目標決め

 今日は部活が始まってから1週間が経つ頃だ。

 ここまでくれば学校も慣れたものだ。そんなに人間関係で悩むこともない。最近は昼休みに校庭でサッカーをしている。


 今日も昼休みは校庭でサッカーをしていた。終わった頃に、「それにしても、公平のキーパー上手いよなぁ!俺全然決めれなかったわー」達也がそう言った。「そうだよなー。俺も決められなかったわーもっとうまくなりたいなー」僕もそう言った。公平は「そんなことないよ〜」と照れながらいうが、そんなことないわけがない。なぜなら公平は小学校にいた時のチームが県2位という実力を持っているのだ。


「そうだ!今日、部費提出日じゃん!やっべ!」ふと達也がそう言った。自分もそう言われてから気づいた。「ほんとだ!鈴木先生か副部長見つけなきゃ!」「公平!ごめん!ちょっと校内探してくる!」公平に謝りながら教室を飛び出す。


 結局、校内中を探し回った結果、先生たちがいたのは、練習場だった。意外といなかったので探すのに苦戦した。その時は先輩の様子を見て、アドバイスをしているようだった。

 僕たちは、ヘトヘトになりながら「先生!部費お願いします……」先生はそんな僕たちの様子を見て「おぉ〜。来てくれてよかった。今、先輩のみんなで基礎練習してたけど、2人とも練習していってもいいよ〜」

 確かに練習したかったが、そう言われても先輩方の早いラリーに追いつけるはずがない。達也ならできそうだが、自分には到底できなさそうだ……

 達也はすぐに打ち始めた。達也のラリーはすごくうまかった。少なくとも、先輩方の足を引っ張らずに簡単にラリーをこなしていく。

 先輩方と達也のプレーを見ていると、自分も打ちたい!……という感情が湧き出てくる。なんだかうまいプレーを見ていると自分もできそうな気がしてくる。錯覚なのはわかっているが、勝手に体が動いて、早く打ちたい!……という感情を抑えられなくなってしまう。

 ああだこうだ考えてると時間がもったいなく感じた。みんなのラリーも早いし、時間の流れも速く感じた。このタイミングで早く打ちたい!……そう思った。

 そこで、打っていた達也に便乗して、自分も打ち始めた。念のため、「少し遅めでお願いします……」とお願いした。パチーン、パチーン、と気持ちよく入る感覚がとても気持ち良かった。特に自分のラケットだ。その気持ちも以前より倍増しただろう。


 今日の午後、部活は1年生だけ特別に別室で練習することになった。

「今日は、皆さんで素振りをするために、3年1組教室を使うことにします。皆さんは、先輩方と、達也さんに指導してもらいます。達也さんもお願いします。」先生は達也のことをなかなか上手いと見込んでいたのだろう。今日は達也が先生になる。少し恥ずかしい気もした。でも、なぜかライバル意識も湧いてきた。自分ももっとうまくなって、達也に勝ってみせる。そんな意識を感じ始めた。まだ全然プレーしていないが、きっと、自分の目標というのは達也に勝つことが目標なのだろう。だが、その目標はあまりふさわしくない。そう思う。なぜなら、スポーツは一人のライバルに勝つためのものではないからだ。スポーツの真髄をそこまで真剣に考えたことはなかったが、わかる気がする。人によってはスポーツの真髄が変わってくるとは思うが、自分はみんなと勝った時の感動や、負けた時の悲しみを共感したり、スポーツという趣味を持つことで新たな自分を得ることもできる。自分の考える真髄はこんなところだろう。そう考えると、ライバルに勝つことが目標じゃないのかもしれない。少しでも今いるみんなと今を楽しむこと、勝つことが目標なのかもしれない。だが、勝つことは目標ではなく、勝つことは手段であり、楽しむことが一番の目標なのだろう。それもそれでいいのかもしれない。自分はそれが一番だと思う。父も、スポーツマンだったが、そんな父も「スポーツにおいて、楽しむことは一番重要だよ、楽しまなきゃ、スポーツはスポーツって言えないからね。それじゃあただの苦痛運動でしかないだろ?お前もスポーツで人生を明るくするんだぞ」という。「僕も父を見習ってスポーツをしよう」……そう決意した。

 だからこそ、達也に勝つことだけじゃなく、楽しむことを目標にしよう。


 この日から、自分の卓球への考え方も変わった。卓球を見る目も変わった。


 今日の素振りは考えながらだったが、うまくできたようだ。あまり実感はないが……


 今日の夕ご飯は何かな。そう考えながら帰っていく。




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