第1章-12 ホントの思い

落ち着きを取り戻した私はリュウのことが気になつてた



リュウは今まで通り接してくれてた


カズは別人のように優しくしてくれたけど…でもだからと言って特別な関係になった訳ではない



リュウとはちゃんと話さないと

最後まで彼に甘えちゃいけない


夜、リュウに電話した


「もしもし、リュウ」


「おー、ノンどうした?」


「リュウ…あの……」


「カズとはちゃんと話したか?」


私が言いにくそうに口ごもるとそれを遮るようにリュウが言う


「特に何も…。」


「はぁー、ほんと、お前ら何でそんなに不器用なんだろうなぁ。

ノンはカズが好きなんだろ?簡単なことじゃないか」


「だって……」


「お互い思いすぎてるんだよ。単純なことなに自分達で難しくしてる。まぁ、それがお前らのいいとこでもあるのかもな」


「リュウ、私、リュウに謝らないと」


「ノン謝るなんて言うなよ。俺はノンといた時間はぜーんぶ最高な時間だったよ」


「……リュウ」


「あっ、ノン泣くなよ。本当は俺からちゃんと話そうと思ってたのに。会うと、また、抱きしめてしまいそうで」


「ごめんなさい…グスっ」


「だから、謝らなくていいし、泣くこともないって。俺のことは気にするな。

ノン、自分の気持ちに素直になれ」


「うん、ありがとう……リュウ」



リュウは最後まで私を守ってくれた

私が言い出しにくかったことを全部話してくれた


電話の向こうでリュウが泣いてるような気がして辛かった



リュウ 本当にありがとう


ごめんなさい


優しい優しいあなたに守られた私はすごく幸せだった





秋が過ぎ

私達はそれぞれの就職先も決まった


私は商社。

リュウは実家の稼業を継ぐらしい

カズはスポーツメーカー





大学最後のシーズン

雪も積もり来週にはスキー場へ


トレーニングが終わり部室に向かういつものキャンパスの通り


いきなり、肩に手を回された


「ノン、今年、また、ノンと同じ宿に戻るからな」


「へ?何で?スクールは?ってか離れてよ、顔近いし」


「照れてんのかぁ?ハハハ

スクール?もう俺はあそこで学ぶことはないってやつだよ」


「あいっかわらず、偉そうねぇ」


そう言いながらも、またカズと一緒に迎えるシーズンが嬉しかった


そんな気持ちを悟られないようにわざとイタズラっぽく言った



「今年は朝、起こしてあげないからね」


彼の鼻をキュッて摘まんで走り去った


「いった、おい、まてよ、ノンの世話になるかっ」



他愛ない会話の一瞬一瞬が大切で


あなたの表情を少しても見逃さないよつに見つめてた




4回生のシーズンが始まった


最後の年

悔いが残らないように必死で滑った


そんな中、カズとの毎日は私を動かす原動力となってた




宿の仕事が終わると真っ暗な雪道を散歩したり、

ゲレンデに寝転がって満点の星空を見たり、

でも、

お互い肝心なことは何も言わなかった




私達はこのまま、卒業してしまうの?


そんなの嫌だ




ここでの生活も後少しとなった頃

私はカズとちゃんと話そうと思った



「カズ、仕事、片付いたらゲレンデ行かない?今夜はお天気いいし、星いっぱいだよ」


「おー、いいなぁ。早く終わらせようぜ」




カズは私が一大決心していることなんて、気付いてなかった



いや、ひょっとして、気付いてて気付かないふりしてるの?



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