前提条件ってなんだっけ?
第19話
俺は魔法少女になれました。
変身すると幼女化するという案外ありきたりなおまけつきだが、まぁ、いいや。
「で?」
「でって?」
「ワッフル、魔法少女はあと何人いるんだ?」
「いや、知らないよ。僕っちに聞かないでよ仁君」
「俺らのこと呼び捨てでい言ったけど、お前結局君付けだな」
「そうだね、呼び捨て慣れなくて」
「あのマスク女誰だ?」
「知らないよ、あの夜あの場にいた誰かだろうさ?」
「あんな時間に学校にいたのは俺たちぐらいだ。だが、俺たちの知り合いが俺たちを襲うか?」
「僕っちに聞かれても...光の欠片次第だよ」
「?」
「カミアの光が分裂したとき、力に偏りがあったんだ。凪ちゃんには『力』のホワイトダイヤモンド、君には『愛』のピンクダイヤモンド。もしかしたら、あの魔法少女に宿る光の欠片が、本人の思考に影響するものなんじゃない?」
「そうか、そんなもんか」
「でもおかしいよ」
「何が?」
「ダークロードは組織だ。ナイトメアの下に、幹部がいるはずなんだけど、上級幹部どころか、下級幹部も動いてこないなんて」
「おい、気になるのは分かるが、そういうフラグ立てる発言すると」
そのとき、大きな音と地響きがした。嫌な予感が。
「お兄ちゃん、外に変な人が!」
「さて、テレビでも見るか」
「仁くん、現実を見て!」
「うるせぇ!お前がフラグ立てるからだろ!」
俺がしぶしぶ外に出ると、アスファルトに大きな亀裂が入っていた。その亀裂の中心には、獣の毛皮を羽織ったごつい男。
凪は既に外にいて、俺は凪の隣に立つ。
ごつい男が、低い声で喋りだした。
「俺はダークロードの幹部、『暴虐』のボロウスだ!倒しに来たぜ!」
「なぁ、あいつ知ってるか?」
「下級幹部の一人。でも暴れるのが好きなだけで、実力は闇の怪物に毛が生えたぐらいだよ」
「なんだザコなのね」
「おいそこ!ごちゃごちゃうるせぇよ、誰がザコだ!いいから俺と戦え!」
「うるせぇのはそっちだ、朝っぱらから騒ぐな。しかもそれ、地面そんなにしたから公共物破壊で捕まるぞ?」
「んなもん関係ねぇ!」
「駄目ねあいつ、お兄ちゃん以上に馬鹿だ」
「おい、俺を馬鹿の基準にするな」
「二人とも、あとは頼んだよ!」
「はいはい了解、妖精は隠れてろ。いくぞ、凪!」
「はぁ、またお兄ちゃんに付き合うのか」
「「『マジックアップ・トランスフォーム』‼」」
俺と凪を光が包み込み、姿を変えていく。今思えば、幼女化ってかなりしんどい。
「闇から救う桃色の心、JIN!」
「闇を切り裂く白の刃、NAGI!」
「はははは、来い!闇の使徒!」
ボロウスがそう叫ぶと、やつの足下から黒い人型の何かが出てくる。
「こいつらは対一般人用に作られた闇の使徒だ。お前ら相手には力不足だが、この数をどうしのぐ?」
現れた闇の使徒の数はおよそ30、確かに多い。だが。
「NAGIウェポン、ハルバート!」
NAGIは髪でつくったゲートから巨大な斧を取りだし、地面に叩きつける。直撃したやつ、衝撃波をくらったやつ合わせ、一気に全てを消滅させた。
「おじさん、私を起こらせない方がいいよ」
斧を地面に突き立て笑顔でそう言う妹を、俺は本気で怖いと思った。
なんとか魔法少女 秋野シモン @akinoshimon
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