金髪ポニテのお家にお呼ばれされちゃいました!!

 リブレントの最北端にある二階建ての木造の家、辺りには松の様な木が植えてあり庭には砂利が敷き詰められている


 カッポーンとししおどしが鳴り響き、その風景はまるで日本の古くからある和風の家そのモノであった


 玄関には段差があり、段差を上がると廊下が延び2階へ登れる階段と二~三部屋分の襖が見える


 廊下の突き当りにある襖を開ける、10畳程の広さに掛け軸、床の間etc……凛汰郎にとっては心が安らぐ様な環境であった



「良いか、余計に部屋のものに触るな!! 壊すな!! そして……絶対にあの部屋に入るんじゃないぞ! 絶対だからな!!」

「それから服を脱いで身体を拭いていろ、返り血で家が濡れたら掃除が大変だ」


 レティーナはそう言って、隣の部屋へ続く襖を指さした後、服を作りに他の部屋へ行ってしまった


 凛汰郎とアリアはいつも服を洗う様に、アリアの【洗浄クリア】の魔法で返り血をなくす


「魔王様……何なのですか? 初めて見る部屋の構造、そして何より……この触り心地の良いふわふわは何なのでしょうか」


 アリアは綿の詰まった座布団を手に取り、不思議そうに表裏を返して観察したりする


「レティーナが聴いているかもしれないから魔王様は止めておけ…そして、それは座布団って言ってこう使う物だ」


 凛汰郎は座布団を足元に置き、その上に正座で座る……アリアは凛汰郎と同じ様に座布団を置き、恐る恐る座る


「ん……これは中々座り心地が良いでございます……まぉ…リンク様、あの絵が書かれた紙は何なのでしょう……あ、あの部屋の隅にある木彫りの小屋は…」


 アリアはキョロキョロと物珍しそうに目を輝かせながら部屋の中にある、神棚や掛け軸を凝視する


――こうやっていると普通の女の子みたいなんだな……とアリアの珍しい姿につい頬を緩ませる凛汰郎であった




 1時間余り経過した頃、アリアは何故か段々と口元が緩み始めた


「リンク様…ハァ…足の感覚が亡くなってきています// それに…そこはかとなく足がビリビリとしてきました…ハァ……」


 新しい快感を見付けたアリアは仕切りに座り直し、その度足の痺れを味わっていた


「正座で感じるって…アリアの事…まだまだ甘く見ていたよ」


 凛汰郎は小さくため息をつくと、襖が開き2着の服を持つ、鎧を脱ぎ私服姿のレティーナが現れた


「出来たぞ! さぁ早速着るが良い!!」


 レティーナは自信満々に持ってきた服を二人に押し付けるが…凛汰郎は拒絶する


「いや……ちょっと待っててくれるか…足が痺れて立ち上がれないんだ……」


 産まれたての子鹿の様な足取りで立ち上がるアリアと違い、凛汰郎は無理に立てば倒れると知っている為痺れが消えるまで足を崩し、座っている事にした


 そんな凛汰郎の姿を見てレティーナはフフッと笑い出す


「すまない…いや、別に貴様が立てないのが滑稽だと笑った訳では無い…ただ、人間らしい所もあるのだな…とな」


 レティーナはそう言うと話し始める



「実はな…私が貴様等に付き纏っていたのは服の件もあったのだが、別の理由がある」


 レティーナはそう言うと、懐から三枚の写真の束を取り出す


「先ずはこれを見てもらおう」


 一枚目の写真、それは真っ黒な暗雲が渦巻き、至る所が崩れた陥落済みの何処かの国の城の写真であった


「これはブレナーク大陸にある、人類種ヒューマンの都市の一つ…【コルドット】という名の国だ」


 レティーナはそう言ったあと深刻そうな顔付きになり口を開く


「この国は冒険者だけでは無く…軍事力でもリブレントと同列の大国であった…だが、一月程前に【魔王軍】によって滅ぼされた」


 【魔王軍】そう言われた途端に、凛汰郎とアリアの二人の顔が変わる

 当然だ、まったく身に覚えがない事を言われたのだから…だがレティーナの話は続く


「【魔王軍】の情報は殆ど無く…伝えられた情報は敵の主格は二人の男女だと聞いた」


 レティーナはそう言うと、凛汰郎の顔を睨みつけ話を続ける


「貴様等がこの街で冒険者となったのは凡そ一月前……二人の男女…偶然か?」


 凛汰郎はアリアの顔を見る…だがアリアも困惑していた、アリアも身に覚えがない以上本当にまったく知らない事である


「偶然だろ、大体リブレントとコルドットは大分距離が離れている筈だ…それを一日二日で横断できる程の技術力は無いだろ」


 凛汰郎がそう言うと…レティーナは二枚目の写真を凛汰郎の前に出す



 それは一月前、爆乳シスターに助けられた教会と、そこに立つ右腕に黒い帯の様なモノを纏った凛汰郎がゴリを殴り飛ばした瞬間の写真であった


「この写真に写っているのは貴様だな?」

「この殴り飛ばされた男はリブレントに巣食う組織の幹部が所有していた化け物だ…今は我等のパーティの魔導師が《鎖の獄ジェイル》で捕らえている」


 レティーナはそう言い三枚目の写真を出す


 森の中で頭から大木に突っ込み、手足をだらりと垂らして伸びていたゴリの姿であった


「このゴリと呼ばれていた男は体重は500kgはある…それを遥か遠くにある樹海の中心部に殴り飛ばしたその力」

「明らかに人間離れしている…異常過ぎる程にな」


 凛汰郎は自分の体温が上がり、心臓の鼓動が早くなっていくのを感じる


「更に異常なのは…貴様の早すぎる成長」

人類種ヒューマンである筈の貴様は僅か一ヶ月で冒険者ランクが"B"にまで上がっている、前代未聞な事態だ」


 アリアは服を着替え終え、静かに気付かれぬ程度にゆっくりとレティーナの背後に回る


「単刀直入に聞こう……冒険者リンク」

「貴様…人類種ヒューマンではないな? 、返答によっては…ここで斬り伏せる」


 レティーナは殺気を全開にして凛汰郎を睨み付ける、それを合図にアリアはレティーナの首を断つ為に魔法を展開する


「止めろアリア」


 凛汰郎がそう言うと一瞬アリアは困惑するが……直ぐに展開していた魔法陣を消滅させてその場で片膝をつく


「まさか…な、こんなに簡単に見破られるとは思いもしてなかった」

「レティーナ、お前の言う通り…いや、ご察しの通りと言うべきか? 俺は人類種ヒューマンでは無い」 


「俺は……【魔王種サタニシア】だ……お前が倒すべき魔王の血統の者だ」


 凛汰郎のその言葉を聞き、レティーナは真横に置いていた青銅の剣を抜き、凛汰郎の首筋に当てる


「馬鹿正直に言うとは思わなかったが……貴様は死にたいのか? 私を愚弄しているとしか思えん」

「自分の正体を明かした真意はなんだ」


 レティーナの明確な殺気を浴びる凛汰郎は冷や汗をかきながら、ニヤリと笑うだけで答える素振りを見せない


「…っ!! 答えろリンク!! いやそれも偽名か」

「貴様等の目的は何だ!! 答えろ【魔王】!!」


 フー…フーと息を荒くさせながらレティーナは凛汰郎に迫る、その背後でアリアは血を滲ませながら拳を握りしめていた


――魔王様…もうこの者は殺すしか…

 アリアがそう思うと同時に、凛汰郎はレティーナの剣に手を触れ首から離す


「今回の件に…俺達は関係ない」


 凛汰郎はそう一言だけ言うと…レティーナを見つめる


 十数秒、凛汰郎達にとっては永遠にも思えた静寂のあと…レティーナは剣を収める


「……嘘は付いていない様だな、ならば問おう…貴様等は何の為にここに来たのだ」


 レティーナがそう尋ねると、凛汰郎は小さく微笑み…囁く様に口を開いた


「【世界征服】だ……だが、俺はこんな力による圧政なんかはしない…俺は俺のやり方で征服する」

「信じろとは言わない…だけど…この件だけは俺達にもわからないんだ」


 凛汰郎のその言葉を聞いたレティーナは…下を俯き立ち上がる


「試す様な真似をしてすまなかった」

「だが…貴様が我等の宿敵とわかった以上…今後も貴様の監視を続けさせてもらうぞ」


 レティーナはそう言い凛汰郎に手を伸ばす


「程々にな…そして、俺とアリアも個人的にこの件は調べてみるとするよ」


 凛汰郎はレティーナの手を掴み立ち上がるが……猛烈な足の痺れが残っており、ふらふらとよろめいて倒れてしまう


 すると、絶対に入るなと念を押された部屋に襖毎入ってしまった




「イッタタ……ん? これはなんだ?」


 凛汰郎はそう言うと、顔に落ちてきた布を取り、まじまじと見つめる


 それは青が主体となった布であり……ピッタリと身体にフィットする様なタイプの……

 【スポーツブラ】と呼ばれる下着であった


「な…ななななな……」


 レティーナは顔を真っ赤にし、剣を抜いて凛汰郎に一歩一歩と歩み寄る


「え!あの…えっと……スポブラでも男は興奮するもんだから心配するな!!」


 凛汰郎はフォローのつもりで言った言葉だが…レティーナの逆鱗に触れた


「くっ……出てってぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


 凛汰郎とアリアは顔面を真っ赤に染めたレティーナにつまみ出された


「なぁアリア…俺何か不味い事を言った?」

「魔王様…流石にあれはダメでございます」


 二人はそのままいつもの神殿へと、アリアに抱えられ飛んで帰っていった



________________________


「はぁ…はぁ……やはりあの男は危険だ…」


 レティーナはそう息を荒らげながら片付けをしていると…部屋の真ん中に凛汰郎に作った服が置いてあった


「まったく仕方の無い奴だ…明日届けてやらなければな」


 レティーナは服を拾い上げ、隣の寝室の片付かを再開しようと後ろを振り返る…

 すると……背後から女の声が聞こえてきた



「初めまして~♪ そして…さようなら☆」


 直ぐに振り返ったレティーナだが…その直後に掛け軸や神棚、襖に真っ赤な血の華が咲き誇った

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