第7話

雑魚は何人集まっても雑魚だ。

強さが1の雑魚が50集まっても、50にしかならない。しかも総攻撃を仕掛けた場合だ。


私の強さはそんなものじゃない。そんな強さでは、ここまで生きてなど来れなかった。


「我が虎徹の獲物になるのは誰だ?それとも言う通り引くか?」


刃を向け、下っ端が困惑している様子に少しイライラする。


「うおーい!お前達、その女に手を出すな。」


「……おせーんだよガルネ。危うく一味数人殺っちまう所だったわ。」


頭、と下っ端がかけより、思い切り拳骨くらっている。そうそう、それでよろしい。


「悪かったな、朝霧。まさかお前がこの国に来てるなんて思ってなかったもんでな。」


「ついでに言えば、今この第三王子の側近。」


「……王族には手を出さないと誓うさ。悪かったな坊主、いや、王子さんよ。俺は朝霧の師匠の悪友ってやつでな。昔馴染みのトモダチなんだわ。許してくれるか?」


突然話を振られたハナは動揺しつつもしっかりと薬草を握りしめて、


「俺、たまにここに薬草取りに来るから、それ許してくれるなら、許すよ!」


と、大物の発言をした。薬草と引換とは。王子なのだから、一言に権力が宿るというのに。ハナは、本当に純粋だ。綺麗すぎて眩しい。


「随分、心が綺麗な王子さんに仕えてんだな。朝霧、お前の闇で王子さんを包んだりするなよ。」


「分かってるよ、親父かよ。じゃ、私行くから。今度酒でも持ってくる。」


「楽しみにしてるさ。お前ら、帰るぞ!」



出しっぱなしだった虎徹を仕舞い、ハナにごめんな、と告げると不思議そうな顔でこちらを見ている。


「朝霧、きっとね、俺は朝霧がいなきゃ、襲われていたんだよね?」


「ですね、100%」


「ありがとう、朝霧は本当にすごいや。」


「そう思うなら次からは誰かを伴って薬草取りに行く事。分かったかクソガキ。」


「王子に向かってクソガキなんて言うのかー!」


ぷりぷり怒りながら後ろをちょこちょことついてくる姿がまるで雛鳥だ。私が守らなければならない、この国の未来なのだ。



城に戻ると、零々がハナに豪快な拳骨をぶちかました。思わず笑ってしのまった。


「零々は俺を殴りすぎだと思うんだけどな!?」


「何百回何千回、迷子になれば気が済むんだ?発信機つけるぞ?いいのか?ん?」


零々は相当ご立腹な様子だ。

そもそも、何故護衛として零々とカナデがついていながらも、そう何度も何度も脱走できるのか。そして、なぜ誰も零々達を責めないのか。


「なあ、ハナ。どうやって護衛の目を盗んで脱走してるんだ?」


「え?うーん……零々とカナデが職務で呼ばれたスキをついて?」


「お前最低だー……」


そりゃ、誰も側近を責められない。僅かに重なる、護衛が視界から消えるタイミングで抜け出すとは。


「とにかく、誰か連れていけ。ガルネは知り合いだから良かったものの、知らないヤツらだったらハナは死んでいたかもしれないんだぞ?」


みんなごめん、と頭を下げる。他人に頭をさげる王子。


全く、困った王子もいたものだ。


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王子の側近になりまして。 水無瀬 @minase_75

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