第一章 異世界に来たらハーレム作りでしょ!?

銀髪美女には茨の鞭を?!

 目の前の白い光が収まり視界が戻っていく


 試しに手を握る動作をする―問題なし

 声を出す―いつも通りの俺の声だ

 自分の頬をつねる―やっぱイテェ!!


 夢ではない事を確認し、改めて今現在思っている事を口にし吐き出す


「どこだ此処ォォォォォォォォォォォォ!!!」


 吐き出した声は何も無い空間で乱反射し、凛汰郎に孤独感を植え付けてくる


 石で出来た窓も無い部屋、凛汰郎の周りに石柱が六芒星ろくぼうせいを描くように置かれている

 足元には何かの魔法陣のようなものが描かれている


「ど…どうかなされましたか? 何かご不満な点がございましたか?」


 現状に混乱している凛汰郎の背後から、まるで己の全てを包み込んでくれるような美しく、例えるならば川のせせらぎの様に落ち着く声が聴こえてくる


 振り返るとそこには、銀髪の長い髪に2本のとぐろを巻いた角を生やし、青と紅色をした瞳をしたまさに彫刻家も真っ青な芸術美と言える様な女性が立っていた


「綺麗だ…」


 つい凛汰郎はポツリと呟いてしまった

 だがしかし、この様な女性を見て出る反応と言えば今のような発言か息を飲んで黙り込むしかないであろう


「綺麗だなんて…わたくしにその様なお言葉…身に余る光栄でございます…」 


 銀髪の女性はそう言ってまるでそうするのが当たり前という様な程、流れる様に凛汰郎に対し跪く


「え…え〜っと……魔王様って一体誰のことを言っているんですか?」


 凛汰郎は頬を引き攣らせながら跪いた銀髪の女性の近くに寄りそう質問すると、深刻そうな顔をして女性は答える


「まさか…こちらに召喚する際に記憶障害に……わたくしはなんて事を、なんて許されない罪を…」


 銀髪の女性はそう言って後、どこからとも無く荒縄と三角木馬が出現し、あっという間に縛り上げ木馬の上にセッティングされる


「魔王様、どうか愚かなわたくしにそのむちで罰を与えてください…いえ、与えてくれなければ気が収まりません」


 いつの間にか凛汰郎はビッシリと棘が付いた鞭を持たされていた

 銀髪の女性の真剣な眼差しに負けた凛汰郎は軽く銀髪の女性を鞭打つ


「あぁん///魔王様ァ……もっと…もっとロクデナシのわたくしに激しい叱咤しったを…激しい罰を……ハァ…ハァ……」


 銀髪の女性は息を荒らげながら目にハートを浮かばせて凛汰郎にもう一度鞭打つ様に懇願する


 この一瞬の間に凛汰郎は理解した

――この人は深く関わっちゃいけない人だ…と


「あぁ///放置プレイですか?! わたくし如きに鞭は勿体ないと……ハァ…魔王様ぁ…魔王様ぁ…」


 凛汰郎は鞭をそこら辺に棄て、銀髪の女性を置いて石の部屋を後にした…


________________________


 部屋を出た凛汰郎はここが巨大な崖の上に建てられた神殿のような建物だと気が付いた

 その後、辺りを見渡した凛汰郎は息を呑むような景色が飛び込んできた


 見渡す限り広がる草原の向こうに見えるまるでD社のシンデ○ラ城のようなお城とその下に広がる巨大な街並み

 空に漂っている地面を抉りとった様な大陸


 そして、極めつけが…赤い鱗を身にまとい巨大な翼で空を切るドラゴンが空を飛んでいるのだ


「す…スッゲェェェ!! 本物のドラゴン?!」


 ドラゴンを目の当たりにした凛汰郎は年甲斐も無くはしゃぎ、興奮をあらわにする


 凛汰郎は芝生の上に寝転がり空を見上げる

 そして、飛んでいるドラゴンをずっと見ている内にとある事を思い始めた


――手を伸ばせば届きそうだなぁ…

 そう思った凛汰郎は思わず届く筈も無いドラゴンに向けて手を伸ばし、掴もうとする


 すると、突然手のひらに黒い小さな球体が集まっていき、数秒間の間集まっていた球体は野球ボール程の大きさになる


 黒い野球ボールのような物はキュィィンと音を立てながら廻り始め、ドラゴン目掛けて一直線にレーザーの様なものがとんで行った


 レーザーがドラゴンに着弾すると同時に、辺りに爆風が巻き起こり……ドラゴンは白目を向き、体制を崩しながら地に落ちていった


「………は?」



________________________


 神殿の中へ戻ると、そこでは先程の銀髪の女性がちょうど自前のSMセットを片付けている最中であった


「魔王様、お戻りになられましたか 先程の無礼どうかお許しくださ……」


 銀髪の女性はそう言って深々と長いドレススカートの裾を持ってお辞儀をしようとするが、凛汰郎により途中で中断された


「なんか手からレーザーが出たんだけど?! 更に言えばそのレーザーでドラゴン殺しちゃったんですけど!?」


 銀髪の女性は凛汰郎に詰め寄られ、何故か頬を紅潮させ息を荒らげ始めたが…凛汰郎の問いに真剣に考え、とある決断をだす


「もしや…魔王様はこの世界の事も…魔王様自身の事も何も理解していないのでございますか…?」


 銀髪の女性は、出会ってから初見の印象では想像もつかないと様な真剣な眼差しで凛汰郎を見つめる


「あ…あぁ、そもそも魔王様って一体何の事なんだ? そしてここは一体どこなんだ? 日本にこんな地形は存在していないと思うんだが…」


 銀髪の女性は口元に手を軽く置いて考える素振りを見せたあと、今度は腰の辺りにある夜を写しているような黒い羽を広げながらスカートの裾を持ち、自己紹介を始める


「先ずはわたくしの事からお伝えした方が今後も話しやすいでしょう…」

わたくしは魔王様が束ねる最強のしもべ…【七つの大罪】が一人、《嫉妬のアリア》でございます…」


 アリアは自身の名を明かしたあと、凛汰郎に近付いて手を握る


 アリアに手を握られた次の瞬間に景色が一変し、辺りは戦火に包まれ、大地が裂け空も真っ赤に染まっていた



「時は凡そ1000年程前…世界には全十二の種族が己の正義を振りかざし血で血で争う【大戦】がありました」

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