第三話 信長が信じない天命

 


 信長は清洲城の天守閣で天から潸潸と降り注ぐ雨の雫を見つめて、自身のこれまでを振り返っていた。


(これまでの選択は正しかったのか?)



 ―――――――



 信長は尾張を平定した後に、天下統一への足がかりとして東海道の要である大高城と鳴海城を狙っていた。


 この二つの城は元々信長の父である織田信秀の支配下にあったのだが、信秀の死後、鳴海城の城主を務めていた山口教継の裏切りによって、鳴海城、大高城は今川義元の支配下に置かれていた。


 故に信長が狙うこの二つの城は尾張領でありながら今川義元のものであった。


(まずはこの二つの城を今川義元の手から奪わなければ...。)


 信長は城を攻め落とすために、今川領との国境周辺に五つもの砦を作り、その機会を窺っていた。


 そんな最中で信長に驚きの知らせが届いたのである。


「信長様! 申し上げます!」


 それは今川義元が尾張をまたぎ京に登るというものだった。


「今川義元がこの尾張をまたぎ京に登ると...。」


(許せぬ...今川の狸め...思い知らせてやる。)


 信長は腹の底から湧き上がる怒りを胸に今川義元を討つ事を決める。


 この選択が信長を天下統一へ加速させてゆく。

 そして信長の運命を大きく変えていくことになる。

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