通り魔の犯人の捕縛に成功しました??

 夜風が吹き荒び、街灯が仄暗く夜道を照らしている中、一人の頭巾を被った女性がスタスタと歩いていた


 すると、街灯の天辺にカツンとヒールの音を立てながら現れた女はニヤリと笑い飛び上がり頭巾の女性に向かって急降下する


「今だアリア!! 拘束しろ!!」


 建物の中から凛汰郎の声が響き、鋪装された道を間を這う様に植物が飛び出しヒールの女を街灯に縛り付ける


「イッタタ~…ウチにこんな事するなんて…あんた達何者なのよ」


 牙を剥き出しにし、漆黒の羽を広げて凛汰郎を見る吸血鬼ヴァンピールに凛汰郎達はオーラを発しながらこう言い放つ


「俺は2代目魔王だ、魔王を語る不敬な輩に鉄槌を下しに来た…洗いざらいお前等の情報を聞かせてもらうぞ…」


 アリアは建物の間からカツンカツンとヒールを鳴らして表れ、拷問に使えそうな植物を辺りに生やす


「魔王…ぷっ…キャハハハ!! ちょっとw 笑わせないでよw 人類種ヒューマンが魔王って…有り得ないってぇ…キャハハハ!!」


「だって…魔王ちゃんはウチ等の仲間なんだよ? ムリムリw お腹痛いw キャハハハ!!」


 アリアはまるで汚物を見るような目で赤髪の女を見下し、額に血管を浮き出しながら先ずは足を奪おうとする


「まぁ待て待て、落ち着つくんだ…お前の仲間は今一緒に行動してるのか? それともお前一人だけか?」


 凛汰郎の咄嗟の切り返しに赤髪の女は笑いを止め、凛汰郎を見入る


――なる程ねん…魔王って名乗るだけあって実力はまぁまぁある…けど、それはあくまで人類種ヒューマンの中ではって話だけど☆


「ねぇねぇ…そう言えば何でウチがその女の子を狙うってわかったのかな? 確かに今まで6人位殺したけど…今度は男を狙うかもじゃん?」


 赤髪の女がそう尋ねると、頭巾を被った女性も頭巾を脱いで凛汰郎に重ねて聞く

 黒い髪が風に揺れ、ふわっと凛汰郎に女性らしい淡い匂いがしてきた


「あの…私もそれ気になっていたのです…」

「リンクさんは何でこの場所…この時間に現れるとわかったのですか?」


 二人の女性に質問された凛汰郎は一瞬考えるが…特に秘密にする理由も無い


「別に難しく考える必要も無いよ」


 時間は少し戻り、凛汰郎が偽魔王軍の討伐を決意した時まで遡る



________________________


 凛汰郎は先ず通り魔事件のレティーナ以外の被害者全員の被害者やその遺族達に聞き込みを行い…とある事実に気がついた


「何で被害者は人類種ヒューマンだけなんだ?」


 被害に遭った女性一人一人の血族を遡っても…全員が全員純粋な人間であったのだ

 ここリブレントは他種族に対して寛容な国であり…街を歩けば獣人種ワービーストや数は少ないが森精種エルフにも会える


 少し空を見あげれば高所の建物の屋上には鳥怪種フォーゲル専門のお店等も建ち並ぶ程…言わば他種族達が生活している国なのだ


 無差別で狙っているのであれば…レティーナを含め6人中1人位は他種族がいても…いや、いなければ違和感を感じるのだ


 そして、考えるまでもなく犯人は女性に何らかの恨みがあるか…女性を標的にしていると自ずと分かる


 これで何故女性を狙うのかの理由がわかったのだった



________________________


 そして、黒髪の女性の質問である

 何故この場所で…この時間に犯人は現れるのがわかったかという事だ


 先程の被害者に聞き込みを行っていると…被害者達には更なる共通点を見つけた


「それは…必ず犯行の瞬間の現場は見られない…つまりは人気のない場所でのみ行われていたんだ」

「だが…その後は直ぐに誰かに見つかる様に何かしらの細工を仕掛けていた」


 レティーナを例にすれば…

 犯行が行われたのは凛汰郎とアリアが家を追い出された後であり…家の中であった為、人に見つかる事はないのだ


 しかし、その次の日には火の魔法結晶ラクリマ・フレイムを発動し火事を起こして通行人にレティーナの以上を他人に知らせていた


「そして今日は年に一度の【ハロウィン】一週間前なんだ」

「その性で…いや、そのお陰で街中はハロウィンの飾り付けで路地裏でさえも清掃活動が行われていたんだ」


 凛汰郎がそう言ってアリアにリブレントの地図を広げる様に指示すると…

 地図上に二つの✕印が付けられていた


「この✕印はな…今日の【午前6時40分】に唯一誰も飾り付けや清掃活動を行わない場所なんだ」

「後の話は簡単だ…二つの場所に囮を仕込んで犯人が来たらアリ…フィールの植物で拘束する」


 次々と暴かれていく作戦内容に…赤髪の女は若干の焦りを感じつつも…はバレていないと思い完全に面には焦りを出さなかった


 だが…赤髪の女のその顔を見て、凛汰郎は薄く笑うと口を開き嘲笑を露にする


「バレてないとでも思ってたのか?」


 その一言で赤髪の女の心拍は急激に上がっていく…


――何故バレた、何処からバレた、何故しくじった


 赤髪の女の頭の中でグルグルと思考が巡り…凛汰郎の考えを探ろうと顔色を見るが…何も分からなかった


「何で…ウチの目的が【勇者の暗殺】だとわかったの…そして、無差別に女を殺してたのは勇者の情報が、【勇者は女である】って事以外何一つ無いからって事も…」

「どうして…どうしてわかったのよ!!」


 赤髪の女がベラベラと自白すると同時に…凛汰郎の表情が一変する

 それはまるで…まんまと罠にハマった馬鹿を見る様な…嘲りの目であった


「はい、自白ご苦労さま…いや~実際何が目的かはわかんなかったけど…」

「親切で助かったよ…まさか自分から話してくれるなんてさぁ」



 凛汰郎はそう言うと…額にあった黒い紋章の様なモノがスゥーと消えて、凛汰郎が先程まで放っていた禍々しいオーラが消え去る


「あぁ終わったのか…って、うわぁ…こんなコスプレ女が犯人だったのかよ…」 


 凛汰郎はそう言うと、周りのアリア以外の人達は驚きに満ちた表情をする


「えっ…あれ? リンクさんですよね?」

「さっきまで淡々と語っていた寒気がする様なオーラが…あれ?」


 黒髪の女はそう言って凛汰郎をマジマシと見つめる…凛汰郎はあぁ…と言い手をかざす

 すると、空中に先程まで凛汰郎の額に刻まれていた紋章が浮かび上がる


「これは俺がさっき固有ユニークスキルで作った」

「名前を《超魔道的紋章アブノーマルシール》」


 凛汰郎はそう言うと、紋章をアリアの胸に貼り付ける…すると、アリアの胸が膨張しさらに暴力的な核爆弾おっ○いとなった


「これは一時的に紋章シールが刻まれた箇所の個性を爆発的に上げるスキルだ」

「ただこのスキルには欠点があってな…一度発動したらその役割を果たす迄は絶対に解除されないんだ」


 凛汰郎はこの紋章シールを頭に付けて、一時的に頭脳を飛躍的に強化したのだ


「あの…リンク様…紋章シールが付いてから…凄く…胸が苦しいのですが…」

「それに…先の方も立ち始めて…擦れて…あの…その…凄く気持ちい」


 アリアがそう言って身をよじり始めたと同時に、凛汰郎はため息を付いて合掌してから1回だけ一つかみする

 腕が飲み込まれる程に沈み…顔を埋めれば至福のひとときを味わえるだろう


 すると、紋章シールが消え胸のサイズも元通りに戻った


「……今のは仕方なくだからな」


 凛汰郎は自分に言い聞かせる様に呟くと、赤髪の女の方を向く


「それじゃあ…お前の質問には答えたし」

「アリア、洗いざらい全部吐かせといて」


 凛汰郎がそう言うと、アリアは笑顔を浮かべながら赤髪の女に迫る



 すると次の瞬間、凛汰郎達の間を風が通り…赤髪の女が目の前から消えていた


「!?…どこへ消えた」


 凛汰郎やアリアは直ぐに辺りを見渡すと…街灯の上に二人の男女が立っていた


「まさかね~…褒めてあげるよ、そして決めたよ……リンクとフィールだね…」

「ウチが必ずその首を落としてあげるね♪」


「まったく…お前等も不幸だぜ…キシシシ」


 二人はそう言い残すとその場から立ち去ろうとするが…凛汰郎はアリアに抱えられ共に飛び上がる


「ウチはシャル、でこっちの狂犬はアルフって言うの…また会える時を楽しみにしているからね…ばいば~い♡」

「……まぁ…この街にいるなら少し経てば嫌でも会うだろうけどね」


 何処かの屋上で追い付いたが…シャルがそう言うと辺りからコウモリが飛んで来て二人を包み込む

 コウモリがいなくなると…そこに二人の姿は無くなっていた


「逃げられた…あと少しで嫌でも再会する…か……大事にならなければ良いんだが…」


 凛汰郎はその場に佇み、昇る朝日を見つめながらシャル達の事を思いながら呟いた

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