第10話

 妹が魔法少女になるって、こんなに嬉しいんですね。


「闇を切り裂く白の刃、NAGI!」


妹は白と青が基調のセーラー服のような格好になっていて、スカートが長いため、昔のスケバンみたいだ。そして何より変化したのは髪だ。凪はもともと茶髪のポニーテールだったが、今は全体的に伸びて、二メートルくらいになったポニーテール部分は、先が白く、体の周りで渦を巻いている。

「グググ」

怪物は警戒したようだが、すぐに攻撃に移る。

怪物の拳を凪、いや、NAGIはハイジャンプで避けた。そのまま華麗に着地し、怪物の腕に回し蹴り。

怪物の腕は、蹴りが当たった先から霧になって消えた。


「結構もろいけど、本体を叩かないと駄目みたい」

「NAGI、お前なんか魔法使えるか?敵を倒すのは、基本的に魔法を駆使した必殺技だ」

「やってみる」


NAGIが気を集中すると、ポニテが輪の形になり、そこにゲートができる。

NAGIはゲートに手を突っ込み、何かを取り出す。

剣だ。

「わ、なんか出てきた!」

「それ多分、お前の武器だ。名乗りで『闇を切り裂く白の刃』って言ってるんだから分かれよ」

「あれは、口が勝手に」

「いいから!」

「う~ん」


不満そうにしながらNAGIは剣を振りかぶり、怪物のもう一方の腕を切り落とす。

その衝撃で怪物は転倒、腕がないから起きるのに手間取っている。


「よし、とどめだ!」

「でもお兄ちゃん、このまま切ったら、中の人は?」

「あ、そうか」


「...え、そんな...出来るの?」


「お前、何言ってるの?」


「...よし」

NAGIは剣を構え、叫ぶ


「『NAGI、ウェポン・チェンジ、チェーンソード』!」


剣が鎖状に伸び、怪物に巻きつく。NAGIは剣を握ったまま、怪物に背を向ける。


「『必殺!NAGI・ストリーム』‼」


NAGIは剣を引き、風と共に怪物を外側から切り裂く。

怪物は完全に消滅し、俺達は元の世界に戻ってくる。

怪物がいた場所には、モブ男(仮)が倒れていた。

「お兄ちゃん、やったよ!」


「あ、あぁ、でもお前、チェーンソードなんてよく知ってたな。架空武器だぞ?」

「え、あぁこれ、チェーンソードっていうんだ」

髪のゲートに剣を収納しながら言

う。

「いやお前、自分で言ってたぞ」

「いや~名乗りもそうだけど、なんか、自然に言葉が出てくるんだよね。というより、伝わってくる?このブレスレットから」


「なんだろうな、そのブレスレット、お前の体から出てきたぞ?」

「うん。この宝石は、ダイヤモンドかな?」


「は、はぁぁ!本当に魔法少女だ!」


声に振り向くと、そこには小太りでくろぶち眼鏡の、いかにもオタクな男子生徒がカメラを持って立っていた。


「ヤバ!NAGI、早くどっかに隠れて変身解いてこい!」

「う、うん!」


NAGIは跳躍で物陰に消える。

オタ男(仮)は後を追おうとするが、俺が足を引っ掻けて止める。


「おいお前、見たとこ二年生だが、あの魔法少女を追うのは止めろ」

「なんでさ、君は二年の神谷君だね、同じく魔法少女を愛する君なら、僕の気持ちが分かるだろ!やっと、本物に会えたんだ。僕は彼女と友達になりたい。できればお付き合いしたい!」

「それを止めろって言ってんだ。魔法少女は正体を秘密にする。そんな当たり前を守る気のないやつが、付き合いたいとか言うな」

「君は、彼女の正体を知っているのか?」

「知っていても教えるか」

「お兄ちゃん、どうしたの?」


あたかもたった今来たかのように、凪が出てきた。

「悪いな、妹が来たんでさっさと帰らせてもらう」

「待て、まだ話は」

「そうだ、あそこでのびてるモブ男(笑)、保健室に運んでおいてくれ」

俺達はその場を去り、少々速歩きで、家に帰った。

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