第43話 ヤヨイ対コツゴモリ
シララへの流れ弾を考慮して、向かいの広場へと歩く三人。
広い歩道をふんで、メガネの青年が穏やかに話す。
「いまのヤヨイさんなら、強制的に戦闘空間を開けるはずです」
「でも、本体を狙われたら」
カケルは心配していた。不安の色を隠さない。
「わたし、やります。後は頼みます」
ヤヨイが、コツゴモリに向けて戦闘空間を発生させた。すでに発生している戦闘空間と混ざる。
惑星すべてが範囲になった。
光の壁に包まれる、健康的な肉体。分離して白い服へと変わった、精神体のヤヨイが現れる。
様子を見ていたスズネとタクミ。広場まで移動してきた。ナツゾラが、
「私は空間を維持します。できれば、三人でヤヨイさんの本体を守ってください」
シララが目を覚まし、ヤヨイの手招きでやってくる。弾は飛んでこない。コツゴモリは空を見ていた。
灰色の広場。ヤヨイの本体の近くで、精神体を分離させる三人。
チーム全員の本体が、一ヶ所に集まった。
「絶対に、守る」
「これぞチームよね」
「ナツゾラを頼るなよ。俺たちでやるぞ」
カケル・スズネ・タクミの三人は気合いを入れた。
白い服のヤヨイが、広場から離れる。広い道路を前に進み、2メートルの距離でコツゴモリと対峙する。
「なぜ、こんなことをするの?」
黒い服の少女は答えず、薙刀を構えた。
剣を構えるヤヨイ。
コツゴモリは、ヤヨイと戦いながら何かの力を使う。
「ダミーか?」
「また、相性悪い感じね」
「弾切れの心配がなくていいだろ」
人間ほどの大きさの
三人の手に、輝く武器がにぎられる。細身の剣を持つ一人と、光の棒を持つ二人。
ナツゾラは刀を構える。シララを守るようにして、前に出すぎない。
「本人が消えていなければ、不意打ちはないでしょう」
ナツゾラが、藁人形を一体切り捨てた。攻撃の
「そいつは、ありがたいぜ」
「てきぱきと働いてよね」
光の棒を手にしたタクミとスズネも、藁人形を破壊していた。
近接戦闘が苦手だったとは思えないほど、軽やかな動き。広場がせまく感じられる。
「油断大敵だよ」
カケルはさらに切れを増している。細身の剣で藁人形を両断した。
「ナツゾラさんは、あなたを救いたいと言った」
ヤヨイは両手に剣を持ち、薙刀の攻撃を
コツゴモリは、答えない。
「あなたを愛している。あなたは、それが分からないの?」
悲しそうな顔のヤヨイ。
「そんな感情、我は知らない」
銀髪の少女が口を開いた。攻撃の手はゆるめていない。
すこし、悲しそうな表情をしたように見える。
「自分を
ヤヨイの攻撃がコツゴモリに当たった。
肉体は傷付かない。自分の力を制御しているヤヨイ。攻撃を加えるのは精神体のみ。
「私も、あなたを救いたい!」
光の剣が、さらなる輝きを放つ。
相手から離れたヤヨイの手に、刀が姿を現した。
遠くでそれを見たナツゾラが微笑む。
「あなたを倒します。それから、ナツゾラさんとゆっくり話をしてください」
ロングヘアの少女が、流れるような動きで攻撃を仕掛けた。
薙刀で防ぎきれず、コツゴモリは
優勢に見えたヤヨイ。
しかし、異変に気付いた。精神力をひどく消耗している。
「人のままで、あの力を使うのは厳しいようですね」
ナツゾラも気付き、すこし眉をひそめる。
「人間やめさせる、なんて言うなよ?」
「そうよ。絶対に駄目よ」
つぎつぎに湧いてくる藁人形を倒しながら、青い服のタクミと黄色の服のスズネが希望を伝える。
「僕が、代わってあげられたら」
緑の服のカケルは、
『あー、聞こえるかな。この世界のみなさん』
誰かの声が聞こえた。
「
戦いながら、ヤヨイは喜んでいた。
『わしは、真の力を使って、戦闘空間にいる全員に同時に話し掛けておる』
「ヤヨイが、むかし
藁人形を倒しながら呟くカケル。
『周りの人から力を、思いを分けてもらうのじゃ』
「そうよ。分けてあげられるじゃない」
スズネが気付いた。
『いまのヤヨイなら、わしの真の力も使えるはずじゃ。自分の言葉で伝えなさい』
「全部言ってもよかったのに、な」
タクミは、いつもの軽口を叩いて笑った。
激しい接近戦を続ける二人の少女。
ヤヨイが、世界に住む全員に言葉を伝える。
「私には、助けたい人がいます。大切な人たちがいます」
ナツゾラは、シララを守って刀を振るっていた。
カケル・スズネ・タクミの三人も、戦い続けている。ヤヨイたち四人の本体を守りながら。
「皆さんが私に力をくれるなら、私は、助けることができます」
カイリとコスミは、街の人に説明していた。
ガイ・ダン・ジョーの三人も、説明を始める。
「少しでもいいです。皆さんの力を、思いを私にください!」
エミリとレオンは隣の町で頼んでいた。
「もっと、上手く話せないのか」
チカコは笑っていた。
アイムは、能力者協会の建物内で、意見を伝えている。
師匠のいる国では、
出会ってきた
「みんな、ありがとう」
思いを力に変えた白い服の少女が、左手に2本目の刀を握った。
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