TRUE EPILOGUE:

社内恋愛の終わりに

 今日は東京郊外の素敵なチャペルで、気心知れた同期と一緒に、初めての結婚式出席~!空はうららかな春晴れで、ウェルカムドリンクは大好物☆のシャンパン、おまけにシャレオッティなお庭に春風に乗って桜が舞ってきちゃった♪


 「2人とも、今日は来てくれてありがとう……?」

 「樹、あのさ」

 「うん」

 「すごくめでたいし嬉しいし樹超綺麗だしここめちゃオシャレだし文句なしに最高なお式なんだけどさ」

 「うん」

 「あまりにも展開早すぎやしませんかね…?」

 「まあ付き合って半年後は確かにスピード婚よね」

 「うん今日イチ驚いてるの多分私だからね………」

 「樹今年入ってからずっと忙しそうだったもんね…主任が疾風迅雷風林火山であらゆる手段を使って結婚にこぎつけたんでしょわかります」

 「いや……それが、そうでもなくて」

 「?どゆこと?」

 「えーと…私たちが聞いてるのは、12月だっけ?両方の家族と顔合わせしたら、お互いにすごく気に入られたって」

 「そーそー、ほんでいつ入籍や!はよ式場押さえろ!ってどやされて、主任のおとーさん?のお知り合いがこのチャペル紹介してくれたんでしょ?それを主任が…じゃないの?」

 「いや晶、ほんとは式場ってすごく早くに予約するもんらしいんだよ…一年前とか」

 「いちねん?!じゃなんで今日式挙げてんの?!4ヶ月しか経ってないやん」

 「紹介してもらったしとりあえず行ってみたら……今日がたまたまキャンセルで空いたって言われて、なんかその場で予約して」

 「4月の祝日の大安なのに?強運すぎるね。他は……結婚指輪はどうしたの、すごく可愛いけど」

 「これは…別件でアクセ見に行ったお店のマリッジリングセット、今オーダー発注すればギリ挙式に間に合いますって言われたから」

 「ちょっ……待って、えーとじゃあこのドレスは?超ウルトラスーパー似合ってるけど、まさか作った…ら間に合わないよね?」

 「休日に出掛けたらブライダルフェア?みたいなのやってて、ちょっと見るだけだったのに何故かドレス試着することになって…私全然選べなかったけど、万尋さんがこれが私にピッタリって言うから…」

 「で、今日の予約が空いてたと。樹の体型だとマーメイド一択、と思わせてからのソフトマーメイドってとこが流石主任。嫁をよくわかってる」

 「ねえ今ものすごくおめでたい話を聞いてるはずなんだけどさ、なんでだろうだんだん怖くなってきたんだけど私」

 「落ち着いて晶、ほらシャンパン飲んで。後は、そうね、新婚旅行の有給取ってなかった?」

 「うん…2人とも、『行かなくてもいいけど、行くなら国内の老舗旅館でゆっくり温泉』って、おんなじ希望で………憧れの、加賀家さんが…」

 「今日から空いてたから予約が取れたと」

 「樹…お願い……もうこれで最後にするから、………新居は………どこ?」

 「……主任ちに近い駅に、この前新築マンションが建って……ダメ元で抽選に滑り込み応募してみたら………角部屋が当たりました」

 「ちょっもうこれ全部ほんとに大丈夫なの?!いや悪いことは何ひとつ起きてないんだけど大丈夫なの?!?!」

 「トントン拍子の具体例として辞書に載れそうよね。つまり、2人は結婚する運命だったってことでしょ」

 「…ついでに言うと……今度食べ行こうって話してた手作りチーズのお店がたまたまこの近所にあって、引き出物対応してくれることになった」

 「……………………………………」

 「晶、あの…すごくおいしいよ…チーズ………」

 「うん………楽しみにしてるね………」

 「パーフェクトな式だった理由がよーくわかったわ、お招きありがとね。私たち以外の我が社の女性陣の目は死んでるけど」

 「それな…今日の白モーニングver.主任、バチクソかっこいいしわからんでもないけど、うんまあ仕方ない成仏してくれ」

 「わかる、かっこいいよね……正直言うと私なんで自分があんな素敵な人と結婚できたのかまだよくわかってないんだけども」

 「!!!ちょっ樹それ主任に聞こえたら!大変なことになるから!!今どこ新郎?!」

 「えーと……あそこ、主任と同じくらいでっかい男の人2人?が号泣しながら握手してるけど」

 「父と兄です……」

 「だよね……樹、お父さん似なのね」

 「かわいい一人娘が22で爆速で結婚したら普通はああなるよな……一切反対なかったん?」

 「うん、…兄さんは『林なら木が一本減るからいいじゃないか』って、裏切り者の私を赦してくれたから…」

 「なにそれ謎すぎるんだがどこからツッコめばいい???」

 「そっとしておきましょ、家族って得てして他人からは謎な部分があるものだから」


 「――森先輩、本日はおめでとうございます」

 「おい玉城、もう森じゃねーぞ」


 「あっ、では…林先輩、ですね。失礼しました」

 「2人とも、今日は来てくれてありがとう……?」

 「なんで疑問系なんだ森は…?」

 「いいのよ、幸せすぎて実感が湧かないってことにしといて」

 「んんんサイトウも森って言ってるじゃん!」

 「同期はいいんだよ。森、そろそろ色直ししなくていいのか?」

 「中で披露宴の準備が進んでいる様子でしたので、お声掛けに来たんですが」

 「え?…そうなの?」

 「ちょっと樹時間大丈夫なん?!私たち一緒に付いてこっか?」

 「う、うん……?」

 「これはマズいかも、引っ張っていきましょ晶」


 「―――樹さん、ここにいらしたんですね」


 「あ、主任、本日はおめでとうございます」

 「おめでとうございますー!今樹を控え室に連行しようかって話してたところで…」

 「ああ、ありがとうございます。このドレス、最高に似合っているのでずっと着ていて頂きたいのですが、次のカラードレスも…最高に似合うので」

 「ご、語彙力消失…主任が完全に限界ヲタクになっとる…」

 「皆さんに見て頂きたい反面、誰にも見せたくないのも本音です」

 「ま、万尋さんっ、もう、恥ずかしいので…!」

 「しかも同担拒否ね」

 「お前らちょっと黙ってろ……まあ、男心ってのはそういうもんですよね」

 「林主任、本日は誠におめでとうございます」

 「うん、2人とも、今日は来てくれてありがとう。やっとこれで樹さんを独り占めできることになりました」

 「完全に合法ですね、おめでとうございます」

 「ねえ斎藤のお祝いなんか物騒じゃない?!」

 「主任は飲みに行かれるといつも、森先輩を離したくない、同じ家に帰りたいと仰っていたので…」

 「ふむ…主任の引きが強すぎる疑惑、『一心不乱に願った結果、天の助けを得た説』ありそうね」

 「は、離さないって……!」

 「ああすみません樹さん、愛想を尽かされないようにこれから毎日努力しますので」

 「この新郎…ひょっとして死ぬまでこのテンションでいくんじゃなかろうか」

 「…というレベルの強い愛を感じるね。めでたしめでたし」


 「――さて、次はどちらの番なんでしょうか?」


 「へ?」

 「あ、私たちはパスです。斎藤家の経済事情の整理がつくの数年先だから、晶に譲るわ」

 「はえ???」

 「つっても玉城もまだ社会人3年目だからな、もっと金貯めねーとだろ」

 「な、なるほど……そうだ、晶たちの時もここで挙げたらどうかな?スタッフさんも優しいし、お義父さんづてで予約すると割引あるよ」

 「僕らも是非出席させて頂きたいです、玉城くん」

 「は…はい、頑張って貯蓄します!」

 「これもうプロポーズじゃない?晶」

 「ねえみんな何の話してるの?!?!樹ドレス着替えるんでしょ?!?!」

 「そ、そういえば……」

 「あ、……こっちにスタッフさん走ってきてますね、あそこです」

 「ん……マジだな、おい森急げ」

 「樹さん、こちらです!……………」




 おしまい。

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社内恋愛のススメ 瀧純 @takijyun

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