第6話

優薫とお母さんがお風呂に言ったのを見計らって私は聞いた。

「貴方は、何故そんなに冷静でいられるのですか?」

と。私は、さっきから妙に冷静でいるような気がしたから。

「ん?別に冷静なんかじゃないよ。なんかこう、六花のお母さんは、とても元気がよくて、その母親を見ているから優薫ちゃんもとっても元気で、たぶん本当は、六花もそんな性格なのだと思う。確かに、今はもの凄く冷静だ。最初なんてなにが起こっているのかわかんなくて、もの凄い動揺した。でも、六花たちの家族を見ているともの凄く胸が温まるんだそ。それは、たぶん、俺の家が、勉強勉強と口うるさくて、将来は医者になるんだ。とか言われていて、あんまり家族とも接することのなかった俺には、ないものがあったような気がしたからかな」

「そうですか」

「そう言えばさ、六花は………いやなんでもない」

「……………」

そこからは、沈黙が続くと思った。でも意外にもその沈黙になって直ぐに、リビングの扉の前まできたのであろう優薫ちゃんと優薫ちゃんのお母さんが

「「お風呂入っていいよー」」

と声を揃えてお風呂あがったということを知らせてくれた。

「はい。わかりました」

「早く入りなさいよ」

「はい。わかりました」

とここまで言って気づいたことが、ある。この人たちまさか俺の家に泊まるんじゃないかと。

そんな、考えに至った時には、もう時既に遅し。階段を登る音が聞こえた。

「はあ、あの人は、もの凄く扱いにくい人だな」

「そうですね」

この人から見たら、お母さんはそんなふうに見えるのだろうか。私は、知っているのだ。いつも優薫を寝かせたあとに泣いていることを。外では、どこかお調子者を演じていているだけで、お母さんは、本当は、もの凄く静かで、泣き虫なんだ。

「私から、入っていいですか?」

「あ、うんいいよ」

 


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