第20話 忍耐と慈愛

 「え、何してんの?」


 目の前にいた女神に聞くと女神は「え、起きるの待ってたんだけど?」と当たり前のように返してきた。


 「服はどうにかならないのか?そのままだと誰かに見られたら俺まで変態扱いされるんだけど?」


 「変態じゃ無いって何回言えば分かるのよ。…分かったわよ。これでいい?」


 女神の布が光りだす。いきなりの光りに思わず目を瞑ってしまった。それからすぐに光りは収まり目を開ける、女神はシンプルなデザインのドレスに身を包んでいた。


 「どう?似合う?人間の服って窮屈な感じがして嫌なのよね。」


 「おぉ、に、似合う、ぞ?」


 「そ、そう?ありがと」


 こんなあっさりしててもしょーがないじゃん!褒めることなんて彼女いない歴=年齢の俺じゃ何て言ったら言いか分からねーよ!


 「…そんで?なにしにきたんだ?」


 「え?特に考えてないわね。これからあの村神って奴を捜すのは確定だけど。」


 「当ては?」

 

 「あるわけ無いじゃない、気配も探れないのに。まぁ、邪神がついてるならどこかで尻尾ぐらい掴むでしょ。」


 こいつ、完全なノープランだった。なんだったんだ昨日の焦り具合は。こいつマイペース過ぎるだろ。


 俺はそんなことを考えながら目の前で倚子に座り足をぶらぶらさせている女神を見た。改めてみた女神は美しいというよりは可愛らしいと言った方が納得する程であった。顔は中性的だが少し幼さがまじっており、黙っていれば数多の男が言い寄ってくるような容姿であった…そう、黙っていれば。


 「はーやーくー、村神探しに行くよー。さっさと行かないと呪いでもかけちゃうぞー。」


 「王様に色々話してからだ。そのあとな、てか名前聞いてないんだけど。」


 「あれ、言ってなかったっけ?」


 「聞いてない。」


 「私はね、忍耐を司る女神ラファエルよ。これが名前って訳じゃ無いから好きに呼んでくれて構わないわよ?」


 「?どういうことだ?」


 「そうね貴方達の世界で言うなら社長とか役員の名称みたいな感じかしらね?」


 「へぇ、じゃあラフィでいいだろ。短くていいし。」


 「なんか早すぎて納得いかないけどそれで良いわ。貴方はなんて呼べば良い?」


 「俺?俺は翔でいいよ。堅苦しいのは嫌いだし。」


 「分かったわショウ。それじゃあこれから王様の所に行くわよ!」


 「え、いきなりだな、善は急げとか言うでしょ?」


 「はぁ、分かったよ。」


 こうして俺とラフィは王様のいる部屋へと向かうために部屋をあとにした。二度とこの部屋に戻れなくなるとは知らずに。



 







 ???Side________


 …よし、体は手に入ったし、損傷もなさそうだな。


 そうですね良かったです。


 あとは傲慢と憤怒か?


 そうですねそれさえあれば私は完全に復活します。ついでに出会った女神からもスキルをもらって行くことにしましょうか?


 そうだな。ここまで来るとシリーズものは集めたくなるよな。


 好きですねぇ。女神のスキルは私はいりませんよ?


 はいはい、俺が個人的にもらうだけだから文句言うな。


 この二人は昨日、日高と別れたあと寝ずに気配をたどり目的を迅速にこなしていた。


 「ヒッ…イヤ、来ないでよ、何の話ししてるかも分かんないよ、誰か、助けてよ、なんでこいつに私のスキルが効かないのよ…。イヤ…止めて…あっ………。」


 なぜこんなことになったんだろう。私はラファエルから邪神が潜んでいるかもしれない人間を見に来てあわよくば殺そうとしてたはずなのに…。邪神が封印されているここにその人間が来たらすぐに殺すつもりだったのに…。目の前の彼の眼は殺そうとしていた私を写しておらず、ただ歩いているだけでアリを殺しているかのように平然と、道ばたに落ちている小石を意図せずに蹴飛ばすように、周りのもの総てに興味が無いと言わんばかりの眼に私は狂気を感じた。しかしそれと同時にその目に吸い込まれていくような感覚に陥った。


「効かない理由は簡単だろ。俺が単純に敵対なんかしてないからだぞ?この世界の女神も人も魔物も魔王も、私にとっては総て等しく同じなんだよそこらにある木や石ころと…ね。だから気にするな君がいなくなるのはごく自然なことなんだよ。君は落ちている石ころに敵対することなんてあるのかい?」


 彼はそう言うと笑みを浮かべ私の頭に手の平を乗せる。すると体をとてつもない喪失感が襲った。そうして私は意識を失ってしまったのだった。


 オリジンスキル『慈愛』を獲得しました。

『慈愛』…自身が敵、さらに相手も自身を敵だと判断した場合、相手を亜空間に封印する

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