第24話 魔性の剣士復活

リュードがレイミの元に帰ってきてから数週間。

リュードは片時もレイミから離れず、彼女の世話をした。


それは一人旅をしていた時とは比べ物にならないほど神経を使い、修行していた時とはまた別の疲労がリュードの身体に蓄積されていく。


「ありがとねリュード。色々身の回りのことやってもらって」


「へーきへーき、これからパパになるんだぜ?これからもっともっと頑張んないとな。ただ修行してるだけの親父なんてダメダメだよ」


疲れていないわけがない。しかし、リュードはそんな素振りなど全く見せない。

大変なのはリュードだけではないのだから・・・。

わざわざそんなことを表に出さない。それがリュードなのだ。


そして・・・


「よし、じゃあ行こうか?」


「うん」


リュードに支えてもらい、レイミは家を出る。


向かった先は街の中でも有名な産婦人科医院だ。そう、ついに産まれるのだ。二人の子供が。


病院の中へ入るとリュード達と同じような夫婦がたくさんいて、やはりみんな幸せそうな表情の裏には苦労が見て取れる。

しかし、そういう家族を見ているだけでも二人は勇気づけられる。

『自分たちも頑張らなければ』・・と


レイミは受付を済ませ、二人で奥の診察室へと入る。


経過は順調で、明日には無事出産出来るだろうということなので、レイミは今夜から入院することになり、リュードは一人で家に帰ることに。


「じゃあ、明日また来るから」


「うん、心配しないで今日はゆっくり休んでね。私、頑張って元気な赤ちゃん産むから」


二人はお互い手を振り、リュードは病院を後にする。


「ふぅー・・・」


病院を出た後、リュードは今までの疲労がドッと肩にきて、大きなため息をついた。


「・・・(明日からお父さんになるんだな・・・これからどんな未来が待ってるかっていうワクワクと、今更ながら俺みたいな奴が良い父親になれるのかっていう・・・)」


リュードは今までの人生を振り返りながら、自分が父親としての度量が本当にあるのか疑問に感じてしまう。


これがリュードの悪い癖でもあるのだ。一人で考えれば考えるほど悪い方向へと気持ちが走ってしまうのだ。

それが災いし、かつてリュードはドス黒い禍々しい邪気に心を染められてしまったこともあるのだ。


今までの人生を振り返る中、偶然その時のことを思い出すリュード。


「・・・(チッまた悪いクセが出た。父親になるのに、なに無責任なこと考えてんだ俺は)」


自宅へと帰ってきたリュード。レイミがいないと家の中はとても静かでシーンとしている。


ソファーに腰掛け足を組み、ふとテレビをつけるリュード。

すると、偶然武術大会のことがニュースでやっていた。


ニュースの内容は・・?


『昨年、引退を発表し現役を退いた「魔性の剣技と謳われる〇〇選手」が、突如現役復帰を発表致しました』


「何ぃ!?」


リュードは思わず組んでいた足を下ろして目を丸め、前のめりになってニュースに釘付けになってしまう。


ニュースではその選手の記者会見が映し出されていた。


『本日、現役に復帰されるというお話ですが、いったいなぜ復帰しようと思われたのでしょうか?』


『理由はありますが、ベラベラしゃべるつもりはないんで、実際に試合を見てください』


その剣士は言葉少なげに内に秘めた思いと闘志をにじませている。


そんな剣士をテレビ越しで見ていたリュード。


「あいつ・・・もう試合には2度と出ないって言ってたけど、復活するのか。・・・・・フッ面白くなって来たぜ!」


パシィ!


リュードは掌に拳を打ち付け燃えるような目つきをしていた。


どうやらその剣士とリュードには何らかの関係があるようだ。


こうしちゃいられない。リュードは壁に立てかけてある剣を手に取り、街の闘技場へと走って行った・・・。


特訓だ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る