疑念

親父の死体を見つけた俺たちは、警察へ連絡しようと館へ戻った。

食堂へ行き、使用人に声をかける。

「親父が死んでいる!電話をくれ!」

俺たちは気が動転していた。使用人は落ち着いた声で言った。

「この島には電話がありません。圏外ですし、ご主人様が気に入られておりませんでしたので。」

ご主人様?親父はそう呼ばせてたのかよ。しかし、圏外とは困った。一刻も早くこの島を出ないと。

「ねえ。私たちが乗ってきたクルーザーは?」

樹里がすかさず聞く。

「クルーザーは1週間に一回来ます。次は5日後です。」

「この島から出る方法は?」

「そうですね。泳いで本土へ行くしかありません。でも、遠いですよ。」

平然と言う使用人。親父が死んだというのに落ち着いている。

「親父の遺体はどうする?」

兄貴が言う。

「そのままにしておくのが一番だわ。動かしたらダメでしょう。」

姉貴は推理小説をたくさん読む。こういう時もどうすればよいかをわかっているのだろう。

「そういえば、萌黄はどうしたんや?」

確かにそういわれてみればそうだ。ここには俺と兄貴と姉貴と大地と使用人が一人しかいない。部屋にいるのだろうか。

「確か朝、食堂にいなかったわ。」

萌黄もまた親父のように、、考えたくなかったが、その場にいる全員が考えた。

「とりあえず外を探してくるわ!」

姉貴が言った直後、使用人が言った。

「この島には野生の動物が多くいます。例えば狼。襲われればひとたまりもありません。どうかお気をつけて。」

困った。萌黄を見つけたいが外へ出るのは危ない。どうすればよいのだろう。

それと親父は絶対に他殺。犯人は誰なんだ?この島にいる誰かなのか?それともここにいない萌黄か使用人が犯人なのか?


この島は危ない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る