シスターの告白にドキマギな俺とボッチな王女様??

 扉の向こうには質素なベッドに座り心地はあまり良くなさそうな椅子

 部屋の壁には鼠が通れそうな位の小さな穴がポツリポツリとある様な、正に貧乏とはと聞かれれば連想できる様な部屋だった


「すみません…神父様が残して逝った借金の返済で私の部屋の内装にお金なんて回せなくて…そこのベッドに腰掛けてください」


 凛汰郎は促されるまま腰掛けると…思った通り弾む事も沈む事もなくまるで石の上に布をかけただけの様に思える


 対面する形に椅子を持っていきシスターも同じ様に腰掛ける


 凛汰郎は相も変わらず少し下げられ豊かな双丘に目線を奪われるが…

 直ぐに咳払いをし、話を切り出す


「あ、はいそうですよね…すみません」

「話しというのはですね……」


 シスターがそこまで言うと、突然ベールを脱ぎ出した

 凛汰郎はこのまま衣服にまで手を付けるかと思ったが…目の前の光景に驚きを隠すことが出来なかった


 シスターの星の輝きにも勝る様な金の髪を掻き分けて目立つ…先を尖らせ自己主張する耳の存在に目を奪われる


「実は私人類種ヒューマンではなくて森精種エルフなんです」

「今まで隠しててすみませんでした!!」


 顔を真っ赤にしながらも懸命にペコペコと頭を下げるその姿は…まるで聖処女の如き清らかなる光景

 凛汰郎は思わず魂が抜け落ちそうになるが…直ぐに考えを突然の告白に向ける


「え〜っと、シスターさんは何で謝ってるんですか?」


 凛汰郎は先ずなんで謝罪が入ったのかを聞いてみると、シスターらしい無垢な子どもの様な返事が返ってくる


「私は人を騙してきたんです…例え私が幾つもの善行を積んでいたとしてもそれは許される行為ではございません…」

「それに…私だけがリンタローさんの種族を知っているのは…ずるいと思うからです」


――この純粋さをアリア&シャルアイツ等に分けて欲しいんだが!!


 だが、今回相談したい事がこの本当の種族を隠していたという事ではないと察した凛汰郎は話を切り替える


「うん、種族の事はお互い様だから気にしないでください」

「それで…相談したい事ってなんですか?」


 シスターはそう言われると、ゴソゴソと部屋の隅に積まれている本の束から一冊の本を抜き出す


 タイトルは見た事も聞いたことも無い文字で書かれており…

 凛汰郎は異世界転移物の七不思議の一つ、何故かその世界の文字の読書が出来ている、が通用しない事に驚きを隠せないでいた


「これはフルティア王国という今は無い国の言語なんです…」

「最近、ここから離れた場所にある遺跡から発掘された貴重な書物なんだそうです」


 シスターはそう言って本を開くと…本の隙間から砂がポロポロと落としながらも読み進めていく



 ―17代続いた歴史あるフルティアが…私の浅はかな行いによって壊滅の危機に瀕してしまいました…

 空から【神撃】が降り注ぎ、海からは【海神裂破ポセイディア】が放たれる


 あの日倒れていた$℃×#♪さんを助けた事により、国は滅びるのです

 街を見下ろせば阿鼻叫喚の地獄絵図が広がり全員がこう言います…あの男は災悪を齎した悪魔だ…と


 私はある1つの思いをこのペンに載せて書き記します…痕跡など遺らないと分かってはいますが…書かずにはおられませんでした


 私はあの$℃×#♪さんを助け……



 そこで本のページは破れ後のページも炭となり、読む事は出来なくなっていた


 だが、本の裏表紙には文字が掠れていて読むのが難解になっていたが…シスターがその文字を読み上げる



 ―魔族の王に真実を告げる


 そう一言だけ綴ってあり、これこそが今回シスターが異種族であると告白したもう一つの理由でもあったのだ


「レティーナさんに聞きました、リンタローさんはあの有名な魔王種サタニシアの一角だと…」

「魔王ならこの一文通り何か分かるのではないかと思いまして…」


 シスターにこれまでにも様々な場面でお世話になってきたのだ、何かしてあげたいがあいにく凛汰郎にもさっぱりなのだ


 そんな時、凛汰郎は何気無しに本をシスターから受け取ると…突如として本から眩い程の光が部屋いっぱいに放出される



___________________________


――貴方は$℃×#♪さんのご友人ですか?


 頭の中に直接響いてくる女性の声に驚きつつも目を開く凛汰郎は、先程までいたシスターの部屋ではなく…

 何も無い真っ白な空間に転移してきた事に気が付いた


――あの〜すみません…もしも〜し


 凛汰郎は手に持っていた筈の本が無くなっており、更にいえばシスターの姿も見えていない事に焦りを感じ辺りを見渡す


――ちょっと〜!! 王女である私が話しかけてるのに無視は無いんじゃないの!!


 頭の中に直接語り掛けてくる女性の声が段々と強くなってきて、少しばかりの頭痛すらも覚える程の声量だ


「少し位会話してくれても良いじゃない…私はもう二百年も一人でこんな何も無い空間に閉じ込められてたのよ…ブツブツ」


 挙句の果てには目の前に表れ、見知らぬ女性がもくもくと煙が充満する床に《の》の字を繰り返しなぞる姿を発見する


「あ〜その、ごめん…俺も俺で急な環境変化に驚いて遂無視しちまった」


 やっと応えてくれた凛汰郎の言葉に、パァァと音が聞こえてきそうな程喜び立ち上がる


「そう…そうよね!! 17代目フルティア王女であるこの私の言葉を無視するなんて許される行為じゃないわよね!!」

「そっか〜驚いてて反応出来なかったのか…良かった…生理的に無理とか言われなくて」


 凛汰郎は直感した…この女性は…いじられっ子という属性を持っているのだろう…と

 そして、凛汰郎は更に直感した


 この女性こそが、あの本に登場していたフルティア最後の女王だったのだろう…と


 だが…目の前にいる女性から感じるオーラはただ一つだ


「大丈夫かな…変に思われてないかな」

「何か話さないと…あぁ駄目、人と話した事なんて無いから何を話せば良いかわからないぃ!! 動物さん達との練習では話せたのに…」


――友達…いなかったんだろうなぁ

 見知らぬ世界に飛ばされた凛汰郎の目の前に表れたのは【ボッチ属性王女様】であった

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

魔王になった俺はハーレムを作る為に奮闘します 森崎駿 @Morisaki_hayao

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ