いや、一般的に「アイドルの笑顔」って言葉から想像するのと、全然違う滾り方するんです。
熱血。硬派な決闘に感じる種類のそれ。なのに物理的な血生臭さや痛みは事実上なくて、彼女たちの姿はどこまでもキラキラしていて、「あれっやっぱりアイドルでは」と思うのだけれどでもやっぱり違う。違うはず。だって命がけ。いや死にはしないけどある意味死ぬというか命以上のものがかかってるというか、もう自分で何言ってるかわかんないんですけどとにかく熱い。
自分はアイドルというものについてよく知りません。なのでズレているかもしれないのですけれど、なにより感じたのはこう、なんだろう。「エンターテインメント性」の高さみたいなもの。
例えば文章。というか、お話の書かれ方。テンポがよく、スピーディで、なによりものすごい勢いがある。こちらが「ここが見たい、もっと読みたい」と感じる部分を、一切の躊躇なくがっつんがっつん投げつけてきてくれる。この思い切りのよさと力強さ。すごい。引っ張られる。魅せられちゃう。
また設定に関しても。アイドル同士の異能力バトル。格闘技の興業に近いのに、痛々しさや残虐性の生じない舞台設定。結構ぶっ飛んでいるようで、でもその実とてもストレートでシンプル。このお話がなんのためのお話かを考えたら、あるいは直球と言えるくらいかもしれない。
そういった部分、エンタメ性の高さが、主人公のキャラクターないしお話の主題とぴったり噛み合って、もう読んでいてひたすら気持ちがいいんです。楽しい。熱い。「人を楽しませる」というのはきっとこういうことなんだと、そんなこと考える余裕もないほど面白い。
ハードなバトルものをやっているのに、根っこにあるのはきっと楽しさと明るさ。でも決して生温くはない、だからこそ熱いし盛り上がる。最後まで読み終えて、この作品から、ひいては主人公の紗弓さんから、なにかものすごいパワーのようなものをもらった気分になりました。
なるほどアイドルってこういうものなのかもしれない。
いままで知らなかったアイドルについて、少しわかったかもしれない、と思えた素敵な作品でした。元気になれる物語です。ぜひ。
異能は見る者を楽しませるパフォーマンスになり、異能者はそのパフォーマンスを魅せるアイドルになった。
そんな世界のお話です。
歌って踊るアイドルが、戦って魅せるアイドルになったといえば、わかりやすいでしょうか。
異能を持っていなかった主人公・紗弓が、覚醒、能力を得てライバルと対決する。
アイドル好きな紗弓と武術者のにぬ奈、2人の対比と、それが交わっていく感じが上手く描かれていました。
最後のバトルも熱い展開でした!
相手のことを読み合って読み合って読み合った先の決着。
バトルを通じて、想いは相手に伝わるのか?
素晴らしかったです。
異能バトルによる熱い青春物が好きな人には、オススメの作品です。
アイドル、能力バトル、百合。作者はこの作品に「俺はこれが好きなんだよ!」という想いをこれでもかと叩き込んだに違いない、と第一部を読了して思いました。
バトルシーンは熱量高く、とても読みやすいので自然と主人公である紗弓にすんなり感情移入できます。剣豪小説のような文体で淡々と描写される戦闘シーンがアイドルという言葉の雰囲気に反して血生臭く、泥臭く、なおかつアツい。
紗弓の能力がシンプルなストロングスタイルなせいもあるのでしょうか?
何度か誤字脱字かと思われる場所もありましたが(文体の癖、あるいは演出上のことなのか判別がつきづらかったので違っていたらご容赦を)、バトル自体がアツいのであまり気にならず、すらすら読めました。
ダメージが花びらとして消化される設定もよいと思いました。
顔面を狙っての蹴りやサッカーボールキックなどの殺人技を躊躇なく繰り出す女の子、ふつうに怖いですもんね。偶像結界内なら安心。よかった。
余談ですが、作者のTwitterにはCharatで作成されたキャラクタービジュアルと作者による設定文がまとめられており、本作を読む上での一助になるかと思います。