20.汚名挽回(おめいばんかい)

汚名挽回「俺は……生まれてきてはいけない言葉だったんだ!」



【解説】

 「汚名挽回」は「間違えやすい日本語」の例としてよく挙げられる言葉。

 「汚名返上」と「名誉挽回」が混じってしまった結果、生まれた誤用とされています。

 「挽回」とは『失ったものを取り戻して、もとの状態にすること』という意味。ですから「汚名は失ったわけでも取り戻すものなわけでもないから誤り」というわけですね。


 ところが非常に困ったことに、「汚名挽回」は「挽回」という言葉の意味を深く考えると、必ずしも「間違いである」とは言えない構造になっています。


 「挽回」の類義語に「回復」という言葉があります。

 その「回復」には、「疲労回復」という言い回しがありますが、これは「疲労を取り戻す」という意味ではなく「疲労した状態から元の状態に戻す」という意味。

 ――あれ、そうすると「汚名挽回」も言葉の構造的には「汚名を着せられた状態から元の状態に戻す」という意味として受け取れるのでは……? となってきますよね。


 この辺りの話題は、「三省堂国語辞典」編集委員の飯間浩明氏がTwitterで言及されています。詳しくはそちらを参照ください。

https://twitter.com/IIMA_Hiroaki/status/461845102835429376


 とは言え、戦前の文学作品などを読んでいて「名誉挽回」に出会ったことはあっても、「汚名挽回」を見かけた覚えはありません(使用例をご存じの方いたらご一報を!)。

 現状では「意味は通じるが好ましい用法ではない」程度の理解で良いのではないでしょうか?


 「汚名挽回」君には申し訳ないですが、ここはお茶を濁して終わりとしたいと思います……。

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