004.「合戦奇縁」

 赤い荒野を、前傾姿勢の四足歩行が独行する。

 それを駆るのはエミィじゃない。なんと俺だ。

 俺、今、ロボット、動かしてる。人型じゃないのは残念極まりないけど。


「ユート。左側に軽く旋回を始めています」

「……はいよ。って言ってもさ、両足均等に踏むのって意外と難しいんだけど」

「人間の身体も意外に不便ですね」


 エミィがそう言って嘆息する。その姿を初めて見てから今までに知ったことは、淡々とした声とは裏腹に、意外と感情が表情と振る舞いからダダ漏れってことだ。

 そんな彼女の事情を知り、それに付き合うことを約束してから一夜明け。彼女からは、アンダイナスの操作を憶えることを提案された。

 理由としては、移動中俺が常に手持ち無沙汰なこともあるけど、一番はエミィ自身の負担を軽減することにある。何しろ電脳人バイナルとはいえ、ベースは人間だ。操作をし続ければ、精神的な疲労もあるし眠くなることもあるらしい。つまり運転代行ってわけだ。

 これが数日の間だけなら何とかなるだろうけど、今後どれだけ一緒に行動するかわからない以上は、不測の事態に備えておくのも無駄じゃ無い。

 とはいえ。


「武器とかも試し撃ちしてみたいなー」

「まともに歩行も出来ないのに、そんな危ないことはさせられません」


 許されているのは歩行操作だけだ。足回りの運用は基本だって話だけど、こればっかりというのもちょっと飽きてくる。

 操作は意外とシンプルだ。両足のペダルが、左右の脚の動く量を決める。右側に旋回したければ左足のペダルを多く踏む。逆もまた然り。その場で足踏みしたい時は、片足のペダルを踏むだけ。

 合わせて、歩行の水平方向は右手側に備え付けられたスティックで制御する。両足を同じ量踏み込んだ上でこいつを倒すと、機体の正面はそのままにその方向へ動く。後退したければ後ろにスティックを倒せばいい。凹凸物や段差なども、機体が勝手に判断して、乗り越えられなければ自動で止まる。

 ロボットの操作と言われてどれだけ複雑な操作を要求されるのかと思ったけど、これくらいシンプルにしなければ、人の手での操縦なんて無理って話だ。ちなみにスティックには、親指と人差し指が触れる場所に他にも大量にボタンや小さいサブスティックが付いてるし、左手側にはタッチパネルらしい装置もあるけど、こいつらはエミィがロックしていて触っても何も反応が無い。確かに他の操作でこれだけ使うなら、移動操作なんかは出来るだけ単純な方がいいんだろう。

 そうして、昼間のほとんどを操縦の練習に充てながらの移動に費やし。

 俺達は、街道と呼ばれる場所まで辿り着いた。


 ◆◆◆


「と言われてもな」

「何でしょう?」

「いや、今までと何か変わったようには見えなくて」


 相も変わらず、目の前に広がる景色は荒野の赤茶けた土、それ一色だ。

 エミィの話では、これから街道と交差するから、後はそれに沿って一旦街を目指す……って話だったんだけど。


「街道? どこに?」


 ふう、と大げさに肩をすくめて見せると、エミィが自席から降りて俺のシート横まで早足で歩いてくる。立体映像だから足音は無いけど、芸が細かい。

 ちなみに、何時の間にか昼間の移動中も、エミィは何も無ければ映像を出すようになっていた。何故かと聞けば、俺が歩行を担当することになって若干ながらリソースが余ったから、なのだそうな。


「良く見てください。ここから前方五百メートルほど先です。横に突っ切るように線が走っているでしょう」


 指さす先には、踏み固められたのか他より多少色が濃くなった部分が、確かに横一線に伸びていた。


「あー、うん、うっすらとだけど」

「あれは、この街道を渡っていった他のリムの足跡です」


 リムと言うのは、この世界で使われる一般的な歩行機械なんだそうだ。荒れ地を歩行するのに都合がいいことと、破壊したメカ昆虫(一般的にはバグと呼ぶらしい。身も蓋もない)を使えば材料に事欠かないことから、移動手段は主にこれだという。日常の足にロボットを使うとは、この世界の人々は随分と未来に生きていらっしゃる。


「え、なに、街道ってあの足跡だけ? 看板とかは? 道祖神とか石碑とかでもいいけど」

「リムでの移動が大前提となっている以上、そのような無駄に労力の掛かるものが置かれているはずが無いでしょう。街道、と設定された座標データが共有されていれば、それは街道です」


 つまりこういうことだ。

 街道とは、人間が暮らす街同士を繋いだ最も安全とされる移動ルートを指すものであり、明確に道として整備されたものではない。

 しかし、同じルートを通ることが多ければ必然的に道は踏み固められてそれと判る道筋も出来るし、周辺も危険なバグは駆逐されてより安全な陸路として成り立つ。

 場合によっては、その街道沿いに旅人の助けとなるべく露天を開く人もいるし、それが発展して他の街になることもある。世界史で習う古代から中世の道の成り立ちと同じような、原始的な道の形作られ方がそこにはある、というわけだ。


「にしたって原始的だなぁ」

「人的なリソースが不足している状況では、インフラの整備は人間の生活圏に集中してしまいます。ユートが知るような、過剰に快適さを追求したインフラを構築するような余裕は無いんですよ」


 あなたが今まで贅沢な世界に生きていただけだ、と言われているような気分だった。


「街道筋の移動は明日からにして、今日はこのあたりで休むことにしましょう。街道沿いであれば今までよりも安全は確保されているはずですから、外に降りても問題ないですよ」


 そう提案されたものの、俺としては昨日外を出歩いたときの恐怖が根強い。


「……いや、大人しく寝るよ。また下手打って手間掛けるのも悪い」

「そうですか。では、明日は無理としても、明後日の昼には街に着けるように、朝早く出立することにしましょうか」


 エミィの言葉を拒否する理由も無い。食事を手早く片付け、一日の睡眠ですっかり慣れたリクライニングしたシートに横になってブランケットを被ろうとして、ふと思いついた。


「シャワー浴びたいな」

「それは街に着いてからですね」


 トイレまで(50センチ四方の小さなものだけど)揃った至れり尽くせりな操縦席も、そこまでの装備は無いらしい。

 丸二日間の間にすっかり汚れた身体をそのままに、俺は今日も眠りにつく。


 ◆◆◆


 眠りについても、次に起きるのが朝とは限らない。その時俺は、小さいながらも物騒な音と、次いだ微かな揺れで目を覚ました。


「何の音、これ……」


 聞こえたのは、巨大な質量が激突したような音。音の大きさと振動との時間差から考えると、何となく多少距離がある場所でかなり大げさな音が響いたんじゃ無いかと思う。


「起きましたか」

「うん。こんな音で起きるなんて、自分でも驚いたけど」


 知らない間に気を張っていたのか、慣れない環境で身体が完全に寝入ることを無意識に拒んでいたのか、自分でもよくわからない。

 姿を現して声を掛けたエミィと、次いでライトアップされる各ディスプレイ類。外の様子が見えても、異変の原因は見当たらない。しかし。


「何か起きてるよね、これ」

「今、周辺探査サーチを行っています。動体センサー、光学解析には今のところ反応はありませんが」


 見える範囲では何も起きていないように見える、と解釈した。


「何かの物陰ってこと?」

「そう考えて、音響センサーのログから大まかな方向と、遮蔽物アンブッシュになりそうなものの割り出しを」


 俺の考える程度のことならさくっと先回りできるエミィさん、マジ頼もしい。


「終わりました。指向性マイクで音声も拾えますが」

「聞かせて」


 手短に返答すると、若干のノイズ混じりに声が聞こえてくる。何かの処理を加えているのか、意外にも声は明瞭に聞き取ることが出来た。


『---号機はもう諦めろ! 動けるヤツから乗り込んで逃げろ! 同じ方向には向かうな!』


 切羽詰まった声からも状況は察することが出来た。襲われているのだ。


「エミィ」

「はい」

「助けられる?」

「お人好しですね」


 言葉とは裏腹に、エミィがあっさりと姿を消して、一拍遅れてアンダイナスが予備動作も無しに全力疾走を開始。

 ディスプレイのやや右側、大きめな岩、というようよりも崖の影から四本足のリムが飛び出し、その少し後ろを華奢な巨体が付いていくのが見えたのは、その少しだけ後のことだ。

 走りながら、いつかと同じように右腕が水平に前を向く。手首が折れ、今度は撃ちますの一言も無しに発射。

 僅かに遅れて、華奢なバグがいたあたりに土煙が上がる。が。


「無傷!?」

『少し厄介ですね。クラス3のマントデア型ですか』


 画像処理で拡大された箇所には、エミィがマントデアと称した巨体がはっきりと映し出されていた。一目でわかる。巨大な鎌状の前腕と、全体的に鋭角な体型。

 ちなみに、クラスってのはバグを識別するときの標準的な尺度で、クラス1が体高2メートルまで。そこから四倍刻みでクラス2、クラス3となっていく。初日に襲われたムカデ型がクラス2、コオロギ型はクラス1だ。


「カマキリってまた物騒な……!」

『実際物騒です。あのタイプは、人間を対象にしているわけではありませんが、周辺で動くバグ以外の物を見境無く攻撃するような性質を持っています。動きも俊敏で、街道で人間が死亡する要因のうち二割程度は』

「説明いいから! どうすんのあれ!」


 砲撃から逃れるためにその場を飛び離れたからか、多少距離は開いたが、未だにマントデアカマキリは前方のリムを執拗に追い掛けている。

 リムの方はといえば、全力で走っても引き離すほどの速度は出せていない。じわじわと距離を詰められているところを見れば、いつかは追いつかれるだろう。


『少し厄介とは言いましたが』


 砲撃を諦めたのか、アンダイナスの右腕が元に戻り、足を止める。

 同時に、今度は両腕の手首を折ったまま、砲口を合わせるようにくっつけたと思ったら、がきん、という感じの音が響いて左腕の肩から下が外れた。


『対抗策は、如何様にもありますよ』


 そのまま、先ほどと同じように前方に向けてみれば、現れたのは長さを二倍に増した砲塔だ。


「え、何それ」

『撃ちます』

「いや説明!」

『説明はいいから、と言ったじゃないですか』


 それだけを返答して、砲撃。

 結果までは一瞬だ。射線に沿って、衝撃波ソニックブームによるものか土煙が猛然と立ち上り、着弾点にはさっきとは比較にならない爆発が生まれていた。


『遠距離からの砲撃が避けられるのであれば、弾速を増した上で精密射撃を行えば良いのです。万一反応されたとしても、有質量弾なら着弾点に発生する衝撃波が有効な打撃たり得ますので』


 一撃です、と再度姿を現したエミィが胸を張って言うが、俺は空いた口が塞がらない。


「エミィさん」


 意味も無くさん付け。


「はい?」


 とりあえず、これは聞いておくべきだと思った。


「こいつがこの間からばんばん撃ってるやつ、あれ何なの?」

電磁加速式質量砲リニアコイルカノンです。簡単に言うと、変圧器で超高電圧まで圧縮した電力を瞬時に複数の超伝導電磁加速コイルに流し、段階的に金属製弾体を加速します」


 簡単では無かったけど、とりあえずとんでもない出力の電磁石で弾を加速する武器だと理解。


「今回は十分な弾速を得るため、砲身を倍に伸張して加速機会を増やしました。効果は先ほど見たとおりですね」

「繋げたら大変な威力だってのはよくわかった。聞きたいのは、こういう武器って割と普通なのかってこと」


 問うと、エミィは口元に指を当てて数秒思案し、


「この威力のものはなかなかありませんね。今後は使用を控えましょう」


 もっと早く気付いて欲しかった。


 というか今の発言でほとんど確信した。このアンダイナスという機体は、一般的に流通するリムってものよりずっと高性能なんだと思う。そんなものを使わせている辺り、黒幕とやらは理由はともかく俺達にそう簡単に死んで欲しくはない、ってことだろう。

 なんてやり取りを繰り広げていると、さっきの砲撃で警戒し距離を取っていたリム……アンダイナスのどこか生物的な形と比べて、四角い胴体に取って付けたような四本足が伸びたような代物だ……がどうやら安全だと確認したのか、おそるおそるという風情で近付いてきていた。

 と思ったら立ち止まり、胴体のライトが不規則に点滅。


「光学信号ですね。解読します」


 言うが早いか、解読結果の文字列が目の前に表示される。


 ——PLZ NSVP C210


「何これ」

依頼Please近距離Nearline音声Simple通話VoiceプロトコルProtocolチャネルChannel210番210。ですね。音声通話を希望しているようです」


 よく使われる符丁です、とエミィは言う。


「通話しますか?」

「俺が話すの?」

「助けると決めたのはユートでしょう」


 その通りなんだけど、その後結局何もしていない俺が会話にしゃしゃり出ても良いものなのか。


「私はこの通り身体がありませんから。表に出て行くのはユートでないと、今後困ることになりますよ。何より、私のような存在は普通の人間にはほとんど認知されていませんから、表に出ると厄介なことになります」


 そう諭されたら、覚悟を決めるしかない。これも、俺が出来ることの一つなんだ。そう思えばいい。

 というか、エミィのような人は特殊な存在なんだな、やっぱり。


「わかった。じゃあ、頼む」


 ディスプレイに、音声通話と表示され赤く縁取られたウィンドウが一つ出る。と思ったらすぐに色が緑色に変わる。どうやらこれが繋がったという合図らしい。


『ハロー、聞こえていますか?』


 響いたのは男性の声。凜としつつも棘の無い声音に、優男風な顔が一瞬で想起される。


「あ、はい。聞こえてます」

『良かった。さっきマントデアを撃って助けてくれたのは、君で合っているのかな』

「え、えーっと」


 背後から、エミィが話を合わせてくれないと困ります、と耳打ちしてくる。実際は耳元だけに聞こえるように指向性を持ったスピーカーか何かなんだろうけど、妙にくすぐったい。


「はい。どうやら助けることが出来たようで安心しました」

『そうか。いや、本当に助かったよ。護衛も付いていなかったものだから、あのままだと今頃は死んでいた』

「護衛無し? 危険なんじゃ」

『最初は蟲狩りバグハントキャラバンが随伴してくれるはずが予定が食い違ってしまってね。こちらも急いでいたし、ディーネスとトキハマの間は往来も多くて比較的安全なものだからつい、ね』

「よくある話のようですね。他のキャラバンにくっついて回れば安全と判断して、はぐれて襲われるという事例は統計でも死亡原因の上位に」


 どこから引っ張り出してきたんだその統計情報。と耳打ちしてくるエミィに心の中で突っ込みを入れる。


『ともあれ、顔を合わせてお礼がしたい。そこの崖下でキャンプを張っているんだ。良ければ来てくれないか?』


 ◆◆◆


 お招きに応え言われた場所まで行ってみれば、そこには三体の四本脚リム……クアドリムと呼ぶことが多いらしい……が、身を寄せ集めるように脚を畳んで停まっていた。

 形はどれも似たり寄ったりの、箱に脚だけ着けたようなやつだ。お世辞にも戦闘用に使えるとは思えないし、こいつらだけでバグが我が物顔で歩き回る荒野を走破するのは頭が悪いと正直に思った。

 そこから十数メートルほどの距離を取って、アンダイナスも駐機する。例によって掌を使って地面に降り立つと、他のリムに乗っていた人間も総出なのだろう、十人弱に囲まれて歓待を受けた。


「すげぇリムだな。二足歩行だからデュアレグか」

「マントデアを仕留めたって言うから、もっとゴテゴテに武装してるもんだと思ってた」

「見たこと無い型だ。外装の下がどうなってるかまるでわからん」


 と思えば、話題の中心はアンダイナスだ。そりゃまぁ、俺自身は何もしてないしな、仕方が無い。しかし、どうにも悪目立ちしているような感じもする。

 複雑な気分でアンダイナスを取り囲む人たちを眺めていると、一人の男がこちらに近寄ってきた。どうやら、この人が先ほどの通信相手のようだ。


「悪いね、商売柄珍しいリムには目が無いやつらばかりなんだ」

「いえ、それは構いませんけど。商売柄っていうのは?」

「私たちはリム関連部品の卸売りを行っていてね。レイルズ商会という」


 良ければこちらを、と名刺を差し出す。書かれていたのは確かにレイルズ商会という社名と、


「社長?」

「ああ。レイルズ=アトルマークという。よろしくお見知り置きを」

『アトルマーク?』


 仕立ての良いスーツに身を包んだ体を優雅に曲げて一礼するその姿は、淡麗な顔とも相俟って、声から想像した優男そのまんまだった。貴族然とした、なんて形容詞が思い浮かぶ。

 そんなレイルズの名乗りに反応したのはエミィだ。声が聞こえた元は、耳に取り付けた骨伝導式のヘッドセット。俺が下手な発言をしないように、と着けさせられたものだ。だから、これは俺にだけにしか聞こえていない。


「社長自ら物資の輸送なんて、大変ですね」

「人手が足りなくてね……と言いたいところだけど、いつもは従業員に任せているよ。今回は、少しばかり特別な客を相手にしての商いだからね。私が出向く必要があるのさ」


 詳細は伏せるけどね、と指を一本口の前に立てて、内緒のジェスチャー。いちいち動作が様になっている。


「命の恩人をいつまでも外に立たせたままというのも外聞が悪いね。簡単だけど、食事も用意させている。是非、屋根のある場所で歓迎させてほしい」


 人好きする笑顔で言われれば、遠慮するのも難しい。あまり長く話して、異邦人であると見抜かれるのは良くないと思うんだけど、


『構いませんよ。会話に困ったら私の方でフォローします。私以外の人とも話して、常識を身に付けるのは悪いことではありません。それに、少し気になることが』


 とエミィは意外にも積極的に人と話せと言う。まあ、世界を見聞きしろって目的からすれば納得か。


「それじゃあ……お言葉に甘えて」

「ありがたい。では、こちらに」


 先導するため歩き出したレイルズが向かった先は、他の三台のリムに隠れて見えていなかった一回り小さめのものだ。輸送用に作られたんだろう三台は、かなり大きめの建物に脚がそのまま生えたようなサイズ感だったけど、こっちは遠目からだけど大型のトラックみたいな大きさ。


「……さっきさ、レイルズさんの苗字に反応してたみたいだけど」


 足を踏み入れる前に、気になったことを小声で呟く。聞き取れるかも怪しいくらいの音量だったけど、ヘッドセットのマイクはしっかりと拾ってくれたらしく、エミィが返答してくる。


『聞き間違いでなければ良いのですが、名刺には何と書かれていましたか?』

「……レイルズ=アトルマーク」

『アトルマークという家名は、こちらの人類でトップクラスの権力を握る、源流十三家ルート13と呼ばれる血族の一柱です』

「……超重要人物じゃん。それがなんでこんなとこに?」

『わかりません。ですが、アトルマーク家は確か五年前に……』


 密談の途中で、足が止まる。目の前には、さっきは遠目に見えていたレイルズのリム。


「私用のものだよ。どうぞ中へ」


 もう少し話を聞きたかったけど、これ以上内緒話をしていれば不振に思われる。

 覚悟を決めて俺は、足をたたんで胴体を地面に付けたそれに、普通に建物の中に入る感じで足を踏み入れた。

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