閑話 "青の戯画" トラン・イリーガリー


「はじまる終わりが!」

「終わるよはじめが!」


「「レッツ・エンディング!!」」


「さて、ここからが本番。何がどう転ぶか……予定通りに、頼みたいものだね」


 暗い部屋。並べられたディスプレイの前で、一人の少女と二体の人形は笑っていた。


「とりあえず、っと」


 少女――"青の戯画"のトラン・イリーガリーは筆を取り、キャンバスを構える。

 思い描くは夢幻の如き、泡沫と消えるヒトの歩み、その跡々。少し捻って、事実を捻じ曲げ、ただ滑稽な形に変えて。


 歴史は歪む。それは勝者によって紡がれるものであるが故。ならばトランは、それを『戯画』として描き、歪ませる。


「トラン君」

「はいはいハカセ、出番なんですね?」


 ハカセと呼ばれたその男は、白衣に眼鏡をかけ、呆れたような溜息を吐いた。


「そう、そうさ、私の出番だ。出番というのもおこがましい雑事だが、私の職務だからね、仕方がない。じゃあ、行ってくるよ。留守は頼んだからね」

「了解了解、いってらっしゃ〜い」


 上司である彼に、トランは適当に生返事をすると、またディスプレイへと身体を向けた。その画面は、ただ青いのみだった。

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転生世界のクズとゴミ 成亜 @dry_891

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