【その5】

 「話を要約すると、お金が足りなくなったために、俺達の情報をテレビ局に売った、と?」

 「あ、アルくん、人聞きが悪いわよ~。確かに「幻獣召喚士」と「竜之巫女」として活躍する映像は提供したけど、ふたりの身元その他は極秘にしてあるんだから」

 と、言われても、そもそも魔法少女に変身したからって、俺はともかくキャロルの容姿はそんなに大きく変わってない。せいぜい、髪と瞳の色が多少薄くなってるくらいだ。

 CGアニメがヘンにリアルだから、バレるのも時間の問題のような気が……。

 「あ、それは大丈夫。マスターテープに強力な認識阻害かけてあるから、テレビ局関係者は、あの魔女っ子と貴女達を結び付けて考えないわ」

 それが本当ならひと安心、か? いや、テレビ局関係者以外の一般人があのアニメ見て、俺達をモデルと気づく……や、それはないか。

 現実このせかいで、そこらの中学生が魔法少女になる……なんて言ったら、普通に頭を心配されるレベルの戯言だし。


 「ま、まーまー、ふたりとも落ち着こーよ。でも、どーして、そんなにお金が足りなくなったの?」

 キャロルがとりなすように言うが、リンドーさんは恨めしそうにキャロルを見つめる。

 「キャロちゃんのせいよ~」

 「え? わ、わたし!? た、確かに外で打ち合わせする時、いつもパフェとかいっぱい頼んでるけど……やっぱりアレ、マズかった?」

 そう言えば幻術を使って人間に化けてる(20代半ばのキャリアウーマン風)時は、喫茶店の払いは、この人(妖精?)がやってたな。


 いや、しかし、さすがにソレはないだろう、たぶん。

 「違うわよ~。あのね、戦いのあとの街の修復魔法、あれってタダじゃないの」

 ! なるほど。それならわかる。

 「あれだけ広範囲にいろいろ壊れてると、私ひとりじゃ直せないし、物理修復が得意な人に応援頼むんだけど、結構疲れる魔法使う以上、やっぱり無料奉仕ってワケにはいかなくて……」

 せ、せちがらい。魔法の国に住む妖精でも、やはり義理人情と貸し借りのしがらみに縛られてるものなのか。


 「え、えへへへ~」

 再三溜息をつく俺と、さすがにバツが悪そうに頭をかくキャロル。

 「だからね、キャロちゃん。今後は魔法を使う時、もう少しだけ周囲のことを気遣って。ね? あと、敵に魔法かわされたらどうなるか、とかも考えつつ戦ってちょうだい」

 「は、はいっ! ……あんまし自信ないけど(ボソッ)」

 こ、コラ! やる前からあきらめるヤツがいるか!

 とは言え、確かにコイツは、全力全開で運動してる時は頭カラッポにして本能で動くタイプだ。

 100メートル走とかバレーやバスケの試合とかなら、それでもあまり問題なかったんだが、敵との戦闘で無神経に魔法ブッ放されると、さすがにマズい。今んところ死傷者は出てない(はずだ)が……。


 「仕方ない。俺もできるだけ、コイツが暴走しないよう牽制することにするよ」

 「うぅっ、そうしてくれると、リンドーさん助かるわぁ」

 それにしても、女装(てか女性化)した挙句、魔法少女として異世界からの侵略者に立ち向かいつつ、仲間からの盗撮に気を揉み、かつ相方の暴走を制御するって……一介の男子中学生には荷が重すぎるだろJK。

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