第5話「現実」山頂のある池

 親戚の家の裏の山には、昔から頂上に池がある。

 子供のころ、一度だけ父と一緒に訪れたことがある場所だ。


 道はほぼなく、草木をかきわけて進んでいった。

 30分もあれば到着する予定だったのだが、どういうわけか1時間以上彷徨っていた。道などなく、ただ草木が生い茂る樹海のような場所。

 川もなければ建物も見えない。


 あきらめて帰ろうかとした時だった、出口が見つけたのだ。

 丘を登ったような感じのふっくらとした道(坂道)を上っていくと、鉄塔を見つけた。

 いつのまにか2つ山を越えた場所に出ていたことが分かり、戻る形で2時間後に頂上に着いた。


 頂上には確かに池があった。

 池しかなかった。周りは草木どころか蜂の巣まである始末で詳しく調べることもできなかった。


 それから幾年がたち、あの山のことが分かった。


 あの池はもともと水をためる貯水池のようなもので、火事があった際に対応できるようにと昔の人が作ったものだったらしい。


 それがいつしか忘れられ、その山の頂上に池があるという噂が広まってしまったらしい。

 怖い話でここまでで終わればよかったのかもしれない…。


 実は山に上る途中で見つけてしまっていたのだ。

 首を吊るような紐が何本も木の枝からつるされているのを。

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