少女、遺跡へ潜る

 リリィの朝は早い。陽が昇る頃にはすでに起きており、店内を清掃する。


 骨董品屋アメリースは朝8時ぐらいから営業する。そのためには早朝に掃除を済ませておかなければならないのだ。


 なぜそんな朝早くから営業をするかと言うと、この街ルインはハンターが集まる場所だ。朝早くから遺跡に潜るハンターもいるので、そのお客を目当てに店を早めに開いているのだ。


「お!リリィちゃん、おはよう」

「あ、おはようございます」


 店の前を掃除していると一人のハンターがやって来る。


「何か必要ですか?」

「ああ、ちょっと他の店はまだ開いてないからここを覗きにきたんだが・・・大丈夫か?」

「はい、ちょっと早いですけど開けられますよ」

「おお!それは助かる」


 リリィは店を開けてハンターを招き入れた。


「えーっと・・・おお、あったあった」


 ハンターが手を伸ばしたのは小石程の大きさの綺麗な青色をした玉だ。


 これは水の魔石だ。魔石とは魔力が結晶化した物で、属性によって色が変わる。例えば赤なら火、黄なら地、緑なら風と具合だ。今のハンターが手に取ったのは青なので水属性となる。


 使い方は道具に使ったり、そのまま投げつけて使ったりするのが一般的だ。


 小石程度の大きさの水の魔石をバケツ等の容器に入れて魔力を通すと水がなり、飲み水として使えるのだ。遺跡に潜る際の貴重な水源として重宝されている。


 しかし、この魔石は魔力が結晶化したのを発掘するしか入手方法がないのだ。なので、ハンター協会という組織が発掘されやすい場所を管理していたりする。


「ありがとうございました」

「こっちも店を開けてもらって助かったよ。ありがとな」


 ハンターの人は魔石を買って帰って行った。


「・・・魔石の補充、やった方がいいかな」


 リリィは魔石の在庫が少なくなってきたことを思い出す。昨日の整理で見た時、倉庫にはよく使われる青と赤の魔石の在庫が少なかったことを思い出す。



「・・・まだ早いからそこまでお客様は来ないよね」


 リリィはお店を少し空けることにした。



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 リリィは店の外へ出て少し歩いた。そこは昔、何があったかは分からないが地面が5m程広く、球状に浅く陥没している場所があるのだ。エリーはその陥没した地面の淵に立つ。


「よし!」


 リリィは集中して魔力を制御する。制御するのは火の魔力。火の魔力をその球状に陥没している中に圧縮していく。


「・・・・あ」


 ドガアァアァァァァーーーン!!!


 リリィが魔力の制御に違和感を持った時にはすでに大爆発を起こしていた。幸いにも周りには何もないので被害はない。この陥没している場所も遺跡の一部でなぜか傷一つ付かないので無事だ。被害があったとすればリリィの髪が爆風でぼさぼさになってしまったことだ。


「またやっちゃった」


 リリィは魔石を生成する時にこの魔力の暴走をよくやってしまうのだ。


 でも、陥没した地面の中には目的の赤色の球が幾つも落ちていた。


「でも、魔石生成はできたみたい」


 リリィは下に降りて魔石を回収していく。


 魔石は本来、発掘でしか手に入らない。魔石は魔力が高密度で地面の中で長い時間圧縮して出来る物だからだ。しかし、リリィは魔力の総量が底無しと言っていいほどに多く、力技で圧縮して魔石を生成出来てしまう。更に言うと、魔力の制御だけで魔石になるまで圧縮するなんてことは普通は出来ない。このことはハンター協会にも報告はしておらず、知っているのは保護者のアビーぐらいだ。


「よし!今度は水の魔力ね!」


 リリィは失敗を恐れずに再び水の魔力を陥没した地面の中で圧縮し始めた。



 それから約10分、水の魔力は暴走を起こさずに魔石を生成することが出来た。リリィは急ぎ回収をして、誰かに見られる前にこの場から立ち去った。



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「あれ?アビーさん、今日は早いですね」


 リリィは魔石生成から帰ると、普段ならまだ寝ているはずのアビーが起きているのが珍しくリリィは驚いていた。


「ん?ああ、今日は何か大きな音で目が覚めちまってな」

「お、音・・・ですか?」


 恐らくリリィの魔力の暴走した時の爆発の音だろう。


「ん?お前、またやらかしたか」

「ご、ごめんなさい」


 アビーはリリィの様子から何をやったか想像できたようだ。リリィは謝ったが、アビーは怒ることもなくケラケラと笑いながら近寄ってきた。


「別に怒ったりしねぇよ。リリィさえ無事ならな」


 そう言って頭をわしゃわしゃと撫でて来た。


「や、やめて!さっき整えたばっかりなのに」


 そう言ってアビーの手を振り払い、髪を手串で直し始めるリリィ。


「あははは」

「もう!笑いごとじゃないよ!」


 このような光景も二人にとっては日常的なことだった。



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「今日は遺跡に行くがお前も来るか?」


 朝食のパンを食べ終わるとアビーはそんなことを言ってきた。


「で、でもお店は?それに私は・・・」

「店は閉めときゃ問題はない。それにお前さんの努力は知っているんだ。それにもし何か起こりそうなら俺が何とかしてやるからよ」

「・・・そ、それなら」


 リリィはアビーが何とかしてくれるなら、普段一人の時は避けている遺跡に行こうかなと考えた。


「そうと決まれば早速準備だな」



 遺跡探索へ行く時の道具はまずランタンだ。これは火の魔石を入れれば辺りを灯してくれる物だ。


 それから水筒と弁当だ。ピクニックというわけではないが、恐らく夕方近くまでは潜る。なので、必要な物なのだ。


 まぁ、後は人によるが、アビーの場合は剣だ。ちょっと特殊な剣で柄の部分に魔石を入れる部分があり、魔石の属性によって剣に属性付加が出来るようになっている。


 リリィは基本魔法なので特に武器は持たなかったりする。普通のハンターでは杖等の魔力増幅具と呼ばれる物を持つ者が多いが、魔力が多いリリィには不要な物だ。逆に持つと危険が増してしまう。



「じゃ、出発するぞ」

「は、はい!」


 店に鍵をかけてリリィとアビーは遺跡へ向けて出発した。今回は町から少し離れた場所にある遺跡に行くらしい。徒歩で約1時間、その遺跡の入口を発見する。


「やっぱ、先客はいるか」


 遺跡の入口には四人パーティーのハンターがいた。見た所、前衛二人に後衛一人、特殊系が一人と行った所だ。特殊系というのは罠の看破や鑑定が出来る者のことだ。この職業は技術的なところがあるので、やる人が少なかったりする。


「お?リリィちゃんじゃねぇか。今日は遺跡に潜るのか?」

「は、はい。アビーさんと一緒に」


 その内一人の剣士は今朝、店で買い物をしてくれたお客だった。


「じゃあ、注意して潜った方がいいぞ。この遺跡、最近大型の魔物が出たって噂だからな」

「え?大型の魔物ですか?」


 魔物には小型、中型、大型と主に分類される。小型は1mぐらいまで、中型は大きくて3m程まで、大型はそれ以上の魔物のことだ。中には5m以上もある魔物もいる。


「情報あんがとさん、俺達はその大型の魔物が今回のターゲットだ」

「え!そうなんですか!?」


 リリィも初めて知った。


「おいおい、アビー。あんたもハンターやってるんならわかんだろ。あんなの討伐するには最低でも10人は必要だってことぐらい」

「ま、なんとか何だろ」


 アビーはそう言って遺跡の中へと入っていった。


「え、えっと、失礼します」


 リリィも慌ててアビーの後を追いかけた。


「・・・リリィちゃん、大丈夫かね」


 ハンターの人達はアビーよりリリィの心配をするのだった。



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「あ、あのアビーさん!さっきの本当なんです?」

「ん、ああ。大型の魔物のことか?」

「そうです」


 リリィとアビーはランタンに魔石を入れて明かりを灯しながら奥へと進んでいた。


 遺跡はもう何年前のものかもわかっておらず、石造りの石も朽ち果てそうな場所である。しかし、不思議な魔力の影響なの意外と丈夫だったりするのだ。今は入口から大きな通路のような場所を歩いて奥向かっている。ここまでは一本道だ。


「ま、大型の魔物の素材は高く売れるからな。他の奴に越される前にっと・・・」


 そんなとき、通路が3つに分かれていた。


「・・・リリィ、お前はどれが正解だと思う」

「え?ここで私に振る?」

「ああ、お前のカンは優れているからな」

「ん~・・・こっち・・かな」


 リリィは左の通路を指差した。


「よし、じゃあ行くぞ」

「ええ!?本当にいいの!?」


 リリィはアビーの後ろをついて行くしかなかった。



 途中、通路の奥から1m程のゴブリンという人型の魔物や無形生物のスライムという魔物が襲ってきたが、全てアビーが剣で倒していた。


「リリィは中型かそれ以上の魔物の時に頼むな」

「わ、わかりました」


 アビーがそう言うのにはちゃんと理由があるのだ。


 そして二人は進み続けると大きな広い空間に出た。


「確かに大型の魔物はこれぐらい広くなきゃ動けねぇが・・・」


 アビーは辺りを見渡した。リリィも見渡すが大型の魔物の影は見えない。


「お留守なのでしょうか?」

「・・・・・・いや、何かいるな」


 アビーは何かの気配を感じ取っているようだ。


 カラカラカラ


 奥の方で何かが転がるような音がした。


「来るぞ!」


 アビーの叫びと共に姿を現したのは3m程ある両手に大きな剣を持った骸骨の中型の魔物ソードスカルナイトだった。中型といっても普通のハンターでは強敵に入り、こいつを見たら逃げろとまで言われる魔物だ。


「っち、大型の魔物じゃねぇのかよ!」


 アビーは舌打ちをしながらも剣を構え、速攻で斬りにかかる。


 ガキン!!


 ソードスカルナイトはアビーの剣を自らの剣でアビーごと弾き飛ばした。


「くそ!これだけデカいと力もあるな!」

「アビーさん!・・・猛き炎!清き水!母なる大地!天翔ける風!彼の者に祝福を!!エンチャントメント・カルテット!!」


 リリィはアビーに強化魔法を掛ける。これは攻撃、防御、速度、自然治癒力を全て引き上げることが出来る、リリィオリジナルの強化魔法だ。本来は一つずつ掛ける強化魔法だがリリィは一度に出来るようにオリジナルの魔法を作ったのだ。


「サンキューな!リリィ!」


 アビーの身体は赤、青、黄、緑の魔力のオーラが纏う。そして、先程の斬りかかりとは比べ物ならない速度で飛び出した。


 アビーはソードスカルナイトが振るう剣を避けて、足元に入り込む。


「はぁ!」


 回転斬りの要領でソードスカルナイトの両足を切断する。崩れて倒れてくるソードスカルナイトを避けながらアビーは距離を取った。


 そこへソードスカルナイトの剣が振り落とされる。


 ガァン!!


「おっと、あぶねぇな!」


 ソードスカルナイトは足が崩れても、腕による剣の攻撃を緩めて来なかった。


「リリィ!奴の腕を落とせ!」

「は、はい!」


 リリィはアビーのの指示に従い、ソードスカルナイトの腕を標的にする。


「風よ・敵を・斬り裂け・ウィンドカッター!」


 リリィが使ったのは風属性の下位魔法だ。本来なら30~40cmの不可視の風の刃を2~3個飛ばす魔法なのだが


 ゴオゥ!!


 リリィの手先から出た風の刃は2個なのだが、大きさは2mはある。その風の刃がソードスカルナイトの両腕を一撃で切り飛ばした。


「さすがだな!」


 アビーは剣を振れなくなったソードスカルナイトの頭まで跳躍する。


「爆ぜろ!」


 アビーは事前に剣の柄に火の魔石を数個入れといたのだ。それをソードスカルナイトの頭に突き刺した状態で解放する。


 ドッガァァーン!!!


 剣先から爆発が起きてソードスカルナイトの頭を吹き飛ばした。


 アビーは爆風に乗ってリリィの傍に着地する。するとソードスカルナイトの残りの部分がガラガラと音を立てて崩れていった。


「さてと・・・奴のコアはっと」


 アビーはソードスカルナイトのコアを探し始める。コアは中型以上の特定の魔物から取れる魔力が宿った結晶のことだ。魔石のようにその属性の純粋な魔力が宿っている物とは違い、すでに魔法のような何かしらの効果が宿っていることが多いのだ。


 リリィはアビーの後に続き、コアを探しつつ、素材になりそうなのを探す。


「あ、これじゃないですか?」


 暫くしてリリィは紫色の歪な結晶を見つけた。


「どれどれ?んー当たりな方だな。それは送っといてくれ」

「わかりました」


 リリィはゲートリングを発動させてコアを倉庫に送る。


「リリィから見て使えそうなものはあるか?」

「ん~・・・」


 リリィは辺りを見渡す。


「これは・・・うん。これは武器の素材に出来そうです」


 リリィが持ったのはソードスカルナイトの剣の柄に嵌まっていた黒い石だ。


「ただの石にしか見えないけどな」


 アビーはリリィからその黒い石を左手に取り見てみる。


「見た目はそうだけど、それ希少な鉱石ですよ」

「そんなことまで覚えているのか」

「これでも勉強はしてるんです」


 リリィは胸を張ってエッヘンとポーズを取る。


「みたいだな。俺としては胸はもう少し欲しいところだが」


 アビーは余っていた右手で胸を張ったリリィの胸に手を伸ばす。


 もみもみ


「~~っ!!だから勝手に揉まないで!!」


 ブォン!


 リリィはアビーにビンタをしようとしたがまだ強化魔法の効果があるのか避けられてしまう。


「まったくもう!油断も隙もないんだから!」

「いいじゃねぇか、減るもんじゃないし」

「・・・・アビーさん、今日の夕飯抜きです」

「あーうそうそ。今度からは言ってから揉むから」

「言ったからって良いってものじゃないです!!」


 2人は戦闘後とは思えない会話をしていた。



 それから素材を見て使えるものはゲートリングで倉庫に送った。


「取り敢えず今日は帰ろうぜ」

「あれ?大型の魔物はいいの?」

「ああ、一応良い素材は手に入ったからな」


 二人は元来た通路に向かう。


「あれ?」


 二人は元来た通路に入ろうとするとそこには遺跡の入口で会ったハンターの4人が呆然として立ち尽くしていた。


「あんたらも結局来てたのか」

「あ、ああ。ちと心配になってな」

「は?心配?」


 アビーは何のことだと怪訝な顔をした。


「いや、あんたじゃない!リリィちゃんの心配をして来たんだ!」


 ハンターの皆も頷いている。


「わ、私のですか?」


 リリィは自分のことの何が心配か分からなかった。


「リリィちゃんはまだ14歳だろ。それなのにこんな奴に従って大型の魔物を倒しに行くなんて自殺行為だと思うじゃないか!」

「誰がこんな奴だ」


 アビーが不機嫌そうな顔をする。


「それなのに何だよ。リリィちゃんの使った魔法!見たことなかったぞ!」

「俺も魔法を使うがあんな風の魔法なんて見たことねぇぞ」

「しかも、杖の補助なしだぞ!」


 ハンター達はリリィの魔法を初めて見て驚いているようだった。


「えっと、風の魔法はウィンドカッターなんですけど」

「「「「はぁ!!」」」」

「えぅ、ごめんなさい」


 4人同時に大きな声を出されたので、リリィはアビーの陰に隠れた。


「わ、悪い、リリィちゃん。ちと驚いちまって」

「り、リリィちゃん。それって下位魔法だぞ」

「あんな威力の下位魔法があるのか?」

「いや、オレは聞いたことないぞ」

「天才なんじゃないか?」


 4人から色々言われるリリィ。その時


 ガラ・・・ガラガラガラガラガラガラガラガラ!!!


 先程戦っていた広間からものすごい音が聞こえてきた。


『へ?』


 リリィやアビーだけでなくハンターの4人も広間を見て唖然とする。そこには1m程の骸骨の魔物スケルトンが大量に産まれてきていたのだ。


「なななななな!!」

「に、逃げろ!!」

「くそ!来るんじゃなかった!」

「おい!リリィちゃん達も逃げろ!」


 ハンター4人は慌てて逃げ出す。


「リリィ、やっていいぞ」

「わかりました。アビーさんも走る準備しててください」

「おう」


 リリィは集中を始める。アビーもリリィに襲い掛かってくるスケルトンがいないかリリィの横で待機する。


「猛き水よ・我に従い・全てを飲み込む大河となれ・アルヴィオーネ!!」


 リリィが魔法を唱えると同時にリリィの手の先に巨大な魔法陣が出現する。そしてそこから前方にある物全て、多数のスケルトンも一緒に押し流す大量の水を出した。これは洪水と言ってもいいレベルだ。


 これもリリィのオリジナルの魔法だ。リリィの魔力は底なしって言っていいほど多い。普通の魔法でも威力は数倍に跳ね上がってしまう。そして、魔力の総量が多いためなのか魔力制御をしっかりしないと、今朝の魔石生成の時のように暴走してしまうこともあるのだ。


 リリィのオリジナルの魔法は魔力の総量が多い人用に作ったようなものだ。必要とする魔力を多めにしてある魔法なので、リリィが使っても暴走は起きづらいのだが、その分、高威力の魔法が多くなってしまう。その結果


 ゴゴゴゴゴゴゴ!!


「リリィ!行くぞ!」

「うん!」


 リリィの放った水の魔法は全てのスケルトンを押し流した。しかし、大量の水は遺跡へのダメージもある。例え崩れないとしてもリリィ達がいた場所には、壁に当たった水が跳ね返り、戻ってきているのだ。


 ハンター達はすでに先に行っている。リリィ達もその場から退避するために走った。後ろからは水が押し寄せている音が鳴り響いていた。


「ご、ごめんなさい!強くやり過ぎた!」

「今はいいから、とにかく走れ!」


 二人は足場の悪い遺跡の通路を走った。


 そして二人は分かれ道の場所まで戻ってきた。後ろを見ると音は奥の方で響いており、近付いてくる気配はなかった。


「ここまで来れば大丈夫そうだな」

「はぁ、はぁ、はぁ」


 アビーは平然としているが、リリィはもうクタクタになっていた。


「さすがはリリィだな」

「で、でもちょっとやり過ぎたかも」

「いいんだって。俺が命令したんだから気にすんな」

「う、うん」


 リリィはその言葉だけで少し気が晴れたような気がした。


 これがリリィが一人で遺跡探索をしない理由である。一人だと狭い通路等で魔法を放つと自分にも被害が来てしまう。今のように大きな魔法を使えば周りの人たちに迷惑もかけてしまうのだ。


「そういえばあのハンター共はどこに行ったんだ?」

「もう先に出ちゃったんじゃ」

「そんならいっか」


 アビーはリリィの手を取って歩き出した。リリィも手を握り返してアビーについて行く。


 この日の遺跡探索は少し危険があったが問題なく無事に帰ることが出来たのだった。



「リリィ・・・その、夕飯は?」

「大丈夫、ちゃんとアビーさんの分も作るから」

「よっしゃ!」

「あ、でも少しは整理も手伝ってくださいね」

「・・・へーい」


 アビーのやる気のない声が響く。


「・・・・やっぱり夕飯は」

「しっかりと手伝わせて頂きます!」


 帰りの会話は遺跡探索の後とは思えない会話なのだった。だが、これがこの2人らしさでもあった。

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