反逆を企てた息子達とその友人の話

友人達とロシアンルーレットやった時があまりにも楽しかったのでその前設定がこんなんだったんじゃないかなぁという妄想。

見事に私のPCがボスになりましたよ。危うく事故りかけましたがね!回避型のボスは作らない方がいいと学んだ。




観測を続けてきてた。観測を続けていろんな人達を見てきた。FH、UGN、ゼノス、オーヴァード、ジャーム。その全ての戦いを眺めていろんなことを考えていた。協力して強大なジャームを打ち倒そうとしても仲間を殺されジャームとなり衝動にまかせ敵に向かっていき無残に殺される人々。殺された仲間の敵を討つべくジャームに向かっていき見事打ち倒す事ができた彼らの仲間達。ロイスという絆の力を使い、仲間達を信じて戦っていたオーヴァードという存在。その流れを観測してきた俺は一つの結論に達した。『オーヴァードこそが、人類の進化系なのだ』という事に。

その結論から俺は、『五月女和馬』はお父様が集めている子供達に疑問を持ってしまった。お父様が集めている子供達にはジャームが多数存在する。そんな彼らが世界を変えてしまったらどうなるのだろうか。そんな彼らが世界を手に入れお父様に渡してしまったら……人類は生きていられるのだろうか。ヒトガタのバケモノは多数存在するようになるのかもしれないが本物の人間はいなくなるだろうか。…………そんな世界は、存在する意味が無い。

「存在する意味がないんだよ。」

俺は目の前にいる西浦と幕田に苦しそうに呟いた。




俺は五月女が言ってる事をぼんやり聞きながら最近の研究結果を思い返している。統計的にオーヴァードとジャームの勝率を比べてみたデータだ。これは自分がリエゾンロードになる前、このファルスハーツに入ってこの名前「幕田光」という存在になった頃から集めているデータでこれに基づき俺は考えていることがあった。オーヴァードとジャーム、どちらが強いのか、どちらが生き残りに向いているのかを。圧倒的な強さの象徴といえばジャームだろう。侵食率を上げることで人間を捨て恐怖を克服しエフェクトを使い戦う。だが、オーヴァード達は恐怖もあり侵食率を気にしながら戦ったとしてもジャームを打ち倒すことが出来る。何故か?それはきっと人の絆が関わっているんだろう。人の絆の力というのは未知数である。人は絆があるから強くもなり弱くもなる。強くなる時はどこまでも強く、弱くなる時はどこまでも弱くなるのだ。強くなった時は神さえも殺す力を手に入れる。こんな力を秘めているオーヴァードたちがジャームよりも劣っているのだろうか?答えは“否”だ。それに気付いた俺は悩んでいた。友人であるコードウェルの息子達、マスターレイスの名を渡された二人にこれを伝えるかどうかを。

しかし五月女も同じ結論に達していたのか。気付かなかった、ということは彼自身がそれを隠そうとしていたからだろうか。たしかに彼の結論は立場上危険なものだろう。それを隣にいる西浦は、FHの始末屋である彼はどう思うのか。

「………………(その反応によって俺の行動は変わるかな)」

俺は頬杖を付いたままどこかつまらなさそうに西浦を横目で見ていた。




昔から勝利に執着する人格であった事は理解していた。FHに入る前から自分は勝利を収める事に固執し日常を歩んでいた。それはお父様の息子としてマスターレイスの名を授かった時、さらに確固たるものとなったのだ。そして戦闘が全て、勝利が全てという日常の中で強さというものを自分は観察してきた。強さというものはただ単に戦闘で勝利を収められる、戦うことが出来るといったものだけではない。人としての強さ、仲間を鼓舞することが出来る強さ、そういった物が戦況を一気に変える世界を見てきた。つまりは“力”だけを持っているジャームが一概に強いとは言えないということだ。俺からすれば俺を拾ってくれた日浦さんは強い存在に入るし“西浦”という与えられた苗字はその象徴でもある。

ではお父様はどうなのか?俺達の兄弟には多数のジャーム(と思われる)が存在している。たしかに彼らは強い。だがオーヴァード達が手を組み本気で立ち向かってきた時彼らは勝利を収めることが出来るのか?……恐らくは出来ないだろう。出来るのはオーヴァードである者達だと自分は考える。が、お父様はどうだ?あの人はオーヴァードか?おそらく違うだろう。あの人はジャームだと思われる。自分の欲望は世界なんぞに一切興味はないがこのままではお父様が世界の頂点に立つ。それは愉快な事象か?

「…………違うな。不快だ。」

呟いた言葉が聞こえたのか聞こえていないのか五月女は俺を見つめてくる。西浦は読めているのかいないのか、何かを考えているのかいないのかじっと俺の瞳を覗き込んでいた。




「ジャームを打ち倒すことが出来る強さをオーヴァードは持っている。」

そういった西浦を2人は見つめている。彼は黙ったままそれ以上口を開こうとしない。その目は言わなくてもわかるだろうと言っているように2人は思えた。その瞳を見て震える口を五月女は開いて話し始める。

「前に、さ。お父様の依頼で観測に行ったんだけどね?まぁそれってUGNの研究だったんだけどそこにあった資料がさ、お父様が、近いうちに世界を滅ぼすかもしれないって書いてあって……」

「……そ、れは、ただの研究結果かもしれないだろ?」

目を見開き西浦は無理やり声を出す。その言葉に被せるように五月女は叫んだ。

「でも!最近のお父様の行動分かるでしょ!?研究所に籠る時間が長くなった!俺たちに物資の調達を頼む回数もおかしい!よその研究所のデータ強奪だって明らか増えてるじゃん!!」

「ちょ、声が大きいって!!」

五月女の口を無理やり幕田は塞ぐ。しばらくそうされて落ち着いたのか五月女は立ち上がった時に倒れてしまった椅子を直し座る。

「……ごめん。」

「あー、や。気にしなくていいよ……正直な所五月女と同じ結論なんだよねぇ。俺も研究してたけど内容が完全にそれの裏付けだし。」

そういうと幕田は何かの書類を取り出す。それを並べて真ん中には地図を置いて2箇所丸をつけた。

「オモイデ様の欠片って知ってる?」

「……まあ一応。」

なぜそんなことを聞くのか、と訝しげな表情を浮かべ西浦は幕田を見つめる。五月女は書類を読み進めるにつれて顔色が悪くなっていく。書類の内容というのは幕田の研究結果、そしてどうやって手に入れたのかはわからないが最近のコードウェルの行動がまとめられていた。そんな五月女を軽く見ながら幕田は口を開く。

「ここがその研究を行ってる島。それでこっちが俺のセーブハウス。…………書類見たらわかるけど2人とも、かなり今立場やばいよ。」

西浦と五月女は軽く顔を見合わせて黙り込む。口を合わせて相談した訳では無いがコードウェルに対する考え、今までの行動などからお互いの行おうとしていたことと考えが手に取るように読めてしまった。

人間が嫌いだが人間が好きな2人。人間が滅ぶことを認めない2人。世界が滅ぶというのなら、世界が滅ぶ原因が分かっているというのなら、やる事は決まっている。故に2人は水面下で行動していた。内容は筒抜けであったようだが。

「水臭いし2人とも結構馬鹿だよね!相談ぐらいしてくれりゃあいいのに!」

幕田は怒ったように腕を組み頬を膨らませる。そんな彼を少しだけ見て2人は困ったように顔を見合わせ居心地が悪そうにしている。その様子をみて呆れたように幕田はため息をつく。

「巻き込んじゃいけないとか考えた?それが馬鹿だって言ってるの!友達じゃん同じ考えを持つ同士じゃん!協力するっての!」

幕田は2人に抱き着くとそのまま2人の間に顔を埋める。その反応にどこか困った表情を浮かべるのは五月女。西浦は苦しそうな寂しそうな、泣きそうな表情を浮かべるとここにいる自身の兄弟を横目で見る。それに気付いたのか五月女をそちらを見つめた。

お互いの視線が絡み合う。ほんの数秒、もしかしたら一瞬ともいえる時間かもしれない。お互いの意思を確かめ同時に決意を固める。そして五月女は言葉を発した。

「……頼んでいいの?死ぬかもしれないんだよ?」

「…………今更って言っていいかなぁ。そんなのいつもの事じゃない。」

幕田は顔を上げると口角を吊り上げ楽しそうに笑う。それに釣られて2人も軽く笑った。それを見た彼は嬉しそうにさらに微笑んだ。

「いつも命をかけてるんだから気にしない気にしない!取り敢えず研究所のデータ取ってくるから!」

「急すぎないか!?」

ケロッと言った幕田に西浦は叫ぶ。

「だってあんまり遅くなると2人が危ないじゃん。」

幕田のその言葉を最後まで聞かず五月女は幕田の背中に抱きつく。幕田は少し目を丸くして彼を見る。

「えっ?五月女?どうしたの?」

「………………」

無言で腕の力を強くする彼の頭を苦笑しながら撫でる。ビクッと肩を震わせた五月女を怖がらせないように丁寧に幕田はゆっくりと髪を梳くようになぞっていく。

「……死なないから安心しなって。俺の欲望は知ってるでしょ?生き抜くことだから。生きて戻るよ。」

穏やかに笑いながら少し体を捻った妙な体勢で幕田はそう告げる。それを静かに西浦は見つめていた。




その数日後、幕田はUGNの研究施設よりデータを転送しそのまま死亡した。






その後の話



時間は数時間前に遡る。

「ああ、ありがとう」

バイクジャケットを羽織った少年が悲しそうにスマホを切った。その彼の後ろから白い学生服を着た少年が彼に声をかけた。

「……ダメだった?」

「ああ。……ダメみたいだ。」

「…………そっか。」

白い学生服の少年は泣きそうに俯く。それを見た少年は彼の両頬を掴み無理やり上に向かせる。

「諦めるのか?あいつの願いを無駄にするのか?」

「諦めないし無駄にするつもりもないよ西浦。」

西浦と呼んだ少年に向かって白い学生服の少年は炎を軽く叩き込む。それを読んでいたかの様に西浦は軽く避けた。

「じゃあどうするんだ?」

「止めるよ。終わらせる。」

そう白い学生服の少年が言った。




そして時間は元に戻る。

2人が向かい合って座っている。西浦は時計をチラ、と見てどこかに電話をかけた。

「……どうだ?…………ああ、そうか。」

学生服の少年は不安げに彼を見つめている。その視線をみて西浦は悲しげに首を振った。それを見た学生服の少年はそのまま机に突っ伏す。

「…………ああ、もうさぁ!なーんで人のわがままに付き合って死ねんのアイツさぁ!!」

「それほどまでにお前の意見に同意したってわけだ。それを素直に受け止めろよ五月女。」

五月女と呼ばれた少年は叫んだままの体勢で動かない。西浦はそれを静かに見つめ口を開く。

「お前の欲望に、お前の祈りに、お前の願いに俺は、俺達は同意した。それに力を貸したいと心から思った。だからこれを認めてんだよ。」

「分かってる……分かってるよ!あーくっそ!!」

五月女は勢いよく体を起こすと机を思いっきり叩く。その様子を静かな瞳で西浦は見つめていた。

「……あいつの研究結果は今までの疑問を決め付けるものだったんだろ?もう進むしかない。進むしかないさ。」

「…………うん、そうだね。そうするしかないね。」

そう言い合っていた2人はゆっくり立ち上がる。いつの間にか近くに彼のクランの部下が立っていた。彼の開いてくれたディメンジョンゲートをゆっくり歩いて潜る。くぐり抜けた先はどこかの家。周りを木々に囲まれ部屋の中には資料などが散乱している。

「さぁ、計画を立てよう。」

「うん。お父様にバレないように計画を立てないとね。じゃないと人間が終わっちゃう。」

「あぁ。UGNは正義、FHは悪。この構図があるからオーヴァードたちは強くなろうとすることが出来るし、恐怖する対象……ジャームを身近に感じれる。」

「確かにUGNはお父様の思い描いた形と変わってしまったのかもしれない。でもそれでも正義として誇りとロイスを持っている。」

そこまで言うと2人はお互いに顔を見合わせ笑う。

「覚悟は決まったよ。終わらせようか。お父様の欲望をね。」

「そうだな。人間の進化の為に、オーヴァード達が人間であるために、ジャームという必要悪を身近に感じれるように。」

「「“反逆の聖人”を俺達で殺そう」」

「そして……」

どちらからともなく口にした言葉に思わず笑う。いつのころか今はいない友人と語り合った時のように、ただの一般人のように、ただの高校生のように2人は笑い合った。そして一つ息を吐き五月女は口を開く。

「――――そして、オーヴァード達を俺達で救おうか。」

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オーヴァード達の会話録 かおん@【急募】ダイスの女神の倒し方 @kaon_0211

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