死体の肢体

海翔は自分の部屋へ入った。ベッドに横になると、静かに目をつぶった。

果たしていつまでここにいるのだろう、、親父は部屋にこもりっきりだというし、退屈だ。ひと眠りでもしようかと思った時だった。

部屋のドアがノックされた。誰だ?

「兄さん、入るよ。」  大地だった。

何の用だ、と思いつつ、暇だったから部屋へ招いた。

「兄さん、、樹里姉さんと十一智兄さんを見てない?」

「見てないな。二人ともいないのか?」

大地はうなずいた。やれやれ、今度は兄貴かよ。まあ、兄貴たちなら大丈夫だろう。遠くへ散歩にでも行ったのだろう。

その時だった。何やら足音が聞こえた。何やら走ってくるような足音が。

姉貴だった。肩で息をしている。ゼエゼエと咽込みながら姉貴は言った。

「お父様が!お父様が!」

なにやらただ事ではないらしい。姉貴は手招きをして、走っていった。俺たちはそれを追うようにしてついていく。

外へ出て少ししたところだった。兄貴が突っ立っているのが見える。その足元には何かの大きい塊のようなものが落ちていた。それが親父だと理解するまで、数十秒は要した。それもそのはずだ。上半身は裸で耳を切られており、上半身は傷だらけだ。しかも顔面の半分は削られたように抉られていた。指の何本かは切断されていた。周りに指は落ちていない。農具か何かでしないとここまではならないだろう。狂気を感じ、俺は倒れ込んだ。

なんなんだ。これは。

これは夢ではないはず。現に今、血なまぐさい血の匂いが俺の嗅覚を支配している。眩暈がした。悪寒もした。それ以上に恐怖があった。

大地がバタンと倒れた。どうやら気絶したのだろう。確かに、これを見て気絶するのは当たり前のことだと思う。

猟奇的な肢体を前に、兄貴は呆然としていた。姉貴は無表情、、否。


確かに俺は見た。姉貴が微笑したのを。

その瞬間、姉貴は確かに微笑んだ。

この状況で微笑む何てあり得ないことだ。

俺は確信したんだ。

姉貴は異常、と。

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