ハロウィンじゃなくてバイ○ハザードが始まったの!?
「「トリック オア トリート!!」」
子ども達の元気な声が夜の街に響き渡る
その文化には種族の垣根など存在する筈もなく、いつも以上に他国からもリブレントに遊びに来る他種族様もいる様だ
そんな中、卵の黄身と白身を頭から垂らしビシャビシャになっている男がいた
「確かにお菓子は持ち合わせてなかった俺も悪かったんだろうけど…ほら、普通イタズラって水鉄砲で撃つとかじゃん?」
凛汰郎はそうブツブツと呟きながら身体中に染み付いた腐った卵の臭いを取り除く為、宿屋にてシャワーを浴びている
「腐った卵投げつけるとか…今日日聞かないぞ…どういう教育してんだ……」
凛汰郎はそう言って風呂から出ると、そこにはベッドの上に縛り付けられ鼻息を荒くしたアリアの姿が現れる
何故縛っているのかは…理由はこうである
1、凛汰郎が風呂に入る為に服を脱ぐ
2、アリアが何を思ったのか凛汰郎の脱ぎ捨てた服を拾い上げて匂いを嗅ごうとする
3、注意しても止めなかった
凛汰郎もここまでの変態とは思っていなかったのが悪いのか…いや、それは有り得ないだろうと結論付けて服を着る
その後、椅子に座りどっと来た疲れに凛汰郎は深いため息をつく
「年に一度のハロウィンだ、盛り上がるのもわかる…大いにわかる」
「そして…それにギルドの冒険者達も協力しよう…それもわかる……」
凛汰郎は二言呟いた後、深呼吸をして溜まった鬱憤を全て放出する
「支給されるお菓子少なすぎだろ!!」
「配られた時にはさ…あれ? これ余るんじゃね? とか思ってたけどさぁ…足りないよ!! 子ども舐めてたよ! 子どもの貪欲性半端ないよ!!」
凛汰郎はそう宿の中で叫ぶと…いつの間に拘束を解いたのかアリアが起き上がり険しい表情をしながら辺りを警戒している
「どうしたアリア」
ただ事では無いと察知した凛汰郎はアリアに近付き耳を貸す
「今街の中にドス黒いオーラを感じました」
「ですが…このオーラ何処かで感じた事があった様な気がします…」
アリアがそう言うと同時に…近くで男性の悲鳴が聞こえてきた
凛汰郎とアリアは窓から飛び降りて悲鳴が聞こえた方へ向かう
すると、そこには男に腕を食べられ今にも出血多量で死にそうになった男がいた
「酔ってるにしては異常だ、アリア…ここからあの腕を食べてる男を拘束してくれ」
そう指示されたアリアは植物を腕を食べてる男の足元に忍び寄せ、多少の抵抗があったモノの数秒で拘束が完了した
「そこの男はもう助かりません」
植物を介して食べれた男性を診てみるが…
あの叫びは、既に致死量の出血をし死に掛けた状態での最後の抵抗だったのだろう
「そうか…それは気の毒だな……」
凛汰郎はそう呟いた後、拘束した男を確認しに行くと…今度は肉が腐った様な臭いがしてきた
「こいつもハロウィンでお菓子を持ってなかったのか?」
そう言って凛汰郎は手を伸ばそうとすると…アリアに大声で制止された
急に声を出されて驚いた凛汰郎はその場でビクつくと…拘束した男が腕を伸ばして凛汰郎を掴もうとした
「な…なんだ? 自分が捕まってるのが理解できないのか?」
男の身体をよくよく見ると…肌は爛れて拙く…片目がなく、骨まで見えそうな程の小さな穴が全身に開き、腐臭が漂ってくる
アリア曰く、身体の腐り具合や臭いからして凡そ死後数週間程であるという
「これは…巷で有名な【ゾンビ】か…この世界では確か…モンスターに分類されてたな」
凛汰郎はそう呟いた後、アリアにこのゾンビの頭を潰す様に指示する
すると、ゾンビの脳が炸裂し…建物の壁や道路に腐肉と共に散布される
だが…ゾンビはまだ蠢いている
某映画とは違い頭を潰しても動く様だ
今度は身体を切り刻んでもらう…するとブロック状になった腐肉は地面に落ちると同時に煙を立てて溶けていった
念の為に煙も調べてもらったが…人体に有毒なガスは空気中で分解されるらしく問題ない様だ
「アリア…とりあえず街中に植物を伸ばしてゾンビがいないかを探してくれ…」
「それから子ども達の保護と避難要請をギルドに…そして、感染したと思わしき奴は……殺してあげてくれ…ゾンビになって家族を傷付ける位なら消える方が本望だろう」
凛汰郎の指示にアリアは迅速に行動し……無礼を承知の上で凛汰郎に尋ねる
「魔王様は
呼び止められた凛汰郎は、振り替える事なく両足に力を込めターンターンと地面を蹴って飛び跳ね始める
「この間クエストで墓場に行っただろ?」
「ゾンビを作るには死体が必要だ、犯人はそこにいるだろうから…先に行く」
凛汰郎の返答に不安が募り始めるアリアは…"お待ちください"とは言えなかった
その表情に表れていたのは…激しい【怒】の感情、声を掛けるのも不敬であるとアリアの全細胞が訴えてきたからだ
「それじゃあ……行ってくる」
「リブレントは…頼んだぞ【
凛汰郎のその言葉にアリアは片膝をついて答える…ただ一言の言葉を添えて…
「《
その一言を聞いた瞬間、凛汰郎は舗装された道路のレンガが割れ、大地が裂ける程の脚力で地を蹴った
人に当たらぬ様に真上に飛び、集団墓地の方角へ今度は空気を蹴り飛ばした
「それでは…この不肖《§〒∴◇∇》…」
「魔王様のご命令により…【殲滅行為】及び【救出行為】を行います……」
アリアは決して人には聞き取れぬ発音で名乗りを上げ…異形の姿へと変化していく
相反する行為の同時執行…本来ならば不可能に近い行動を可能たらしめる為に…
そんな凛汰郎達の一連のやり取りを見ていた一人の女は……月の光に照らされた二人は金の髪を揺らしながら集団墓地へと向かった
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なるべく墓地を荒らさぬ様に…と言うよりも凛汰郎の金で直した墓石等を再度壊さぬ様に慎重に地面に落下する
一先ず近くの木の陰に隠れて辺りの様子を伺う…すると、近くで独り言をブツブツと言う声が聞こえてきた
「な~んで今回は墓場でお留守番なのよ~」
「折角あの男と再会出来ると思ってたのに~!!! あんな捨て台詞を吐いてきたのに…ウチはショックを隠せないんだよ…」
ブーツの厚底を座りながら墓石にコツコツとぶつけている赤髪の女……
シャルと名乗った女の姿がそこにはあった
「はぁ~あ…魔王ちゃんも心配し過ぎだって~…街はゾンビの騒動でここに来る様な気は回らないっての!」
シャルはそう言うと、墓石から降りてまるで道端の小石を蹴り飛ばす様に墓石を粉々に蹴って破壊する
「ん? この匂いは…そこに誰かいるの?」
シャルは鼻をヒクヒクと動かす素振りを見せて、凛汰郎が隠れている木を指差す
「出てこないの? まぁ別に良いけどさ~」
「早く出てこないと…その木ごと削っちゃうよん☆」
まるで新しいオモチャを与えられた子どもの様に声のトーンを上げて手に持っているステッキの先端を木に向ける
「……はい♪ 時間切れ~♡」
シャルがそう言うと、ステッキの先端に光が集まっていき…その光が膨らんでステッキの先に大きな球体が浮かぶ
それを横に振ると…2m超程の穴が気の中心に空いた
その後、光の球体は木を全て削り取る…
という表現が最も合っているのだろう、木は跡形もなく無くなっていた
「あれ? 君は…あの時の自称・魔王くんじゃ~ん♪」
「まさか私に会いに来てくれたの? と~っても嬉しいわ♡」
シャルは凛汰郎の姿を視認するなり、喜ぶ素振りを見せて凛汰郎に近付いていく
「無駄話をしてる暇はない…今すぐ街に放ったゾンビ共を元の場所に還してやれ」
「死んだ人間を利用するなんて…許されない行為だぞ」
凛汰郎はシャルを睨み付けながらそう言うが…シャルは上機嫌のまま鼻歌を歌い始める
「しょうがない…一旦お前には…」
「人の痛みを味わってもらうぞ…外道が」
その言葉を聴いた途端シャルは鼻歌を止め、凛汰郎を見てクスクスと笑う
「良いよ~…殺るなら早く初めよっか☆」
シャルはそう言ってシルクハットを空中に投げ捨て、ステッキを地に差し込みニヤリと笑った
「退屈させないでね☆」
その一言を火蓋に、凛汰郎はその場からシャルに向けて駆け出した
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