[“失われる世界”]


彼女書いた小説は、バッドエンドだった。




主人公は、“大切なものを失う”という特異体質の少年。


それも、なくすものは緩やかにだけれどどんどん、“より一層大事なもの”になっていく。



昨日より今日、今日より明日、

来る日も来る日も、必ず一つ、何かを失う体質。



そんな特異体質を周りに隠し、それでもそのせいで幸福だった少年の日常の歯車は狂い始める。


少しずつ失われていく日々での葛藤や悩み、大切なものを失って悲しむ少年の心を描いた作品。


決して読んでいて気持ちのいい話じゃない。


それでも言葉から感情が溢れ出てくるような、不思議なエネルギーに包まれた、





それが彼女の小説

「失われる世界」だった。








そして彼女が、その小説を自分のことだというのなら







「嘘、だろ…」








彼女の抱えているものはあまりに重たくて、冷たくて、一体彼女をどれほど傷つけているんだろう。





だって主人公の少年が一番最後に失うのは、


“彼にとって一番大切なもの”。






つまり、自分の命なんだから。

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彼女が失うもの 周 おと @amaoto-twins

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