第2章_6 求め合う心と身体


理子とは度々会うようになってた



彼女は仕事の時とは違う柔らかい表情を俺に見せるようになった


俺も少しずつ、心を開いていってた




「理子、あんま、飲むなよー。お前酔うとめんどくせぇからなぁ」


「大丈夫ですぅ、酔ってませーん」


「あーあ、もう酔ってるな、帰るぞ」


「帰らない、まだ帰りたくない」


「何言ってんだ、さっ立て」


「じゃあ、畑野さんところに帰る」


「理子…酔ってんな」


「酔ってるわよ。酔わないとこんなこと言えないよ」



涙目になった彼女はしっかりと俺の目を見る



「私の気持ち、わかってるんでしょ?

気付かないふりしてるの、バレバレ。

それなら、キッパリ振ってくれる方がよっぽどましよ。

………畑野さんは…自分の気持ちは誰にも見せない。

いっつも一定で感情的にならない。

何、考えてるかわかんないよ」



そう、一気に言うと理子の目から我慢していた涙が溢れた




「…ごめんな」


「謝らないで。謝ってほしくない」




「俺んとこ…来るか?」



涙でぐちゃぐちゃになった顔でコクリと頷いた







「理子、シャワー使っていいぞ」


「え、あっ、うん」



こういうこと、慣れてそうな感じなのに、部屋に着くなり緊張してる様子。


意外と可愛いとこあるんだ

苛めたくなった



「シャワー、いらない?」


腰をグイっと引き寄せて顔を近付けると、

慌てて、目をそらして真っ赤になる理子


「い、いります。お借りします」


俺の胸を押し返して、逃げるようにバスルームに走っていった


「ぷっ、面白いヤツ」




(勢いで入っちゃったけど、着替えないんだ、どうしよう)



そっと、バスルームから顔を出すと彼がちょうど目の前にいる


「きゃー」


慌てて顔を引っ込めた


「っんだよ、そんなびっくりしなくても。ほら、着替え置いとくから」


「はいっ、すいません」


「ハハハぁー、なぁーに、急に他人行儀になってんだぁ?

理子ってほんと、コロコロ変わって飽きないなぁ。ってか、今から散々見るんだから、ちょっとぐらい見てもいいだろ?」


「ダメっ!」


「はいはい」




用意してくれた服に袖を通すと彼の香りがフンワリとした



リビングのソファに座る彼の後ろに立つと振り返って微笑む


「やっぱり、でかいな。それ。理子、背が高いから丈は大丈夫だけどな」


「うん」


「俺も入ってくんな」



立ち上がると通りすがりに頬に軽く触れる



(やだ、緊張してる。

別にこういうこと初めてでもないのに、どうしてこんなにドキドキするんだろ)





バスルームのドアのガチャッっていう音に心臓がビクンとする



彼は髪を拭きながら、出てくると横に座り、私の肩を抱き寄せた



ふぅーっと大きく息を吐くと私の顔を見つめ、口を開いた





「理子…ほんとに俺でいいのか?」



「いいの。畑野さんがいいの」



「俺はややこしいぞ」



「いいって言ってるでしょ!いいっ…んっ」



言い終わる前に唇を塞がれた


何度も何度も繰り返されるキス


深く蕩けるようなキス



アルコールも回ってクラクラして、ソファから落ちそうになった


「大丈夫か」


黙って頷いた


「理子…おいで」


私の手を自分の首に回させると抱きしめたまま、真っ直ぐ立ち上がった



「ほんっと、お前いつもの顔と違うな」


まじまじと私の顔を見る


「もう、やだ」



くすっと笑ったと思ったら、

私をベッドにおろし、見下ろした目はもう憂いに満ちて熱を帯びていた



何も言わず、瞼に唇が触れると徐々におりていく


「ンンっ、はぁっ」



彼は私のことよくわかってるかのように敏感なところを刺激していく


指先で唇で指で舌で…




「はた…のさん」


「理子、その呼び方やめろよ」


「やっ、じゃ、ハァ、なん…て?」


「…カズ…かな」


「カ…ズ?」



そう…呼ばれて、一瞬、動きが止まった




「どうした…の?」



「もう1回呼んでみて」



「カズ…はぁ、やっ、……つ」




強く突き上げると歪んだ顔で高い声を上げ、息が浅くなる



俺は理子の華奢な身体を壊してしまうんじゃないかってほど激しく抱いた





久しぶりに女の声でカズ…と呼ばれた



何だろう…

自分でもわからない気持ちが弾けたようだった




ただ、どうしようもなく、理子を求めてた



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