青の勇者に絡まれたんですが!?
【傲慢】との一瞬の対峙であったが、凛汰郎に圧倒的に足りなかったモノ
それは魔力や体力は勿論、総合的な基礎能力が明らかに足りない
凛汰郎は元の世界では運動能力は高い方であった、勉強もそこそこ出来る…
(筋トレや勉強していた理由はただ単にモテたいが為である)
だがしかし、この世界では凛汰郎の基礎能力はちょっと高い程度でスキルを使わなければモンスター達とは決して渡りえない
その為、凛汰郎は噂でギルドに帰ってきていると聞き、その人の元へ向かった
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それは初日に向けられたあの様な目線ではなく、畏怖の念が込められた目というのが適しているのだろう
何かあったのかをカウンターへ行き、どういう事か聞こうとすると、背後から声を掛けられる
その声は明らかな敵意が込められ、思わずアリアとシャルは戦闘態勢をとるが…直ぐに凛汰郎が二人を御して振り返る
そこには、ボブカットの青色の髪、銀色の瞳孔の部分に白の十字が刻まれた目、慎ましくもロリロリしていない胸にスレンダーな肉付き、改造された武士のような鎧に刃の無い日本刀を携えた女性がいた
「貴方がリンクですわよね? 私は…と名前を名乗る必要もございませんわ」
「話がありますの、よろしいですわよね?」
それは疑問形に見せかけた命令形であると本人は自覚してるのかしてないのかはわからないが…
ギルドの面々がなぜ凛汰郎達に畏怖の眼差しを向けているのかが理解出来た
何を隠そう、目の前にいる女性こそが今回ギルドにやってきた理由であり…
名を《ミリアーナ・
3代目勇者にして、過去に4度国の危機を救ってきた正に英雄の中の英雄である
そんな英雄が探している人物となれば、関わればろくな事が無いのは火を見るよりも明らかであり…逃げるのも必然と言える
「わかりました、ここでは何なので外に出ましょう…その方がそちらとしても都合が良いと思いますので」
凛汰郎は腐っても高校三年生、礼儀や作法等の基本は一通りマスターしている
ここは下手に出て気に障るようなことは言わないのが吉だろう
四人はギルドを出て、近くの路地裏の方へ入っていった
しばらく行き、もう表路地は見えなくなったのを確認した凛汰郎は、何の用か尋ねようとした時
ミリアーナは携えていた日本刀を引き抜き、凛汰郎の喉仏を貫く様に一寸の狂いなく正確に突いてくる
凛汰郎は後方へ飛びながら避け、足に魔力を注ぎ込み強く踏み込む
するとレンガがひび割れて亀裂が走り、ミリアーナの足の踏み場をなくす
その時にアリアとシャルは、直ぐに一本道の路地裏の逃げ道を塞ぎミリアーナを逃がさない様にする
だが、アリアとシャルの直ぐ横の大きなゴミバケツの中から二人の屈強な男が飛び出し二人を拘束する
「なんの真似だ、俺達は彼の有名な勇者様に狙われる様な事はしていないと思うが?」
暴力行為に出られた以上、下手に出ては更に危険になると判断した凛汰郎は強気に出て心からくる焦りを悟らせない様にする
「冗談がお好きな様ですわね…魔王様?」
「私は勇者で貴方は魔王…争う理由が他にあるとお思いですか?」
既に正体を見切られていたとわかった凛汰郎は、次にどうくるかを考え始める
最悪の状況、アリア達は拘束され凛汰郎自身も蛇に睨まれた蛙の様に身動きが取れない
こんな状況をどう打破するかを考え始めた時、ミリアーナが手を叩くと屈強な男達は二人の拘束を解いて離れる
「お戯れはこの辺にしときますわ、本代に入りましょう」
「あぁ、失礼しましたわ…あの魔王という人がどれ程の実力か知りたかったモノでしたので大人気なくちょっかいを出してしまいましたわ」
本気で殺しに来たのを戯れという精神力…これこそが勇者というのだろうか…
アリアとシャルは直ぐに凛汰郎の後ろという定位置に戻り、凛汰郎はミリアーナの話を聞き始める
「こちらですわ、着いてきてくださいませ」
ミリアーナは路地の先を指差し、3人を先導する
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路地の先には、レティーナの家の様に日本の木造建築の様な和の家が…だが、レティーナの家と違うところは…無駄な広さ
THE・お金持ちと知らしめる様な巨大な家
一戸建ての家が8件程なら余裕で入る程の広さに凛汰郎は驚きを隠せなかった
奥の部屋に進められた凛汰郎達は静かに待つ様に言われ、また正座で待つ事にした
数分後、ミリアーナは鎧を脱いで淡い水色主体に二輪の花が刺繍された着物姿で現れた
「緊張しなくても結構ですわ」
「先ずは貴方には感謝しなくてはなりませんわね…レティーナの事も、素早い判断で街の被害を最小限に留めたという行動も…」
ミリアーナはそう言うと、ニコリと笑って頭を下げ始める
「出来れば私に出来る事であれば何かしら協力してあげたいのでございますが…」
凛汰郎は待ってましたと言わんばかりに目を煌めかせながら、今回ミリアーナに会いに来た理由を語り始めた
「……なる程、過去の貴方の部下の失態を返上する為に強くなりたいと…ですが」
「それを宿敵である私に頼みに来るなんて、頭がおかしいんじゃありませんの?」
「大体…武術を付け焼き刃で覚えたって通用するとは到底思えません事よ?」
「日頃の鍛錬こそが、大事な戦闘で大いに生かされるのよ」
まったくの正論を叩き付けられた凛汰郎はしょげた様な様子を見せ、それならどうするかを考え始めた頃
「……と普通なら言いますが」
「わかりました、期間が20日以上あるのですね? それならば何とかなるかもしれないですわよ」
付け足された二言に、凛汰郎は喜びに浸れるが…更にミリアーナは一言付け足した
「但し条件がありますわ」
「これからの修行期間中は…私達のパーティに入りなさい」
突然の条件に、凛汰郎が反応するよりも早くアリアが声を上げる
「何を言っているのですか!! 敵であるアナタに魔王様がこんなにも頭を下げているのにも関わらず…剰え勇者のパーティに入れなどと…ふざけるのも大概に…ヒゥン」
アリアのお尻をつねり、コホンと一泊置いた凛汰郎はミリアーナの条件を飲むと言った
「だが一つだけ俺からも…」
「シャルを一緒に連れて行っても良いか?」
隣で他人事の様にお茶を啜っていたシャルは、急に話を振られお茶が喉に詰まり胸元を叩く
「別に構いませんわ…そうなればこの品性が疑われる様なこちらの女は?」
「アリアには他にやらせる事があるからな…俺が修行している間は別行動だ」
凛汰郎のその言葉に、アリアは巨石を頭上に叩き付けられた様なショックを感じた
「それじゃあ、必要な支度を済ませたら午後3時にギルドに来てくださいですわ」
ミリアーナに玄関先でそう言われてから、凛汰郎達は一旦神殿へ転移して戻った
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