うさんぽ

 春という季節は最高だ。

 なにせ、蚊がいないからな。


 今日は年寄りの兎を連れてのうさんぽ。

 実際は我が家の庭でしかないのだが、こいつにとっては十分な散歩となるだろう。


 朝の4時に飯を寄越せと暴れる以外はほぼ眠って過ごす、このジジイ。


 リードも何も付けていないが、私から離れて行くこともない。

 庭を縦横無尽に走り回ったかと思えば、傍に来て眠る。その繰り返し。


 冷蔵庫に入っていた500mlのビールを持って来てある。これを飲み終えるまでがジジイの散歩時間。

 プラムの木の下の腐葉土に塗れ遊んでいるジジイ。やめてくれ、また風呂に入れないといけなくなるだろうが!

 適当な場所に穴を掘り始める。そんなに掘ると土竜の穴に貫通してご対面だぞ。


 メダカ入りの火鉢で水分補給をしているのを横目に、私はビールであるアルコールの補給。


 春の麗らかな日差しの中、老兎と戯れるおっさん。

 なんと絵にならない構図だろうか。


 飲み終えたアルミ缶をベキベキと潰し、庭の隅へと放り投げる。ある程度集まったら資源ごみの日に出すのだ。


 帰るぞ。

 抱くと暴れて引っ掻かれるが、もう慣れたものだ。

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