことはなかった



理子はその感覚とは違った




何年ぶりだろう、

安心して眠れた気がした




「んー」


「おはよ、起きたか?」


「おはよう」


恥ずかしそうに布団に半分顔を隠す理子


「なに、恥ずかしがってんの?」


「だってぇ」


「ごめん、俺、加減、出来なかったな」


そう言って布団にまるまってる理子を

抱きしめた



「好き、大好き」


「わかったよ」


「何かむかつくぅ、私ばっかり」


淋しそうにする彼女の顔を両手で挟んで見つめた



「俺も……好きだよ」


「フフっ、そんなこと言うんだね」


「何だよ!おまっ、理子が言わせたんだろ」




「ねぇ、カズ…カズって呼んでいいんだよね?」


理子の髪を耳にかけて頬に触れるだけのキスをした


「いいよ」


嬉しそうに彼女が微笑んだ



俺はこの笑顔をずっと見ていたいと思った

ただ、単純にそう思った


もう2度と温もりを失いたくないと……

思ったんだ。





しばらくして、俺達は一緒に住むようになった


自分の領域には誰も入れなかった、

入れようとしなかった

そうやって生きてきた俺が…理子といる時間が大切だと思うようになってた




「理子、今日は?」


「今日は撮影は午後からなの」


「そっか、じゃあ、俺、行ってくるな」


「うん、いってらっしゃい」


「いってきます」




出かけてすぐに彼から電話が鳴った



「もしもし、理子、手帳忘れたみたいなんだ。テーブルの上にない?」


「ちょっと、待ってね……あっ、あったよ」


「悪いけど、午後から仕事に行く時でいいんで、持ってきてくれない?」


「わかった。じゃ、後でね」


「頼むな」



早めの昼食をすませ、身支度をして、家を出た


彼の会社へ向かう電車に揺られながら、

手帳の中がどうしても気になった



見ちゃダメ

いくら何でもダメ


でも……少しだけ……

ごめんなさい



ゆっくり、手帳を開くと仕事のスケジュールがびっしり


なんだぁ、

やっぱり、大したこと書いてないね



安心して閉じようとした時、革の裏表紙に挟んである古い紙切れが見えた



そっと引っ張り出してみると……

どうして、こんなもの?



私は咄嗟にそれを自分のポケットに入れてしまった



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