煮られた走狗のエスケイプ

　かつて英雄だった男の名は、ラウレグと言った。彼は古城に閉じ込められていた。理由など、当の本人にもよく分かっていなったが、おそらくこんな感じだ。
　戦争が終わって、活躍しすぎた英雄は、もはや邪魔者以外のなんでもなかった。新たな為政者にとっては、中身が朽ちるまで、蓋をして閉まっておっくのが最善手だったのだ。
　いい迷惑だったのは近隣に住む村人たちだった。いつ頭上の英雄が己の不遇を嘆いて、実力行使に出ないとも限らない。彼らはそんな不安を解消するために、残酷な儀式を考えた。
　それから毎年春になると、うら若き乙女が、ラウレグの元に届けられるようになった。
　
ーーやがて、季節の巡りに従い、何度目かの春が訪れる。