まだUCが発表される以前にムーンクライシスを読みました。時期的にはX以降ターンA以前あたりだったかと思います。
面白くて、思わず友人にも勧め「Zのチームなら当然ですよ」が友人の間で流行るという不思議な状況がありました。
当然、そこまで読んでいるのでUCが某遺児を出すと知ったときはムーンクライシスは完全に埋もれていってしまうんだろうと思いました。
確かに、UCは旧作の色々な要素を拾い上げ、詰め込んでいき、楽しめる内容であったと思います。ですが、私の中でムーンクライシスがどうしても離れず、また某遺児を扱った上で「ガンダム」という基本フォーマットに添って話を進めるとあのような出会いしかなかったのは想像に難くありませんが、やはりご指摘のあったようにムーンクライシスとプロット上の重複が多すぎるように思います。
一時期粗製乱造されたガンダム二次創作ですが、それでも商業作品としてきちんと出版された作品を無視するような流れをこのまま一ファンとして甘受し続けるのもどうなのか、と思わされたエッセイでした。
中学生の私は、これが正史となり、ゲームにも参戦し、映像化されるのを心待ちにしていましたねw
ガンダムという作品は数あるロボットアニメ作品においても特異な存在で、兎角裾野が広いというか二次創作三次創作が公式・非公式の認定を問わず数多出版されている。
とは言え、やはり根底にあるのは富野監督の生み出した「ガンダム」であって、ことに宇宙世紀の作品をやるのであればそれに対するスタンスは考えて然るべき事だ。
そういった視点から見ても、まだ年若かった頃に手に取ったアウターガンダム他の松浦さんのガンダム作品は富野監督の世界を壊さないよう注意を払っているのだな、と以前より感じていた事が今持って本人より語られたのはなんともなしに嬉しい。
個人の好悪に関わることなので強く言うことは出来ないものの、ガンダムUCが世に出てきた頃から不満に思っていたのはまさに上記のことで、ガンダムという「作品」が好きで書いているのはよくよく伝わってくるのだけれども、そこにガンダムという「世界」ひいてはそれを生み出した富野監督へのリスペクトを感じさせないところが気にかかっていた。
生死不明にしていたアムロとシャアの去就を半ば確定させてしまうような事をやったり、あえて曖昧にしたままだったザビの遺児を明確に表に出してしまったりと。
特に極めつけがニュータイプという物を超能力こそが本体であると認識した書き方は富野監督の諸作品に共通する「(ありのままの)人と人とがわかり合おうとする事」に対する返答としてはあんまりだと感じた。
その点においてムーンクライシスで語られた「次に続く世代がより聡明な人々(ニュータイプ)である事を期待します」という言葉は自分にとってのニュータイプ像の根幹になっている。
世の中どうしたところで完全オリジナルな物など作れるはずもなく、ましてやガンダム作品を看板にするならなおのことオリジナルな物など作ることは不可能といっていいだろう。
とはいえ、そういった諸々の「元となるもの」へのスタンスというのは創作をする上で忘れてはならないことだし、単純な著作権とか出版権とかだけでなく考えて行かなかればならない事柄だと思う。
単にガンダムUCという作品のプロット被りに対する意見や、ギリギリのネタを使う際の配慮に関する話というだけでなく、そういった面での提言として価値のあるエッセイであると感じられるので、宇宙世紀作品群(もちろんアウターガンダム等松浦さんの作品も含む)を見た上での一読をお勧めしたい。
ある人気コンテンツが消費者によって再生産される必然と、更にその消費者を集った企画が商売として成立する再生産が産業と変わる風景をかつてコンテンツを支えたヒトの視点で訴えたものなのだろう。
それは機動戦士ガンダムというコンテンツが多くの人々に長い時間受け入れられ、遂には当初の物語とは似ても似つかないものに変貌してゆく変化の過程とも云える。
機動戦士ガンダムを優れたコンテンツと認めることは吝かではないが、かつてある消費者創作者が楽しく消費再生産できた娯楽作品が、更にいつしか呪いを撒き散らす存在になり始めた、そう云う時代になったということだろう。
単に、自らも乾きを癒す側だったろうという揶揄も出来るが、一旦は確かに滅びかけていた機動戦士ガンダムというコンテンツを、サイバーコミックが長く苦難の時期を支えた貢献については軽視されるべきではない。
重力に魂を惹かれる者たちが、当初はスポンサーの都合で打ち切りにされた作品を数十年も支え世代を超え認め、遂には自らの重みで呪いを発するようになった。
人の魂の重さと人の愚昧さを感じさせる悲しい現象だが、もはや吹き飛ばすのもエゴだし叡智を授けることもエゴなわけだ。
ガンダムの歴史が深くなるにつれて未来や世界観も広がり、そして二次創作も生まれるのは必然の流れかもしれません。しかし、今回の二次創作という身近でありながらも余り深くは考えなかった話題に改めて着目し、心臓を掴まれるような思いに駆られました(汗)
私自身も二次創作で色々な作品を書いたりしました。その時は深く考えたり重く受け止めたりはしませんでした。若気の至りというヤツですねぇ……(汗)
今後もガンダムの歴史は拡がるのと同時に、二次創作を巡る話題や問題も何かしらの形で浮上してくるかもしれません。その時、日本はどんな答えを出すのでしょうか……。