12:00

 市長の報告の次は、昼食を挟んで、午後からは現場確認とのことだった。

 僕は裏庭へ戻るために部屋から出ようとしたが、笑顔のかがいんちょうにつかまり、一緒に食事を取ることになった。

 やんわりと断ろうとしたら、腰にぶらさげていた刀に手を置くんだもの、このおじいさん。いやになる。

 昼食はそのまま応接室で食べるとのことで、参加者は、会長、輝血委員長、市長、そうちょうに僕であった。

 会長は並べられたフェニクアの素朴な料理にいろいろと手をつけて、「たまにはいいな」とご機嫌であった。

 会食中の言葉のキャッチボールは、会長と輝血委員長の間で主に行われた。

 他の三人は、尋ねられたら答えるくらいで自分からは話を振りはしない。

 市長は明らかに眠そうであった。

 塩味の野菜スープをスプーンで飲んでいると、仮面越しに会長の視線に気づいた。

「食事をする姿がきれいだな。母上のしつけのたまものかな。それとも、恋人のしごきのせいかな。たまにいるそうではないか、自分のやりかたを押しつけてくる女が」

 課長がせきみ、ナプキンで口をふいたが、何も言わなかった。

 「母の躾のおかげです」とだけ、僕は答えた。

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