第3話「こちらゲスコン! ~夢と魔法の王国より~」第二話 まなみん様作(現代ドラマ)

第三回は、前回に引き続き、まなみん様作の職能ファンタジー、

「こちらゲスコン! ~夢と魔法の王国より~」(現代ドラマ)

https://kakuyomu.jp/works/1177354054884070145

こちらの第二話についての感想を書いていきたいと思います。


詳しい作品紹介は、前回の記事をお読みいただくとしまして、軽く思い出していきますと、「こちらゲスコン!」は、某有名テーマパーク@千葉県のキャストを務める主人公、平澤ありす(25)と、その教育係であり、物語中のバディでもあるオネエのイケメン、マキちゃん(29)(男性)が、夢と魔法の有名作品の世界へ異世界トリップして、そこで起きる難事件を職能にかけて解決していくという、一話完結方式のドラマです。


主人公ありすは、熱血で直情的な人情家。このところ自分の現実世界での仕事の先行きに少し悩んでしまったりもする、等身大の主人公。それに対してバディのマキちゃんは、ありすより大人。冷静沈着な判断ができる地に足の着いた人物。ですが、二人の共通点があり、それはマキちゃんも結局は人情家だということ。ありすより大人なぶん、経験値が高いですけど、正反対なようでいて、似た者同士のバディなんだなというのが、今回の第二話では丁寧に語られていたなと思いました。


今回の事件は、毒りんごを食べて死んでしまう、美しいお姫様と、その継母の物語。ご存知、白雪姫です。「鏡よ鏡……」という呪文を呼びかけるセリフで有名な、魔法の鏡も登場します。しかし、あの有名な物語とは少し違う。その「何かが違う」ところが、この「こちらゲスコン!」という作品のキモになっています。


読者はあの有名なアメリカ製アニメを知っている、という前提で描かれている物語です。読者様はそのアニメ映画をご存知ですか?

筆者はですね。もちろん知っています。有名な作品ですし、それに前回言いましたウチの旦那がですね、ディズ◯ーマニアでして、ディ◯ニー映画はほぼ全作品、二、三回は観ています。もー、ね、セリフも憶えてるっちゅうねん! 歌も歌えるっちゅうの! うちには娘が二人おりまして、某テーマパークでは毎回ペースでビビディバビディブティック行って、プリンセスコスプレですよ。割とガチのマニアなんです!


ですのでね。「これ……あの話と違うぞ?」という違和感を感じられる訳です。パロディ作品を鑑賞するのには必要な素地ですね。元ネタを知らない人には、どのように機能する物語なのかな、とも思いますが、敢えて言おう、「みんな知ってる物語」であると!


白雪姫と継母が不仲であることは一般常識ですよね?

しかし「ゲスコン」第二話でまず登場してくる継母の女王様は、白雪姫が大好き。ムスメ可愛いに脳を溶かされている親馬鹿です。


わかるー。ムスメのドレス姿まじ天使。世界一だなあ。宇宙一可愛いんじゃね? 写真二万枚くらい撮っちゃう。みたいなのが、どこか遠くで共感できる筆者なので(こちらの女王様よりは正気なつもり)、この物語が「白雪姫」であるという点を忘れれば、女王様の白雪カワイイっていう親馬鹿っぷりには共感しかないのです。


だけど、だ。このお母様は継母なのです。血の繋がらない親子。世間一般には、まさに白雪姫の物語が代表するように、「血の繋がらない親子には愛情がない」という古くさい偏見がまだ残る、もう消えたとは言い切れないですし、それで苦い思いをしている人もいるでしょう。


「ゲスコン」は展開も語り口も軽妙な物語ですが、そこがまず一つ、この物語の隠れた骨太さだと思います。


今回の第二話は、構成として、大きく二部に別れる前後編になっています。前編はサスペンス仕立て。推理小説のような殺人未遂事件が起き、その犯人は? 動機は? 一体なぜ? という緊迫の展開となりますが、その事件の重要な背景となるのが、白雪姫への女王の親馬鹿は本物か? 読者は、主人公たちは、その愛が本物だと信じるか、信じないのか? という作者さんからの問題提起です。


さああ、どうするよ? 読み手は多かれ少なかれ自分なりの判断をしなくてはなりません。推理モノですからね。


私は正直、よく分かりませんでした。というのは、私も書き手です。この作者さんは、どう書くつもりだろう? という目線で考えるせいで、答えが分からないのです。変な話ですが、物語はどうとでも書けます。同じキャラ、同じ展開で、美談にも、怪談にもできる。作者さんの気持ち次第なのです。


逆に言うと、作者さんがどんな物語を書きたいのか、何を言いたいのかによって、物語の先行きは決まるのだろうと思います。物語がどこに着地するかで、作者さんの考えや人柄、願いや理想が分かるということです。あるいは、作者さんが読者さん達に、どんな夢を見せたいのか、何を信じてほしいのかが描かれる。それが物語の魔法だと私は常々思って読みます。


この物語は、結論から言えば美談です。詳しい経過は実際に読んで感じ取っていただきたいですが、非常に美しく展開する物語でした。見る人によっては、リアリティがないほどの美しさかもしれません。血の繋がらない親子の、ひとつの理想の関係を描いた結末だったんです。


それは、どうだったのかな? リアリティがない?

だけど私は、いいと思いました。美しい理想を堂々と語る骨太さがあります。

私は自分も書き手なので思うのかもしれませんが、理想像を堂々と描くのは難しいのです。観客は、恐ろしい話や醜い展開のほうにリアリティを感じるかもしれないし、美談なんて綺麗事、と思うかもしれません。もっと言えば、悲劇的展開のほうが面白いかもしれない。本当らしく感じる。


それでもなお、愛や夢や理想や勇気を語って聞かせるのがファンタジーだという面があるかと思います。それが正道だという事ではなく、私の好みだという個人的な話ではありますが。美しいものを美しく描ける書き手さんは、勇気のある筆の持ち主だなあと思います。案外、簡単じゃないんです。書き慣れた人には特に。


「ゲスコン!」は、ハッピーエンディングと真正面からがっつり組み合って、「うりゃああ!」ってやり遂げる感じの、力強い作品です。読んだ人はきっと、元気が出てきたああ! っていう読後感がもらえると思います。


どうしてそういう作品にしたのかな? たまたま? という事もあるのですが、たまたまでなく意図的にそうなっている場合、作者はそうだよっていうヒントをどこかに書くものです。「ゲスコン!」第二話にもちゃんと、その作者さんからのメッセージが書かれていました。


この作品はどうしてハッピーエンドなのかは、この作品の最後のエピソードに書かれてあります。ラストシーンです。物語にとって、非常に重要な部分です。そこにこのエピソードを持ってきた作者さんは上手いし、心憎いね!


ネタバレになりますが、引用させていただきます。

でもこのラストシーンは先に読まないでほしいなあ。ぜひ作品のほうで初見を。

あーもう、行きますよ? 未読の人はブラウザバックですよ?





いいですか……?(いいよもう)


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「キャストの使命ミッションは」


 あの入社初日の研修の日に、マキちゃんにも言われた言葉。

 そしてたぶん、どこぞの『彼』も言っていた言葉。


「すべてのゲストにハピネスを――でしょ?」


 わたしの言葉にマキちゃんは苦笑して。

 それからぺちん、と軽くわたしの額を叩いた。

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「キャストの使命ミッションは」「すべてのゲストにハピネスを」です!

これが「ゲスコン!」の物語のテーマではないかなと私は感じました。

ホームラン宣言ならぬ、ハッピーエンド宣言。第二話にして、物語の大きな方向性が読者に示されたのではないでしょうか。


ディズニーの(あっ、言っていいの)古き良き名作は、勧善懲悪の物語です。正義の主人公と悪の敵役がいて、敵役、夢と魔法の国では「ヴィランズ」というんですが、彼らは滅ぼされます。そして主人公たちは大団円。いつまでもいつまでも幸せに暮す、というのが王道的なパターンでした。


その展開自体はいいものです。まさに古き良き物語。それを描ききることも、書き手の大事な使命です。


でもこの現代、それだけでいいのか?

絶対善と絶対悪という構図でいいのか?

あるいは、誰かの滅亡をもって大団円とするような物語だけで、いいのかな?


そういうことは、物語を書く人も、読む人も、一度は思うことなのではないでしょうか。


じゃあ、どうすれば良かったんだろう?

その疑問にひとつの答えをくれるのが、この物語であろうと思います。


第二話についての感想は、ここで筆を置きたいと思います。正直あと二、三頁書けるんですけど? もう長いな?


「ゲスコン!」第三話は今現在、連載中の状態です。次の物語が完結したら、ぜひ平澤ありす&オネエのマキちゃんと、また別の物語世界へトリップしたいなと思います。

今回の第二話で、すごく気になる「あの人」っぽいあの人が出てきましたね。あの人、誰!? わかるけど誰!? どうするのォー!!

それにマキちゃんが女王様に「子供は親離れしていくものよ」って言うシーンも意味深だった! マキちゃんの背景はまだ語られていませんが、一体あなたはどんな人? いろいろ気になります!


続きも楽しみです。面白い!


一言で言うと感想なんて皆そうなのに、長く言うと、めっちゃ長いですね。ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。


「こちらゲスコン! ~夢と魔法の王国より~」(現代ドラマ)

https://kakuyomu.jp/works/1177354054884070145

とは、ここで一旦、お別れです。素敵な物語を、ありがとうございました!

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椎堂かおるの、思ったことがダダ漏れ感想文 椎堂かおる @zero

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