ガンダムという「世界」に対するスタンス・リスペクト

  • ★★★ Excellent!!!

ガンダムという作品は数あるロボットアニメ作品においても特異な存在で、兎角裾野が広いというか二次創作三次創作が公式・非公式の認定を問わず数多出版されている。
とは言え、やはり根底にあるのは富野監督の生み出した「ガンダム」であって、ことに宇宙世紀の作品をやるのであればそれに対するスタンスは考えて然るべき事だ。
そういった視点から見ても、まだ年若かった頃に手に取ったアウターガンダム他の松浦さんのガンダム作品は富野監督の世界を壊さないよう注意を払っているのだな、と以前より感じていた事が今持って本人より語られたのはなんともなしに嬉しい。

個人の好悪に関わることなので強く言うことは出来ないものの、ガンダムUCが世に出てきた頃から不満に思っていたのはまさに上記のことで、ガンダムという「作品」が好きで書いているのはよくよく伝わってくるのだけれども、そこにガンダムという「世界」ひいてはそれを生み出した富野監督へのリスペクトを感じさせないところが気にかかっていた。
生死不明にしていたアムロとシャアの去就を半ば確定させてしまうような事をやったり、あえて曖昧にしたままだったザビの遺児を明確に表に出してしまったりと。
特に極めつけがニュータイプという物を超能力こそが本体であると認識した書き方は富野監督の諸作品に共通する「(ありのままの)人と人とがわかり合おうとする事」に対する返答としてはあんまりだと感じた。
その点においてムーンクライシスで語られた「次に続く世代がより聡明な人々(ニュータイプ)である事を期待します」という言葉は自分にとってのニュータイプ像の根幹になっている。

世の中どうしたところで完全オリジナルな物など作れるはずもなく、ましてやガンダム作品を看板にするならなおのことオリジナルな物など作ることは不可能といっていいだろう。
とはいえ、そういった諸々の「元となるもの」へのスタンスというのは創作をする上で忘れてはならないことだし、単純な著作権とか出版権とかだけでなく考えて行かなかればならない事柄だと思う。
単にガンダムUCという作品のプロット被りに対する意見や、ギリギリのネタを使う際の配慮に関する話というだけでなく、そういった面での提言として価値のあるエッセイであると感じられるので、宇宙世紀作品群(もちろんアウターガンダム等松浦さんの作品も含む)を見た上での一読をお勧めしたい。

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