冒険者登録ですか…いいえ、変態様ですね??

 ブレナーク大陸―リブレント王国

 国立、冒険者ギルド【英雄の酒場ヘルリアン



 ギルドの中は一種の酒場となっており、ギルドの冒険者だけではなく…他国の人や…見渡せば他種族も共に酒を酌み交わしている


  リブレント王国では、過去に罪を犯した者以外ならば、魔王種サタニシアでも妖霊種デモーニアでも冒険者になれるとのキャッチコピーを売りにしている


 だが、魔王や悪魔達が罪を犯してないなんて事はありえるのだろうか? という野暮な声は聴こえてこないのがギルドの良い所であろう


 そんなギルドの扉を開き、入ってきた男女二人に飲んだくれていた男達は目を奪われる


 流れる川の様にさらさらとした銀髪

 の裏側まで見透かされている様な青と紅色の瞳

 Gカップはある手に余りあるサイズのマシュマロおっ○い


 だが……何よりも目線を奪ったのは、ほぼ紐だけで突起ビーチクと絶対領域が最低限隠されただけの服装…

 さらには、男の方は首輪をされ、猿轡を装着させられ…上半身裸という異様な光景に…


 思わず酒場にいた男達や、女性に至るまでのギルド内にある全ての視線を釘付けにした


 銀髪の女はギルドのカウンターへ行き、先程からあわわ…と顔を紅潮させている受付嬢に話しかける


「冒険者ギルドって…ここで合ってるわよね? 冒険者の登録がしたいのだけれど」


 その魅惑の声に、男達は思わず脳髄までとろけてしまいそうになり…倒れてしまう


「は…はひぃ!! では名前のご記入後にあちらのお席でお待ちくださいぃ」

「おお……お連れの方の登録もなさり……ますか?」


 お連れの方…つまりは首輪を付けた男も登録するかと尋ねてくるが、当然と返す



 その後、30分程経った頃


「えっと…《アリアズ・フィール・バレンタイン》様と《リンク》様、カウンターへどうぞ」


 呼ばれた二人は席を立ち……いや、正確にはリンクが馬の様な形となり、その上に座っていたフィールが立ち上がった


 カウンターの席に付いた二人は席につき、受付嬢を見いる


「はい! ようこそいらっしゃいました!! 新たに冒険者ライフを始めようとしているバレンタイン様、リンク様」

「ここ英雄の酒場ヘルリアンはリブレント王国内にある最大のギルドで【大戦】時から存在していたと言われております」


 受付嬢は前口上を済ませると、一枚の用紙を取り出し説明を始める


「それでは、貴方様の種族をこちらの十二種族から選択してください」


 【人類種ヒューマン】F 【獣人種ワービースト】E 【巨人種ギガント】D

 【鳥怪種フォーゲル】C 【海麗種セイレーン】C+ 【精霊種フェアリー】B

 【森精種エルフ】B+【妖霊種デモーニア】A【龍貴種ドラグノア】AA

 【天霊種エンジェル】S【魔王種サタニシア】SS【神聖種ゴッテス】SSS


「種族の隣に書いてあるアルファベットは初期ランクとなっております」

「冒険者の方々には【冒険者ランク】という番付が授与されます、ランクによって受注出来るクエストは変わってくるのでご了承ください」


「ランクはクエストをこなしていくと、こちらがランクを上げるのが妥当であると判断した場合にのみアップします」

「ですが、場合によってはランクは下がりますのでご了承くださる様にお願いします」


 受付嬢の説明を一通り聞いた二人は用紙を記入し始める


 フィールは【妖霊種デモーニア】に、リンクは【人類種ヒューマン】に丸を付ける


「…ご確認ですが、バレンタイン様…そちらのリンク様は貴方様の何でございますか?」

「いえ、こちらのギルドの方針として…過去に犯罪を犯した他種族様は登録出来ないようになっているのです」


 受付嬢はそう言ってペコりとその場で頭を下げると、フィールは他の人にはバレない程度にニヤリと笑う


わたくしの所有物です、競売にて安く手に入りましたの…他にご質問はありますか?」


――要するに奴隷じゃねぇか!!!


 酒場の人達のほぼ全員の心が一致する

 そして、それを聞いた受付嬢は少しあごに手を置き考えたあと


「はい、それならば問題はございません」


――問題ねぇのかよ!!!


 酒場の人間……+αの心が一致した

 中には飲んでいた酒を吹き出すものまでいたという……


「それでは、こちらが【冒険者カード】となります、再発行は出来ませんので失くされません様にご注意ください」

「それでは…良い冒険者ライフを」


 受付嬢はそう言ってニコッと笑い、ヒラヒラと手を振る……だが、その目線はリンクの格好に対し冷やかな目をしていた


 その後、フィールは手頃なBランクのクエストを見繕いギルドを出ていった




 リブレント王国領土から少し離れた草原にて…首輪と猿轡を地面に叩き付ける男がいた


「チックショォガァァァ!!! アリアの作戦に乗るなんてあの時の俺は馬鹿なのか? いや、アホだったんだぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 凛汰郎はそう叫ぶやいなや、近くにあった大岩に頭を打ち付け八つ当たりをする


「魔王様……あの…よろしいですか?」


 アリアは岩に頭を打ち付け血を流している凛汰郎を止め、言葉を続ける


「魔王様…あの、ギルドの中で魔王様の事をわたくしが所有物であると言った時……何故か、胸の奥底や…膣の奥から…何やら出てきてしまい…これはもしかして…」


「いい加減にしろォォォ! これ以上俺に精神的ダメージをあたえないでくれぇぇぇ!!」


 凛汰郎はそう言って、更に激しく大岩に頭を打ち付ける


 そもそもこうなった理由はギルドに着いた直前……入室前の会話からである……



________________________


「ここが、リブレント最大のギルド…英雄の酒場ヘルリアンか、行くぞアリア」


 凛汰郎はそう意気込んで中に入ろうとするが…入る瞬間にアリアに制止される


「魔王様……無礼を承知でお許しください」

「魔王様は後に世界を征服するお方…もしこの冒険者として活動している間に万に一つ…虚数の彼方に存在する確率で人類種ムシケラにそれを勘づかれた場合…多少面倒な事になるかと」


 アリアのその言葉に、一言二言何か多い気がするが納得する凛汰郎はアリアの考えを聞き入る


「そこで本当に一瞬、登録を済ませるまでの間は…立場を逆転、魔王様がわたくしの…じゅじゅ、従者として振る舞えば人類種ムシケラ共に気付かれた場合にも対策しやすいかと……」


「本当に無礼なのは承知の上でございます…不快になられたのならば、このアリア…この首を魔王様に捧げる所存にてございます」


 アリアは深々とその場で頭を下げる、いや、その様子はまるで首を差し出した死刑囚のようであった


 少し考えた凛汰郎はアリアの性格上、冗談は言わないだろう…ましてや魔王様と崇めている自分に対して不敬だと分かった上での発言である

 

 そんなアリアに対する信頼が湧き上がり…

 アリアの変態度を忘れていた……


 その結果が…凛汰郎の一時奴隷化となったのであった……



________________________


「なぁ……偽名を使って登録…うん、それは特に禁止されてないから良い…」

「露出度が高い服装をして顔や細かな名前を覚えさせない様に努めたのもまだ許そう…」


 凛汰郎はそう言って身体を震わせながらアリアの方へ振り向き、指を指して一喝する


「俺にあんな格好させる必要はあったか!?」


 一喝されたアリアは、何故か顔を赤らめモジモジと指を絡ませて恥ずかしそうに凛汰郎に言う


「あの…その……魔王様のいましたチキュウの言葉に、《自分のやられたい事は自分にしかわからない》とあると聞きました…」


 何処で誰に聞いたのかはあえて聞かない凛汰郎は結末が読めたのか…苦虫を噛み潰したような苦笑を浮かべ始める


「ですので…わたくしがいつも体験している快感を魔王様にもお分かり頂ければ…更に凄い折檻をして頂けると思いまして…その、ダメでしたか?」


 指を絡ませて迫るアリアに、無自覚なのか少量の涙を浮べながら訴えてくるアリアに…これ以上強く言える程…凛汰郎はまだS心を理解しきれていなかった



 アリアは満足したのか、凛汰郎から離れて明るい笑みを浮かべたあと、アリアはそう言えばと切り出してきた


「魔王様のお考えを理解しようとする浅ましさをお許しください…ですが、なぜ高貴なる魔王様が下劣な人類種ムシケラ共の制度を利用してお金を稼ごうとするのでございますか?」


 凛汰郎は明後日の方向を向いていたが、アリアの質問に真面目に答えるべく向き直す


「別に特に深い理由はないが…冒険者と言えばクエストだろ?」

「クエストをこなす内にな…この《魔王の力》ってヤツを使いこなせる様になるかもってな」


 凛汰郎はそう言って気持ちを落ち着かせ、右手に全神経を集中させる

 すると、右手に黒い球体が集め…先程まで頭を打ち付けていた大岩を拳で穿った


「どの道いつかはこの力を自由に活用出来るようにならないといけないしな」


 凛汰郎がそう言うとアリアは、何故か目を輝かせ…一人で熱弁を始める


「あぁ…やはり魔王様はこの腐りきった時代を切り開き新たな時代をもたらす【開拓者パイオニア】…【征服者コンケスタ】…【創造者デイブレイカー】…」

「いいえ…どの様な言葉を用いても偉大なる魔王様を表すことなど…愚の骨頂というものでございますぅ…ハァ…ハァ……」


 凛汰郎はアリアを無視して、受注したリブレント草原にいる【化け蛙ジャイアントトード】の討伐へと向かった

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