少女の日常

 リリィはルインの街の外で採取をして、いつと通りに昼過ぎに骨董品屋アメリースに帰った。


「ただいまー」

「おう、お帰り」


 リリィが帰るとアビーは椅子に腰掛け、足を机の上に乗っけてぐーたらしていた。


「もう、アビーさん。お客様が来たらどうするの?」

「そんなもんこの時間は来ねぇから大丈夫だ」


 アビーは足を机の上から降ろさずにそんなことを言う。


「なんでそんなことがわかるのよ」

「・・・・・・」


 リリィの質問にアビーは目を逸らした。


「あ!もしてして!!」


 リリィは何かに気付き慌てて店の外に出た。そして、店の扉に掛かっている『Open』のはずの板が『Closed』に引っくり返されていた。


「アビーさん!!まだ営業時間中です!!何で引っくり返しているの!!」


 リリィは文句を言いながら、板を引っくり返して『Open』に戻して、アビーの元へ抗議しようと走った。


 ガタ!


「あっ」


 リリィは途中、商品の置物に躓いて転んでしまう。しかし、やってくる衝撃が少なかった。


「ったく。大丈夫か?」


 気が付くとリリィはアビーの胸元に倒れていた。どうやら、床と接触する前にアビーが下に入り込んだようだ。


「う、うん。大丈夫。ありがっ!?」


 リリィはお礼を言っている最中に止まってしまう。


 もみもみ


 胸元を見るとアビーの両手がリリィの胸を揉んでいたのだ。


「ん?最近また大きくなったか?揉み心地が良くなってるぞ」


 アビーは揉み続けながら当たり前のように感想を言った。


「いつまで揉んでるのよ!!」


 リリィは急いで立ち上がり、腕で胸を守ろうとしながらアビーの胴体をげしげしとを踏みつけた。


「・・・・・・」


 だが、アビーは逃げようとも起き上がろうともせずに踏まれながらリリィを見ていた。


「な、なによ?」


 リリィはいつもならすぐに立ち上がって適当に言いはぐらかして逃げるはずのアビーが動かないので違和感を覚えた。


「リリィ。お前、尻も大きくなったのか?だからパンツを」

「~~っ!、大きなお世話よ!!」

「―――――っ!?!?」


 リリィは男の急所を踏みつけた。アビーは声にもならない悲鳴を上げて痛みに耐えていた。


「自業自得よ」


 リリィはアビーを放って置いて地下室に降りた。



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「まったく!アビーさんはいつも!!」


 リリィはぶつぶつ言いながら、本日の戦利品を整理していく。ゲートリングで送った物は乱雑に置かれるため整理が必要なのだ。乱雑と言ってもゲートリングの指定範囲以内に重ならない様に転送されるため、壊れ物でも問題なく送れるのだ。


「よいしょっと」


 リリィは大きさごとに棚に分類していく。そのまますぐに店に置けそうな物は一階に運び陳列していく。


 そして、ふと気付くと一階で苦しんでたアビーの姿が無くなっていた。


「またあれかな」


 リリィはそっと店の扉を開けて外を見ると、アビーは川で糸を垂らして釣りをしていた。釣った魚はご飯のおかずになるので釣りをすることに文句はない。文句があるとすれば店の方もしっかりとやってほしいことだ。


「私も整理を早く終わらせよっと」


 整理の途中に何人かお客が来たがリリィ一人で応対していた。これもいつものことなのでリリィも気にならなくなってきていた。


 そして、いつもの通りにアビーが魚を塩焼きにして持ってくる。それが二人のお昼ご飯だ。リリィは仕事の片手間に、アビーは釣りをしながらそれを食べる。


 魚の塩焼きは魚が新鮮でいつも美味しいのだ。だからリリィは今のこの現状に満足していた。



 そして、夕方。暗くなる前に店を閉めて夕食の準備をする。アビーが釣った魚とリリィが取ってきた野草と木の実で料理をする。基本的に夕食と朝食はリリィが作ることが多い。別に決まりはないのだが、アビーは適当なので美味しいときと不味いときの差が大きいのだ。そのためいつからかリリィが料理の担当をすることが多くなった。


 昼は塩焼きだったので、リリィは魚介スープを作ることにする。後は常備してある小麦粉でパンを作る。


 料理している間、アビーはいつも寝ている。たまにやって来たと思ったら、料理の注文かイタズラのどっちかだ。


 今日はアビーがやって来なかったので順調に料理を進める事が出来た。完成した料理を机に運んでいると、匂いに釣られたのかアビーがやってくる。


「お、今日も旨そうだな」

「はい!自信作です」


 そんな会話をしながら二人は席に着く。


「「いただきます」」


 そして、二人は食事の挨拶をして食べ始めるのだった。



 夕食後は外が暗いので基本的に寝る時間になる。だが、その前にリリィは汗を流すためにシャワーを浴びる。シャワーの水は川から水を引いて使っている。これは他の水回りでも使っている。排水は地下にある遺跡群に流れていっているので、あまり気にしたことはない。


 水は冷たいが汗ベトベトで寝るのは女の子としては嫌だから我慢する。


 リリィはシャワーを浴びるため備え付けのランタンに魔法で火を灯す。脱衣所の隅に持ってきた着替えを置き、マントを外し、ブラウス、スカートと脱いで下着姿になる。リリィはそのまま下着も脱ぎ、裸になりシャワーを浴び始める。最初はすごく冷たく感じるが、慣れてくると多少は気にならなくなる。シャワーの水はリリィの身体を流れて落ち流れていく。その時


 ガタッ!


「っ!?」


 脱衣所の方から音がした。リリィはそっと脱衣所の方を覗くと変態がいた。


「アビーさん?」


 リリィはタオルを身体に巻いてから変態の名前を呼ぶ。


「いや、あのこれはだな。たまにはシャワーを一緒に浴びようと」

「この年で一緒に浴びるわけないじゃない!!」


 アビーの言葉をリリィは一蹴する。


 リリィがここに住み始めたのは8歳の時だ。その頃はアビーといつも一緒にシャワーを浴びていたが、10歳ぐらいの頃からリリィも羞恥心が芽生えてきて、アビーとは別にシャワーを浴びるようになったのだ。


「早く出ていって!」

「・・・・・・」


 アビーは無言で出ていった。


「・・・おかしい」


 何も言わずに出ていった事に違和感を覚えたが、シャワーの浴びている途中なので、再開する。


 シャワーを浴び終わり、タオルで身体を拭いて服を着ようとして気が付いた。


「なななななな」


 リリィは顔を真っ赤にして壊れた玩具のような声をだす。


「なによ!これは!!」


 そして、遂に叫んだ。持ってきた着替えは無くなっており、代わりに置かれていたの透け透けのネグリジェと紐のようなパンツだった。そして元々着ていた服を着ようとも考えたがそれも無くなっていた。


「・・・・・・男の人ってこういうのが好きなの?」


 リリィも14歳のお年頃だ。このような衣服にも興味が無いわけでは無い。でも


「ダメダメ!こんなの胸も見えちゃう!とりあえずこれで」


 リリィはこんな透け透けのネグリジェよりましと考え、身体を拭いたタオルを身体に巻いてから脱衣所を出た。そして二階にあるリリィの私室に向かう。


「アビーさん!!」


 リリィの予想通りアビーはリリィの私室にいた。


「なんであれを着てないんだ!」

「着るわけないでしょ!」


 バチン!


「ぐはっ」


 リリィのビンタが炸裂してアビーを吹っ飛ばす。リリィはアビーを廊下に転がして退けてから扉を閉めた。持っていった着替えはベッドの上に置いてあったので、リリィはピンク色のネグリジェに着替える。そして、リリィはアビーのことをそのまま放置してベッドに身体を預けた。


 廊下からはアビーが何かぶつぶつ言ってるのだが聞こえないふりをした。


「・・・あんなの着れるわけないじゃない」


 リリィはそう思いながら眠りに就いた。


 翌朝、アビーは部屋に戻らず廊下の隅で気絶するように寝ていたのだった。

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