【その6】
前略、お父さん、お母さん。
俺が、ひょんなことから魔法少女──ただし主役の
当初は戸惑うことばかりでしたが、さすがに最近は慣れて、魔法の扱いや戦術なんかもそれなりに上達してきたと思います。
キャロルのノーコンも多少はマシになり、腹黒妖精は喜んでます……もっとも、それでも依然、器物損壊は少なからずあるんですが。
影の世界から侵攻してくる魔物も、日に日に出現頻度を増しているので、決して気は抜けません。
ですが……。
「──さすがに、小学生女児が観る時間帯のアニメで、触手はどうかと思いますわ」
大きいお友達が観る深夜アニメならともかく……とは口にしない。
「そ、そんな呑気なコト言ってないで、アルピーノちゃん、助けて!」
先ほどからちょこまかと動き回りながら、うねり、這い寄る触手(太さは成人男子のピー……よりは細い親指くらいで、ヌラヌラと粘液に塗れているのはお約束)の群れから逃げ回っているキャロラインが文句を言う。
(止めたのに、勝手に突っ込んで行ったのはキャロルなんだけどなぁ)
溜め息をつきながらも、俺は対多人数モブ戦に最適な召喚獣を呼びだそうとした……まさにその時!
何となくピン!とキた方角に手を伸ばして、ソコにあるモノをむんずと掴む。
「へゃっ!?」
ほら、やっぱりね。
「ヘロー、ミズ・リンドー。わざわざ
うん、
「え、いや、その……ぴ、ピンチみたいだから、リンドーさんも何かフォローできたらなーって」
「嘘ですわね」
稚拙な言い訳をバッサリ切って捨てる。
ちなみに、この若作り経産婦妖精は、隙を見て逃げ出そうと試みてるみたいだけど、
「そ、そんなー、嘘だなんて……」
「なら、その左手に持った、どう見ても隠し撮り用としてか思えない超小型カメラは何ですの?」
別に、これまでみたくアルキャロの戦いっぷりを撮って、テレビ局に渡すとかいうくらいならうるさく言うつもりはない。
でも、今回のコレ、どう考えてもウス=異本かERG的な展開を期待してるだろ、アンタ!
「や、やーねぇ。そんなはずないでしょ。決して、いつも修復魔法で応援頼んでる
語るに落ちたというか……ホントにこんなポンコツが、異世界とは言え公務員(しかも課長!)なんてやってていーんだろうか。
「な、何でもいいから、早く助けてー!」
おっと、忘れてた。
クモ型幻獣の
「ふむ……」
「え? な、なぁに、アルちゃん? リンドーさん、なんだか嫌な予感がするんだけど」
「クスッ♪ せ・い・か・い、ですわ」
蜘蛛糸で魔法を封じた状態のまま、思い切り触手の群れの中心部に向かって、“ソレ”を投擲する。
「ひぎぃゃあぁぁ! ひとでなしぃーーーーー!!!」
はしっこいキャロラインよりも与しやすい獲物と見た(そういや、コイツらどうやって感知してるんだろ)妖精の方に触手達が殺到し、尊い犠牲(笑)のおかげで無事にキャロラインは逃げて来ることに成功したんだ。
「ぅぅ……何度か
大丈夫だろ、たぶん、メイビー。
「もぉ~、アッタマきた! 手加減なしの撃滅浄化魔法を叩き込んじゃうよ!!」
「撃滅」と「浄化」という単語は、何気にイメージが
──その後、
人的被害はないし、路面や建物なども壊れてないから、キャロがキレた時にしては、まだマシな方だな。
その代わり、触手が占拠していた場所にあったはずの刈り入れ間近だった田んぼの稲穂は全滅してるけど……ま、あんな触手の苗床になってた稲とか食べたら腹壊しそうだし、いいか。
え? 俺が投げたアレ?
──うん、誠に遺憾……もとい不幸中の幸いなことに、撃滅浄化魔法は邪悪でないモノにはさしたる被害を及ぼさないので、無事に生還している。まぁ、数分間とは言えあの触手群に弄ばれてたせいか、18歳未満お断りなアヘ顔ダブルピース状態になってるけど。
ま、向こうの思惑なら、俺かキャロの「そういう」場面を撮って売ろうとしてたんだろうから、自業自得だよな。
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