13:00

 食事が終わり、ようやく応接室から脱出ができそうであった。

 もちろん、裏庭に直行である。

 さあ行こうと席を立ったところで、うらめしそうに僕のほうを見つめている市町と目が合った。

 高い給料をもらっているのだから仕方がないではありませんか。

 午後からの現場確認のクエスト、がんばってください。

 というような意味を込めた一礼をして、口笛を吹きたい気持ちを抑えながら足早に場を立ち去ろうとした矢先に、今度は会長に呼び止められた。

「市長は体調がわるそうだから、代わりについて来い。灰術士とクエストに出るのは初めてだな」

 市長がわざとらしくせきをはじめた。

「体調管理ができておらず、申し訳ありません。足手まといになるといけませんので、私は、はい」


 クエストはタル市の近くにあるズズ山に登ることになった。

 ズズ山は山すそから頂上まで道が開けており、大鳥フェーに乗っていけば二十分で着けた。

 クエストの目的はとくになく、山頂までの間にモンスターを数匹たおし、頂上の景色を眺めておしまいである。

 参加者は、召喚士の会長、ソードマスターのかがいんちょう、ホーリーナイトのそうちょう、そして灰術士の僕である。

 召喚士、ソードマスター、ホーリーナイトは、最上級ジョブであり、きりの冒険者二千五百人の中で、それぞれ数名しかいないそうである。

 ジョブは、一般、上級、最上級の三段階に分かれているのだが、最上級ジョブの中に一般の灰術士が混じっていると、すこし居たたまれない気分になる。

 ただ、灰術士には上級・最上級のジョブが今のところ設定されていないので、僕にどうこうできる問題ではなかったが。

 上位職が設定されていない理由は、灰術士が僕ひとりしかいないためで、早いうちに何とかすると人事課に言われたまま、ずっと後回しにされている。

 僕はデスクワーク中心であまりクエストに出ていないので、あまり不満はなかったが、ジョブで支給される装備が変わってくるので、そこはフォローしてほしいところだった。

 灰術士専用の装備は、今のところ、ひとつもない。

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