第9話

「グオオオオオオオ!」

突如として現れた黒い怪物。

「なんだよこれ」


気づけば俺達は、不思議な空間の中にいた。元いた場所と同じに見えるが、物には触れられない。周りの人間は俺達が見えていないようだ。

「お兄ちゃん、下がってて」

「お前、何する気だよ!」

「分からない。でも、お兄ちゃんは私が守るから!」

「馬鹿言え!妹に守られる兄がいるか」

「危ない!」


怪物がその拳をこちらに撃ってきた。

俺達はそれぞれ別方向に転がって避けたが、俺達がいた場所は、コンクリートだというのに大きな穴が開いている。

この怪物、見た目は大きな人のようだが、パワーは文字通り化物級だ。


「お兄ちゃん、逃げて!」

「お前も逃げろ!」

「嫌だ!いつもお兄ちゃんに助けられてきた。だから今度は、私がお兄ちゃんを助ける‼」


そのとき、凪の胸が光ったかと思うと、胸の中から、白く輝く宝石が現れた。さらに、胸から次々と光が飛び出し、宝石を囲んで、何かを形作っていく。そしてそのまま凪の右手首に移動し、ブレスレットになった。

「何、これ?」

俺はピンと来た。ありえないことだが、他に考えられない。

俺の顔がニヤついていたのだろう、凪はこちらを見ると、俺の考えを察したようだった。

「そんな、ありえないって」

「でも他に考えられない。俺が今まで、何に夢中になっていたか知ってるだろ」


再び怪物が、その拳を撃ってきた。今度は俺一人を狙って。俺はまた転がって避けた。

「凪、俺を助けるんだろ?なら俺にとって、一番の方法で頼む!」

「...わかった!」

すると、ブレスレットの宝石が、光を放った。

「...そうか、そう言えばいいんだね」

怪物が今度は凪を狙うが、光に弾かれる。凪はブレスレットに手を添えた。


「『マジックアップ・トランスフォーム』‼」


ブレスレットを高く掲げると、全身が白い光に包まれる。光が解けた時そこにいたのは、魔法少女に変身した、神谷凪だ。


「闇を切り裂く白のやいばNAGIナギ!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る