第7話 旅に出よう!

『ギュー!』

 容赦なくアークラットは僕らに襲いかかってきた!


 速い!


 避けることもままならず、鋭い爪をなんとか剣で防ぎながら受け止めた。


「重っ…!」


「"ボルト"!」

 ドゴ!

 アークラットの横腹にカリンさんの魔法がヒット!


『ビギャ!』

 仰け反り、後ずさるアークラット!


 今度はこっちからだ!

「やぁぁぁ!」

 剣を両手で握り、しっかりと力を込めて振りかぶる!


 ドシュ!

 頭から左目にかけて切り裂いた!


『ギィ!!』

 苦痛の叫びをあげるアークラット。


(いける!)

 そう過信した瞬間!


 ドス!という鈍い音が体から響いた!

 身を翻したアークラットの爪が僕の腹を貫いていた!


「ケイト君!!」

「ケイトさん!!」

 痛みで頭がズキズキする!二人の声が遠い…


「がはっ!」

 傷は内蔵に達し、胃に溜まった血が一気に吐き出される!!

「"ケア"!」

 咄嗟に回復をくれるカリンさん。


 なおも攻撃の手を緩めないアークラット!

 剣は…さっきの一撃でどこかに落としてしまったようだ…

 傷穴はすぐに塞がったものの、血が出たことで意識が朦朧とする…

(なんだよ…これ……本の中なのに痛いじゃん…)

 膝が落ちかけて、体のバランスが崩れた…


『ダメー!ケイト!!!』

(カリンさん…!)

 アークラットが左前足で追撃してくるほんの一瞬、それはスローモーションとなり、僕は目を見開いていた!

『ぬぉあぁぁぁぁ!!』

 前足を振り上げ、上体を起こした所を見逃さなかった!

 僕はアークラットの懐に潜り込み、喉元の皮と振り上げた前足の毛を掴み、体を沈ませながら捻り、回転を利用してアークラットを投げ飛ばした!

 現役時代の得意技"背負い投げ"だ!!


 ゴッ!

 と、地面に叩きつける音!

 頭から投げ落とし、首の骨を折ったのか、そのままアークラットは動かなくなった。


「やったぁー!やりましたよ!ケイトさん!」

 ネルが歓喜に満ちた声をあげた!


 ふらふらになり、膝を落とした僕を両手でしっかりとカリンさんが抱き抱えてくれた。


「ケイト君…」

 うっすら涙を浮かべ安堵の表情で僕を包み込む。


「はは…、柔道…役にたったねぇ…」

「うん…かっこよかったよ…」


 アークラットが朽ちた後からは今までとは違う神秘的なウィッチペーパーが出てきた。

「ケイトさん、カリンさん!"失われたページ"です♪」

 ネルが興奮気味にページを僕らの元へ持ってくる。

「これが…」

 激闘の末の獲得は感慨深いものとなった。


 ……

 ダンジョンを出て、僕らはその足で町長へ報告に向かった。

 ……

 町長は喜びを隠しきれない様子で

「よくやってくれた!礼を言うよ!」


 失われたページを差し出すと、首を横に振る町長、

「それは君達の物だ。使い方は本屋の婆さんに聞きなさい」

 そこまでを聞いたとき、僕らは暗転し、現実に戻された!


 ……

「思ったより早かったなぇ」

 待ち構えるようにお婆さんがそこには居た。


「どういう意味です?」


 なんと、本の中で手に入れた失われたページを現実の今も僕は手に持っていた!


「それは"選ばれし者"が持てる"導きのページ"やよ」


「導きのページ?」

 伊勢崎さんも疑問の声をあげる。


「これからはその本を持って外に出ることが出来るんよ」


「外で?!」


「ん、そうや。失われたページを探す本当の旅はこれからなんやよ」


(道端で本に向かって意識飛んでたら変人でしょ…)


「どこで入り、どこでページを見つけるか、それはお前さんたち次第」

 そう言って僕たちの持つ本を指差すお婆さん。


 "絶界の探求者"


 表紙にはいつのまにかタイトルが浮かび上がっていた。


 突然の事ばかりだけど、僕の心臓は高く脈打ち、好奇心で満ち溢れていた!


「ケイト君…」

 少し心配そうな表情の伊勢崎さん。


「行こう!カリンさん!ここからが本当の始まりだよ!」

 力強く拳を握って"カリンさん"に突き出した。


「はい!」

 ほんのり赤く染まった頬と、溢れんばかりの笑顔で彼女は応えた。



 こうして僕らの"失われたページ"を探す旅が"現実"で始まる!



 歩き出そう、僕らの未来はまだ 白紙なんだ。

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