第二話 信長の夢と違和感

 


 時は戦国の世。 日本が最も戦に明け暮れ世が混沌とした時代。


 東には武田信玄と上杉謙信、そして信長と相見える事になる今川義元。

 西には毛利元就など有力な戦国大名が天下統一を狙っていた。


 そして、後に第六天魔王と呼ばれる大うつけ、織田信長は尾張を平定し、父である信秀の後を継ぎ、天下統一を虎視眈眈と狙っていた。


 天下統一は信長の夢であり、成し遂げるべき目標であった。

 しかし信長はまだ尾張を平定したばかりである。

 27歳の信長には天下統一への道はまだまだ遠く、夢のまた夢である。


 だが、信長は確信していた。


(俺はいずれ天下人になる。)


(そして天下統一は通過点の一つでしかない。)


「信長様、着眼大局、着手小局という言葉もございます。」


「天下統一を成すには、一つ一つの積み重ねが大切なのです。」


「信長様には使命がございます。」


 信長はを知っている。


 だが、名前を口に出すことができない。なぜなのか? この男の言葉を覚えている。

 信長の頭の中に霧がかかって、この男の顔を認識できない。が、信長は答える。


「使命?」


「そうです。信長様にはを知るという使命がございます。」


「真相? それはどういう意味だ?」


「いずれ分かります。信長様とには知る権利がございます。」


「...貴方? 此処には我しかおらぬ。」


「そうとは限りません。」


「信長様には真相が直ぐそこまで来ています。」


「そして貴方には真相...いやと言うべきなのかも知れませんね。」


「いったいなにを言っておるのだ?」


「全ての事実は桶狭間での戦に在るのです。」


「なぜ貴方が自分を拙者と自称するのか?」


「さっきから其方はなにを言っておるのだ !!」


「これは失礼。私は信長様に話しているのではありません。」



「「貴方に話しているのです。」」



「信長であり信長でない。 貴方が今から追体験するのは...です。」



 ーーーーーー



「ぬわっ!」


「...夢か?」


 信長は清洲城に戻り、雨が瓦を打つ音に耳を傾けていた所、急な眠気に襲われて夢を見ていた。

 目が醒めると信長の目には若き濃姫の顔があった。

 濃姫が信長の頭を膝枕に乗せていた。


「大丈夫ですか信長様?」


「我は今なにを見ていたのか...。」


「おかしな信長様。」


 フフっと笑い濃姫は信長の頭を撫でる。

 信長は若き濃姫に懐かしさを感じながらも、強烈な違和感を覚えていた。


「夢か...。」


「夢を見られたのですね。」


「あぁ...夢だ。しかし、夢ではないのかもしれぬ。」


「夢なのに、夢ではない...どういう意味ですか?」


「我にもわからぬ...が、これは予兆であるのかもしれぬ。」


 信長であり、信長でない...。我は一体何者か? しかし、我がであるからこそ我はあの男を知っている。


「濃姫よ、すまないが我は今から成すべきことがある。」


「暫くは織田家の命運をよろしく頼む。」


「信長様? 急にどうしたのです?」


「すまぬ濃姫よ...説明する暇はないのだ。」



「おい!〇〇を天守閣に呼べ!」

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