第6話 魔物を倒そう!

 薄暗い洞窟の中、明かりはネルが体の光を強めに出すことで数メートル先はクリアにしてくれてる。


 カリンさんも潜った洞窟とはいえ、僕は初めてだし、まだ戦闘すらしたことがない。


 なんとなくどう戦えばいいかはファンタジー好きだし、判ってるつもりだ。


「地図のペーパーは手に入れてるけど、見る?」

 と、カリンさん。


(うーん…)

「道が解りすぎて先に進んでいきなり魔物が強かったらキツいよね…」

 ここはRPGゲームの鉄則かな。


「わかった。必要なとき言ってね」

「うん、ありがと」

 カリンさんはニコッと微笑み、また前を向いて歩き出した。

(絶界だと凄い笑顔だよな…)


 ガサガサガサ…!

 虫が地面を走る音?!


「魔物です!ケイトさん!」

 先頭のネルが叫ぶ!


 僕は剣を抜き、カリンさんは魔法の書を左手に、右手にメイス(叩ける杖)をかざす!


 現れたのは2匹の昆虫!

 だが、僕が知ってる昆虫より遥かに大きい!


「ビートルです!」

(そのまんまやね)


 よし、強くはなさそうだ!やってやる!!

「やぁぁぁぁぁ!」

 僕は勢いを付けて斬りつけた!


 ガキ!

 鈍い音、堅い甲羅には鋭い刃も弾かれてしまった!

(思ったように振るえない…)

 相手が硬いというより、僕の剣の扱いが悪いみたいだ。


 先手を取られたビートルが反撃してきた!

 鋭い爪とガチガチ音を立てて迫る口元のハサミ!


 ボガン!

 芯を食ったいい音を出したのは、カリンさんのメイス攻撃!

 僕に襲いかかってきたビートルの頭を潰し、まずは1匹!

(護られてんの僕じゃん…)


「ケイトさん!剣で甲羅は弾かれます!関節を狙ってください!」

 ネルの的確なアドバイス!

(なるほど、柔らかい場所を!)


 こちらを伺い低く構えるビートルの右側に摺り足(柔道独特の動き)で回り込み、関節を狙い済まして剣を突き出した!

 ズドッ!

 柔らかい箇所に刺さった生々しい感触!

 気色悪い緑の体液が飛び散り、僕は初めての戦闘に勝利した!


「やりましたね♪ケイトさん」

 ネルが讃える。

「ケイト君、今の横移動の動き…なに?」

 唖然としているカリンさん。


「摺り足だよ、柔道とかの足運び」

 ※摺り足とは、足を肩幅程度に開けて腰を落とし、踵を少しだけ浮かして、足を上げないで地面をこするように動く、柔道などの独特の動きで、特に横移動などでは通常より早く無駄なく動くことができる。


「すごい!」

(まるで僕を格闘家のスターのような眼差しで見ている)

「いや…経験者なら誰でもね…」

(でも、この摺り足は使える)


 魔物は地上で倒されると灰のように朽ち果てる。

 その時にペーパーやコインなどが手に入るらしい。


 今回の収穫は…銅1枚、まぁこんなもんか。


「あ!忘れる所だった!」

 唐突にカリンさんが声をあげた。


 ?


 おもむろに片方だけの籠手を僕に差し出すカリンさん。

「盾まで買えなかったけど、これで…」


 僕は右手に片手剣だけど、左手は空いていた。剣士ならば盾を持ったりするんだけど、予算の都合上諦めたのだ。それを知ってて…。


 甲は鉄製、関節などは硬い繊維で出来ていて、指まで動きやすく馴染んだ。


「ありがと!」

 いざとなったら投げ技使おうと思っていたから指が動くのは助かる!


 僕らはさらに奥へ進み、僕が不慣れなことで多少の苦戦をしながらも順調に歩を進めていった。

 その間の拾得物といえば銅コインや、安いが売れる低ランクペーパーだった。


 "ギューギュー"

 聞き覚えのない変な声、音なのかも判らない。


「ネル、この音は?」

「解りません、警戒してください!」

「…私も知らない…」

 ネルもカリンさんも知らない音…


『ギュー

 ギュー』


 段々と近づく!

 これは魔物!


 ネルの明かりが届く距離に来て姿が見えたとき、僕とカリンさんは絶句した!


 現れたのは巨大なネズミ!

 小さくても見ると嫌な感じがするネズミが、まさかの自分達よりも大きいなんて…


「ひっ…!」

 怯えた表情のカリンさん。

 まぁ、女性でネズミが平気な人は少ないよね…


「アークラット!ダンジョンボスのようです!」


 ボス?!

 どうやら地図を見なかったら最深部まで来ちゃってたみたいだ…


「やるしかないよね…」



 初探検でボス戦!

 僕らはこの困難を突破できるのか?!

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