ふたりは魔法少女!

第11話

 神谷家にて、俺と凪は向かい合う形で、ソファに座っている。


「魔法少女の権利を譲ってください」

「無理です」

「なんでだよ!だってさ、お前もう魔法少女好き引退したんだろ?日曜朝はニュースを見るんだろ?だったら俺に譲れよ!こっちはバリバリの現役で魔法少女ファンなんだよ!」

「でも無理だって」

「なんで!俺が男だからか?なら、今すぐ飛行機乗って、女になって帰ってきてやるよ!」

「だから、そういうことじゃなくて、取れないんだよ、このブレスレット」

「は?」

「いや、だから取れないの。厳密に言うと、腕からはずすと光になって消えちゃうの」

「え?」

「腕からはずすと消えて、私が胸に手を当てるとまた出てくる。だから、お兄ちゃんにブレスレットを渡せない、よって、お兄ちゃんは魔法少女になれない」

「...」

「お兄ちゃん?」

「...なんじゃそりゃあああああ!」

「お兄ちゃん⁉」


凪いわく、俺はそのあと、大声で喚きながら、家の中を走って跳んで転がり回ったらしい。

自分じゃ覚えてないけど。


落ち着いた俺は、ソファに座り直し、大きく深呼吸をした。

「あぁ、分かってるよ、魔法少女になれるのは選ばれた者だけだって。でも、妹に先を越されて、ちょっと冷静になれなかった。悪いな」

「いいよ、私自身、ちょっと驚いてるし」

「原因はやっぱり、あの光か」

「うん、多分。でも、もしそうなら、お兄ちゃんも光を浴びたんだから」

「止めろよ、魔法少女の前提条件は『少女』、まだ男の娘おとこ こなら可能性があるが、俺は違う。ようは想いの問題だ。魔法少女に対する俺の想いは、所詮オタクのそれと同じだったってことさ」

「そんなこと...」

「どうした?」

「いや、あの部屋とか見ると、案外そうかな~って」

「おい」


「お兄ちゃん、あの光が原因なら、喜城さんは?」

「そうか、喜城兄妹もあの場にいたんだから、あの変態メリケン女も」

「すぐに喜城さんの家に行こう!お兄ちゃん、場所知ってるよね」

「でも今、夜中だぞ?」

「だから?」

「もうすぐリメイク番の、カードをキャプトする魔法少女アニメが」

「行くよ、オタク」

凪の顔が、笑顔だが笑っていない。


「はい」

なんでこいつが魔法少女なんだよ。

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