赤 と 無
もしあの時、本当のことを伝えていたら
もしあの時、隠さずに過ごしていたら
もしあの時、笑わなかったら
たくさんの感情が湧いて出てくる
もしあの時、あの路を通らなかったら
もしあの時、声をかけなかったら
もしあの時、話し続けていたら
いや、きっと何も変わらない
あの時 呼ばれたのは あいつ じゃない
あの時 呼ばれたのは わたし だった
あの場を去ったのは あいつ じゃない
あの場を去ったのは わたし だった
立ち止まらせてくれるのを待つくせに、
立ち止まらないのは わたし なんだ
あいつ の横には、わたし でない人がいる
わたし の横にも、あいつ でない人がいる
去り際に見えたはずの あいつ の顔は
全く目に浮かばない
去った後の見えないはずの あいつ の顔は
なぜか瞼の裏に焼き付いている
きっとお互い知りすぎたんだ、
だから今、こうなっているんだ
特になにも変わらない帰り道、
特になにを見るでもなく、
ただ、ぼんやりと、
電車の窓から外を眺め帰宅する
赤く赤く燃えた葉も、
多くが地へと帰っていった
次の青を追うように
no title KOU @kou_25
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