第25話 新たな生命(いのち)

レイミにゆっくり休むように言われたが、結局昨日もクタクタになるまで闘技場で特訓していたリュード。


惨めなようだがリュードには休んでいる時間などないのだ、刻一刻と武術大会の日が近づいてきているからだ・・・。


レイミと病院で別れてから一夜過ぎた今日。ついに二人の子供が産まれることとなり、緊張の面持ちで病院へと向かうリュード。


病院の中に入り、受付を済ませてレイミのいる部屋へと向かうリュード。

しかし、その病室にレイミの姿は無く、すでに分娩室へと入ったという。


リュードは分娩室の前へ移動し、目の前に置かれているベンチに腰掛けた。


しかし、やはり落ち着かないのか立っては座りを繰り返す。


無事に産まれたかな・・?まだ産まれない・・?

もうすぐ産まれる・・?産まれた・・?

いや、まだ・・?


時間だけが刻一刻と過ぎていく・・・。


頑張れレイミ!


リュードは拳を握りしめ、無事にレイミが元気な子供を産んでくれることを祈る。


「・・・(そういえばここまで来るまで、いろんなことがあったよな)」


リュードはレイミの無事出産を祈願すると同時に、自然と今までの二人の道のりを思い出していた。


武芸の型も分からず、ただやみくもに闘技場で修行してはガラの悪い連中に絡まれ、喧嘩して怪我をして帰ってきて近所のレイミに毎日のように回復の魔法で治療してもらってた頃・・


リュードが初めて武術大会に出ることが決まり、レイミもリュードに付き添って二人で旅をしていた頃・・


リュードが自分の強さを過信し、油断した隙に毒蛇の毒牙に襲われるリュードをかばい、レイミは死の淵に追いやられたこともあった・・


仲間が増え、環境が変わり、リュードの気持ちがふわふわと浮いてしまい、浮気をしてレイミに愛想を尽かされてしまい、彼女が自分の髪の毛を断髪してしまったこともあった・・


二人の関係がギクシャクになり、月夜の晩に大喧嘩をしてリュードが旅を辞めると言ってメンバーから抜けた時・・


すべてを投げ出したリュードを再び受け入れようとレイミに説得され、拒否し、

二人が全力で武器を手に闘った時もあった・・


自分がどれだけ自暴自棄になり、使命を投げ出し、レイミに嫌われるべく、どれだけ酷いことを言って罵倒しようとも、決して見放さず、自分を信じてついてきてくれたレイミ・・


「・・・(レイミ。お前やっぱりスゲェよ。本当に大した奴だよ。大丈夫だ、あいつならきっと・・・きっと俺たちの元気な子供を産んでくれるはずだ)」


リュードは先ほどの不安が一変、彼女を信頼し、大丈夫だろうと小さく頷いていた。


・・・と、その時


オギャー・・オギャー・・


「・・!」


分娩室の奥から赤ん坊の泣く声が聞こえてきた。


ついに産まれたのだ!


分娩室の扉が開き、中から先生が出てきた。

先生は無事出産出来たことをリュードに伝え、リュードは安堵の笑みでお辞儀をし、分娩室の中に入った。


「レイミ」


「・・・リュード」


出産を終えたレイミの顔は、汗びっしょりになっており、

男には決して分からない子供を産むことの大変さをレイミの顔が物語っていた・・。


隣のベビーベッドにはタオルに包まれた赤ん坊の姿が・・


リュードは腰を下ろし赤ん坊の顔を見てニッコリと微笑んだ。

リュードとレイミの子供だ。

性別は男の子。

名前は・・・?


「レイミ、もう決めてるんだよな?」


リュードはレイミに微笑ましい笑みで問いかけ、


「ええ」


レイミもゆっくりと頷いていた。

どうやら子供の名前はすでに二人で相談して決めているらしい。


「それじゃあ、『せーの』で呼んであげようよレイミ」


「うん、私達の大切な赤ちゃん。この子の名前は・・・せーの!」


リュードのレイミは二人で息を合わせ、子供の名前を口にする。


二人の子供の名前は・・


『アルバート・クロスラッシュ』

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