七つの大罪は進化する?!…結構危ういかも…

 世界には元々全部で十六の種族がいた


 元はお互いに不可侵条約を全種族の代表で結び、共存しあって生活していた


 だが…食料や燃料といった資源は無限にある訳では無い…

 当然、貧困化により全種族が飢餓に陥りこのまま行けば資源が完全に無くなり、この世界から生物はいなくなると誰もが思った


 そんな時…今は亡き種族【悪魔種イービエスタ】のとある悪魔が不可侵条約を破り【人類種ヒューマン】を殺し食べたのです


 この出来事をきっかけに世界各地で他種族の領地へ侵入し…殺害と略奪か繰り返され…

 やがて、憎しみが憎しみを呼ぶ負の連鎖が生まれ…【大戦】が起こりました


 【大戦】が始まって500年余りが経った頃

 遂に滅びの時を迎える種族が出た


 それこそが、【大戦】のきっかけとなった種族…悪魔種イービエスタだったのだ

 そんな彼等はこう思ったのです


――我等の血統を絶やしてはならぬ……と


 そこで彼等は、他の種族達に白旗をあげて降伏し…繁殖する為に個体を提供してくれないか…と頼んだのだ


 しかし、当時の【妖霊王】や【人間王】達はこの申し出を断りそのまま死ねと無慈悲にも言い渡された


 だが…そんな彼等にも救世主がいた

獣人種ワービースト】【巨人種ギガント】【海麗種セイレーン】【鳥怪種フォーゲル】【精霊種フェアリー】【龍貴種ドラグノア】【森精種エルフ


 この七つの種族が、それぞ一個体ずつ【悪魔種イービエスタ】に提供した


 だが…他種族通しでは中々子が産まれず、徐々に【悪魔種イービエスタ】は減って行った


 その時だった、なんと【妖霊種デモーニア】の1人が王の命令を無視し…悪魔種イービエスタの1人との子が産まれたのだ


 それが皮切りに、他の種族の間にも子が産まれだし…八人の悪魔との混血が誕生したのだった

 悪魔種イージエスタは生き長らえた…そう思っていた


 だが、獣人種ワービーストの子どもの親が【天霊種エンジェル】に殺され…それにより怒りが爆発し、天霊種エンジェルが住む《ニムルヘルム》に攻め入ったのだ


 だがしかし、天霊種エンジェルは【神聖種ゴッデス】との共存関係にあり…混血種達は死闘を極めた


 戦いも終盤に差し掛かり…遂に八人の内の一人が殺されかけた時であった

 その男が覚醒し、天霊種エンジェル達を次々となぎ倒していったのだ


 その覚醒した男により、【神聖種ゴッデス】の一柱が敗れ…戦いは混血種達の勝利に終わった


 そして、その男の強さに惹かれた七人の混血種達は故郷を離れ…【七つの大罪】の称号と新たな真名が与えられた


 その男こそが【初代魔王】であり、後にブレナーク地方に国を築き上げた魔王であった


 あの男は危険であり、もう誰にも逆らえないと言われ出した頃…全十五の王達はこの男を【魔王種サタニシア】という新たな種族と共に新たな王として認めたのであった




________________________


わたくし達はその七つの大罪の子孫であり…そして、先程話した通り混血種なのです」


 アリアはそう言うと同時に、身に付けていた衣服を脱いでいく

 凛汰郎はいつもの様にツッコミを入れようとするが…いつもとは様子が違うため黙って見ている事にした


 服を脱いだアリアの姿が変わり、その姿はまるでおとぎ話に出てくる…人魚の様だった


わたくしは【海麗種セイレーン】との混血種…その真名を《レヴィアタン》と申します」


 そう名乗ると同時に、レヴィの腕がまるで水を切った雑巾の様にカラカラに乾いていく

 レヴィは直ぐに神殿内にある小さな池の水を飲む、すると乾いた腕が元の水々しく…ガラス細工の様に鮮やかなレヴィの腕に戻る


わたくしは水場以外でこの姿になると直ぐに枯れてしまう為、【妖霊種デモーニア】の名を名乗らざるを得なかったのございます」

「長きにわたって魔王様に隠名で呼ばせてしまい…申し訳ございませんでした」


 レヴィは足が尾ひれとなっている為、地を這う様な格好でその場にひれ伏す


「……そうか、その事に関しては特に問題無いと思う」

「《アリア》と名乗れば海麗種セイレーンでは無く、一時的にだが妖霊種デモーニアとなって乾きに耐える事が出来るって事だろ?」


 凛汰郎はそう解釈してあげた後、なぜ傲慢が魔王になれるのかの理由を聞く

 話を聞く限りでは覚醒したのは先代様という訳で、それは妖霊種デモーニアとの混血種だったからだと思っているからだ


「いえ、わたくし達も確かに魔王種サタニシアに進化するのは理論上は可能なのでございます」

「ですが…依然として条件がわからない為、わたくしを含め5人の同朋は進化を諦めました」


 レヴィのその言い方に凛汰郎は、まさかレヴィも進化を目論んでいたのかを尋ねると…一時期はそんな時もあったというらしい


「ですが…【傲慢】と【強欲】の二人は……進化を諦めず先代様に隠れてあらゆる術式やアイテム、スキルに頼りましたが…遂には叶われず…わたくしも諦めたものだと思っていたのですが…」 


 レヴィはそう言うと、神殿の天井を開き満月からは少し欠けているが…

 その月の光をいつも身に付けていた徽章に埋め込まれた蒼色の宝石に集めると次の瞬間


 神殿の中に溢れんばかりの海水が出現し、海水の中には魚達も泳ぎ始めた

 そして、レヴィが徽章の宝石を取り外すと…海水が引いていき、溺れる寸前にあった凛汰郎は激しく呼吸をする


「これはわたくしの体の一部を使って造り出した宝石…云わばこれはもう1人のわたくしでございます」

「【嫉妬】の象徴の徽章…わたくしは先程の様に辺りに擬似的な海域を発生させる効力があります」


「宝石の能力は全員違います、その発動条件はこの宝石に魔力を注ぎ込む事ですが……発動させるには莫大な魔力を消費します」

「そこで、先程の様に月の光や自然の溢れる魔素を吸収させて発動させるのが普通でございます」


 それならば満月の夜に現れる理由は解った

 満月ならば徽章の能力を最大限に引き出せ、最大火力の魔法を発動できるからだろう


 だがしかし、それが進化に直接関係しているかは理解出来ず凛汰郎は頭を悩ませる


「そして、わたくしも1度は進化を目論んだ身でございます…その条件の仮説として1つ此度の件に関するかもしれないものがあるのです」


「それは人々が発する【負のオーラ】…とわたくしが勝手に命名したのですが」

「その負のオーラを虐殺により爆発的に溢れさせ、そのオーラから生じる強大な魔素を吸収する事で進化できると……」


 つまりは、【人類種ヒューマン】最大の都市である《リブレント》で虐殺を行い…大量に発生する負のオーラを用いて進化しようとしている


 確かに、不可能ではないかもしれない理論

 だがしかし、あくまで理論上の仮説に過ぎない…それで数多の人間を殺すなど…


 正しく【悪魔】のする事に他ならない

 凛汰郎は《超魔道的紋章アブノーマルシール》を解除して立ち上がり、リブレントの街へ向かう


「行くぞ、そんな悪行許しておけない」

「それに…あの国は俺達の物だ……そんな事を見逃す事は決してない」


「アリア、シャル行くぞ…次の満月までに対策を練り…」

「【七つの大罪・強欲の罪】を粛清する」


 レヴィはアリアの姿に変わり、ミニシャルは凛汰郎の肩から離れて人間の姿に変わり、二人は凛汰郎に後ろを歩き始めた


 次の満月まで…後29日

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